三十三日目
チンピラ風の冒険者に絡まれていたボクっ娘新人冒険者―――ニーチャが女だとわかり、女顔で悩まされる同士ではなかったことにショックを受けると同時に男として見られたことに落ち込むニーチャ。
互いに心に受けた傷を癒えてから詩音はニーチャを自分の店に案内した。
「これなんかどうだ? 雷魔法を付与した魔法剣。敵を斬ると同時に相手を感電させる」
「う~~ん、お値段が………………………」
「なら、この剣はどうだ? ちょっと小振りだけど扱いやすいし、切れ味も保証する」
「ちょっと………………………」
色々な武器を紹介するもニーチャはどれも曖昧に言葉を濁らせる。
「なら、この相手に傷を与えず痛みだけを与える鞭は?」
「要りません! それはぜったいに要りません!!」
冗談半分でネタで作った鞭はSM趣味のある方には大変好評です。
顔を真っ赤にして拒否するニーチャの新鮮な反応にほっこりしながらもニーチャの腰に携えているミスリルの剣を見る。
「やっぱりその剣じゃないと駄目?」
「………………………………母から頂いた大切な剣なんです」
大事そうに剣を撫でるニーチャのその表情はどれだけ大切にしているのかわかる。
「お母さんは冒険者だったの? だからニーチャも冒険者に?」
「あ、いえ、その、ボクはアマゾネスなんです」
「アマゾネスってあの戦闘民族の?」
「はい」
女種族であるアマゾネスはその通り女だけの種族だ。子は女児しか産まれない彼女達は他種族の男性と交じり合うことで子を成す。豪胆剛毅の人柄で常に自身に満ち溢れ、好戦的が一般的な心象なのだが………………。
ニーチャはどう見ても自信がなく、好戦的には見えない。
ついでに言えばアマゾネスは本能的に男を誘惑する為か、艶めかしい身体をしている。
貧相…………………スレンダーな体型をしているニーチャが本当にアマゾネスかどうか訝しんでしまう。
褐色肌の人間の方がまだしっくりくる。
「村でもボクはモンスター相手にも怯えて、母に剣を渡されて『度胸つけてこい!』とお尻を蹴られてしまい………………………」
「豪胆なお母さんだな…………」
似たような母親を持っていた為に詩音もニーチャの気持ちが多少なりは理解出来る。
母は強し。それは母を持つ子なら誰でもそう思う。
「それから生活する為にもお金が必要で冒険者になりまして………………………」
「絡まれたってことか」
コクリ、と頷いて肯定する。
確かにモンスターを相手にするには度胸はいる。詩音自身も初めは戸惑った。
「この剣は母が若い頃から使っていた剣ですし、本当に取り返してくださってありがとうございます」
「いやいいよ」
頭を下げて再度礼を言う。
自分に相棒ともいえる武器を娘に持たせる辺り、母親も娘のことを大事にしているのがわかる。
「じゃ、早くモンスターを倒せれるようにならないと」
「はい…………」
力なく返答するニーチャにこれは時間がかかるだろうな、と思いながら武器を探す。
「あ、そういえば」
詩音は何かを思い出したかのように一度工房に向かい、一本の剣を持ってくる。
「これはどうだ? 少し前に打ったその剣と同じミスリルの剣だ」
剣の形状に違いはあれど、紛れもないミスリルから打った剣だ。
ガーゼが魔王核で儲かった礼として持って来たミスリルを剣にして店に飾ろうと思っていた為に多少は装飾過多ではあるもちゃんと実戦にも使えるようにしている。
「同じミスリルの剣ならいいと思ったんだけど、どうかな?」
「あ、そ、その………………………」
申し訳なさそうに言葉を濁らせる詩音はお金の事だと思って先に言う。
「大丈夫。お金は取らないよ」
この場にセルがいたら呆れるように息を吐くかもしれないが、詩音はない人から金を毟り取る真似はしない。代わりに武器を使った感想や意見を聞いて次に武器を打つ参考にする。
幸いにもミスリルの元は無料だった為に損はない。技術向上の為にニーチャに使って貰おうと思って持って来た。
すると、ニーチャは何かに気付いたように頭から煙が出てきそうなほど顔を真っ赤にして俯かせ、もごもごと何か言っている。
それに怪訝する詩音。どうしたのか声をかけようと思ったらニーチャは顔を上げ、その瞳は何か覚悟を固めたかのような意思が見える。
そして、詩音の手を取ってニーチャは店の外に出て路地裏に入る。周囲に誰もいないことを確認すると、ニーチャは口を開いた。
「わ、わかりました…………………お支払いします、が、初めてなので、優しくしてください………………………」
そう言ってニーチャは軽装を取り外して服を脱いでいく。
「え? ちょ、ちょっと待って………………………」
「ボ、ボクもアマゾネスです。経験はありませんけど知識はあります………………………」
何故か身体で支払うような空気になっているニーチャは恥ずかしそうに顔を朱色に染めながらも健康的な小麦色の肌を外気に触れさせる。
慎ましやかな胸も出して詩音に寄り添い、服の中に手を入れ始める。
「ま、満足させてみせます……………………一回で駄目なら何度でも構いませんので………………………」
「ちょちょちょちょっと待って! 勘違い! 勘違いしてるから!!」
「それにシオンさんみたいな人ならボクは………………………」
見上げてくる瞳は詩音もよく知っている色に濡れた女の瞳。
それを見て詩音は思い出した。
強い子孫を残す為にアマゾネスは強い男に惹かれる。そして、子供を作る為にアマゾネスは発情する。
発情してしまったニーチャは先ほどまでの初々しいような反応はどこへやら。まさにアマゾネスらしい蠱惑的な色香を漂わせる。
服の中に手を入れられて愛撫される詩音は身体を弄られながらも女性特有に甘い香りと温かさに意思とは関係なく反応してしまう。
「一緒に気持ちよくなろう…………………?」
目的がズレてる。
ニーチャはアマゾネスの本能に焦れるまま詩音と身体を重ねようとする。
「うっ!」
「何をしているのですか?」
その刹那、セルが颯爽と現れてニーチャの首に当て身。意識を刈り取った。
「セ、セル……………助かった………………………」
「まったく、何をなさっていると思って見ていれば本当に女性には弱いのですから」
セルの登場に安堵する詩音。そんな詩音に呆れながらもニーチャの恰好を整え終えると、セルは詩音の顔のすぐ横に右手をつき、ぐいと顔を寄せて詰め寄った。
「セ、セルさん…………?」
俗に言う壁ドンをされた詩音はたじろぎながら左側に逸れようとしても左手で塞がれてしまう。
これって立場逆じゃない? 男が女にするものじゃない? と現実逃避しようとする詩音にセルは言った。
「外で、それも昼間からというのも興奮しますね?」
「ま―――」
静止の声を投げようも遅く、サキュバスと化したセルに搾り取られた。




