三十六日目
「てりゃぁあああああああ!!」
可愛らしい声を上げながらシロットは相棒である戦槌『バティッシュ』を振り下ろして岩石を破壊する。砕けた岩石にある鉱石を詩音は鑑定能力で状態と質を鑑定して収納指輪に収納する。
「シロット。もう一回頼む」
「はい!」
詩音は今、シロットと共に商品に作る材料を自分達で調達する為に街から多少離れたところにある洞窟に入って鉱石を採掘している。
本来ならこういう仕事は冒険者に依頼として発注するのが普通なのかもしれないが、詩音の場合はレベルやスキルのこともあって自分の足で調達した方が色々と都合がいい。
ついでにシロットに渡す予定だった『バティッシュ』をシロット自身に使い慣れて貰う為と、レベル上げも兼ねて詩音はシロットと共に行動している。
「そりゃ! てりゃ! どりゃあああああああああっっ!!」
ブンブンと戦槌を振り回すシロット。
岩石が次々と砕かれて詩音は休むまなく鉱石を回収しながらシロットに言う。
「シロット。あまり力任せに振ると崩壊の恐れもあるから注意して」
「わかりましたぁぁああああああ!!」
注意してもシロットは戦槌を豪快に振り回す。その表情はまるで鬱憤を晴らすかのように。
「ふふふふふ、日頃の鬱憤をここで晴らすのですよ………………セル様の悪魔ぁぁああああああああああ!!」
洞窟内に響き渡る破砕音。
不気味な笑みを見せながら破壊活動を行うシロットは普段からセルに何をされているのだろうかと気になった。少なくとも自分の夜の生活を満喫できるための犠牲になっていることだけはわかる。
そして、セルが悪魔なのは同意する。
セルは悪魔だ。
そしてシロットは悪魔の贄である兔だ。
トレイヤは包容力から地母神…………かな?
つい、そんなことを考えてしまいながらこれからはもう少しシロットに優しくしてあげようと思った。
「お、ミスリル鉱石。それもこの大きさでこの透明度は珍しい」
発見したミスリル鉱石に瞳を輝かせる。
鉱脈を魔道具で探知させて選んだ洞窟だったが、当たりのようだ。
「うひゃああああああああああああ!!」
「シロット!?」
突然の悲鳴に顔を上げるとそこにはミミズのように細長い体躯を持つモンスター、デーロスクにがんじがらめにされたシロットがいた。
「ひゃう! や、そこ………………だめ…………………」
艶やかな声が洞窟内に響きながらデーロスクの身体から出る分泌液でシロットの顔や身体は粘液だらけになり、妙にエロかった。
「これが触手プレイか………………」
これまで夜の生活には何の不満もなかった詩音は充実した毎日を過ごしている。
セルも、シロットも、トレイヤもそれぞれ違ったタイプの美女美少女達だし、夜の営みも異なる。
セルに関しては夜の生活の幅を広げようと色々としてくる為に不本意なことに色々と知識を得てしまった詩音でも触手プレイを生で見るのは初めてだ。
触手によって身動きを封じられた肢体。
女性の敏感な部分を這い寄る触手。
恥辱と快感が混じった顔。
ぬめりとした粘液。
それらを見て詩音は一言。
「うん、これはない」
「暢気に見てないで助けて下さい!!」
触手プレイは自分には合わないとわかった詩音は深く頷いていると、シロットの助けを呼ぶ声に応じて愛刀でデーロスクの身体を斬り裂いてシロットを救助する。
「あいたっ!」
解放されたシロットは尻から落ちてお尻を擦る。
「うぅ、もっと早く助けて下さいよ………………」
「ごめん。シロットの困った顔を見るとつい、ね」
「ついじゃありません!!」
毎度のことながらもシロットの困った顔や恥辱や屈辱に満ちた顔を見るとそれがもっと見てみたいと嗜虐心が擽られてしまう。
きっとセルがシロットを虐めるのもこれが理由だろう。
「はぁ…………お家に帰ったらトレイヤ様のお胸で癒されますか………………………」
「それがいいよ」
母性か、トレイヤの胸に顔をうずめると物凄く落ち着いて心が癒される。
更には頭や背中も優しく撫でて、励ましの言葉までくれるのでずっとトレイヤに甘えたくなってしまう。
一度トレイヤに甘えたらまた甘えたくなる。
母性恐るべし。
「さぁ、その為にももうひと頑張りしよう」
「了解です! ていやぁぁ!!」
戦槌を振るうシロット。すると―――
洞窟全体が大きく震え始める。
「「え?」」
二人一緒に声を上げながらも最悪の展開を想像する。
そして、崩壊が始まった。
「シロットの馬鹿!! だから言っただろ!?」
「も、申し訳ございません!!」
崩れ始めて詩音はシロットを抱えて急いで出口に向かって駆け出す。
これまでシロットが乱暴に戦槌で壊していた為に先程の一撃がトドメとなって崩れ始めてきた。
出口まで疾風の如き速さで足を動かす詩音は上から落ちてくる瓦礫を咄嗟に特殊能力である『植物創造』によって植物を生み出し、それを急速に成長させて防ぐ。
走る 走る 走る。
レベルMAXのステイタスで加速する。
そして、光明が見える。
出口が見えた詩音は最後の力を振り絞って洞窟から脱出すると同時に洞窟は完全に崩れ、出入り口は塞がった。後一瞬遅かったら完全に生き埋めになったと思うと血の気が引く。
間一髪脱出できたところで詩音は抱きかかえているシロットに告げる。
「家に帰ったらお仕置きだから」
「………………………………………………………………………………………………………お仕置きをするのはシオン様ですよね?」
恐る恐る尋ねてくるシロットに詩音は笑顔で。
「当然セルのお仕置きだから覚悟しといた方がいいよ?」
「いやぁぁぁあああああああああああああああああああ!! もうセル様のお仕置きは嫌です!! シオン様のお仕置きならどんなお仕置きでも受けますからどうかそれだけは御堪忍をッッ!!」
いったいどれだけセルのお仕置きが怖いのだろうか?
そう思わされるほどシロットは必死だった。
「シオン様の愛のお仕置きがいいです!! そう思えばどんなお仕置きでも受け入れられますから!!」
「………………………………減刑願いはセルに言ってね?」
「そんなッッ!!」
この世の終わりかのように絶望に染まるシロットは帰り道でぶつぶつと遺言じみたことばかり呟いていた。
その姿はまるでこれから処刑される罪人のようだ。
その姿に詩音はセルだけは絶対に怒らせない様にしようと決めた。




