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二十八日目

「だっはははははははははははははははははッッ!! 旦那、マジ最高!! 面白過ぎんだろう!!」

「うるさい………………………」

詩音はアスモデウスと契約したことをガーゼに話すと、周囲の視線も気にせず大笑いされた。

「いやマジ。まさか俺も七つの悪魔と契約、それも無償に近い形で契約できるなんて思ってねえからよ。ぷ、くく……………………ま、旦那も男なんだし、夜の悩みは消えたじゃねえの?」

「余計なお世話だ」

消えたのは確かだが、他の人から言われると腹立たしいこの上ない。

「俺は戦闘系の能力(スキル)が欲しかったのに………………………」

「いいじゃねえか。元から旦那にはそこまで必要ねえだろ? それに何かしらの対策ぐらいにはなるじゃねえか」

ガーゼの言う通り、元から念には念を入れての悪魔契約だ。

そこまで頼りにするつもりはなかった。

「それの万が一に魔王が女なら旦那なら魅了しちまって終わりだ。魔王にも姿に違いはあっても性別はあるからな。女なら旦那の勝ちは確定だぜ?」

「嫌な勝ち方だけどね………………………」

魔王が女性なら詩音は血を流すことのない勝利を得ることはできるも、納得がいかないが大きい。

「まぁ、結局は魔王核は取り出すんだがな」

ガーゼの目的はあくまで魔王の体内にある核、魔王核。結局のところは倒す以外に選択肢はない。

「それで、魔王はあとどれぐらいで動き出すんだ?」

「ちらっとだけ見てきたが、まだ形が形成していただけで人格まではねえみたいだったぜ。後、一ヶ月は大丈夫だろう」

「一ヶ月か………………………」

長いようで短い時間。それまでに覚悟は固めておかないといけない。

「後一ヶ月で俺は大金が手に入ると思うと嬉しくて仕方がねえぜ」

「はいはい」

戦うのはこちらだから暢気にそんなことを口走るガーゼに適当に返事をする。

「なぁ、旦那。ちょっと試しにそこの店員を魅了してみてくれよ?」

ガーゼが指す方には一人の女性店員が他の客から注文を取っていた。

「はぁ、わかったよ。すみませ~ん」

本来なら使いたくはないのだが、万が一に実戦で使い方がわからないでは命に関わる。そうならない為の練習として詩音はアスモデウスとの契約で得た能力(スキル)を行使する。

「はい。お待たせ………………し………………ま、した………………………」

女性店員は詩音の顔を見るなりに心をどこかに置き去りにしたかのように、口が半開きになって詩音から目を離さない。

「へぇ、こりゃ凄ぇ………………………」

呆けている女性店員の眼前で手を振るうも女性店員は呆けたまま。完全に詩音に見惚れている。

「こういうこと」

「この状態で命令とかもできんのか? スカートをたくし上げろとか」

「できるぞ」

チラリと女性店員を見ると、女性店員は他の客には見えない様に制服のスカートをたくし上げてその中を詩音達に見せる。

「もういいよ。これを追加でお願い」

「はい…………」

注文を受けた女性店員は呆けた状態のまま店の奥へと入って行った。

「さっすがは七つの悪魔の一柱、アスモデウスの能力(スキル)魅了(チャーム)』だな。さっきの状態で旦那に抱かれた女はもう旦那以外で満足できなくなっちまうな。つーか、旦那がその気になったらこの街の女共を抱きまくりじゃねえか」

「そんなことをするつもりはない」

既に相手がいるのにそんな節操のない真似はしない。

精々、三人同時に相手をしても問題はなくなったぐらいだ。

「もったいねえな、女共を虜にできるってのに。いやむしろ、それで金稼ぎができるんじゃねえか? ………………なぁ、旦那、いっちょ試してみねえか? 準備は俺がしとくから分け前は6:4で旦那が多めでもいいからよ」

「しない。そこまで金に飢えていないし、そんなことをしたらセル達に絞り尽される」

男娼なんてしたくない詩音ははっきりと断っておく。

それ以前にそんなことをしたらそうしないようにセル達が精根を使い果たすまで相手をされそうで怖い。

「それよりも俺はもう少し落ち着いて寝たい………………………」

毎日交代制で相手をしている詩音はもう少し落ち着いた生活が欲しいと思うのは贅沢だろうか。

勿論セル達の相手をするのは嬉しいし、楽しい、気持ちがいい。

だけど、偶には何もせずゆっくりと寝たいのが本音だ。

今日は何もせずに寝ようと言えばそれに応じてくれるだろうが、それを男である自分の口からはしたくはない。

今朝だってアスモデウスと契約したことを話した時のセルの目がやばかった。

時折、セルは一体何を求めているのかわからなくなるが、これだけはわかる。

今夜の夜の相手はセルで間違いないということだけは。

「それだったら旦那。子供(ガキ)の奴隷を買えばいいじゃねえか。まだ性知識もない子供(ガキ)と一緒に寝りゃあの姉ちゃん達も流石にしねえだろう」

「………………………俺は奴隷が嫌なんだよ。それに子供が奴隷になるわけないだろう」

奴隷が主になるのは払えきれない借金を抱えた者や犯罪を犯した者がなる。少なくとも詩音はこの街で子供の奴隷など見たことはない。

「あー確かにこの街は治安もいいから知らねえのも無理はねえな」

「どういうこと?」

「旦那、ちょっくら裏社会の勉強しようや?」





店を出て詩音はガーゼの後ろをついて行く。

「なぁ、どこに向かってるんだ?」

「まぁ、ついてきなって」

路地裏に入って入り組んだ道を進んで行くガーゼに目的地を尋ねるもそうはぐらかされる。

「旦那は奴隷って聞いたらどう思う?」

「そりゃ、人権がなくどう扱われても文句が言えない存在」

「ま、概ねはそうだな。普通に生活していたら奴隷に落ちることはまずねぇ。大概の奴隷は自業自得だ。だが、裏社会はそうじゃねえんだぜ?」

愉快そうに笑うガーゼの足は止まる。その先は壁があって行き止まりになっていたが、ガーゼは懐から道化師(ピエロ)の仮面を取り出して詩音に渡す。

「それをつけときな。顔バレすると後々面倒だからな」

そう言って同じ道化師(ピエロ)の仮面をつけるガーゼは壁に何かの合図を出すかのように叩くと壁に人一人通れるほどの穴が姿を現すと迷いない足取りで入って行く。

「この街は治安も秩序もしっかりしてっから生活するにはいい街だが、どんなにいい街でも必ず裏があるんだぜ。その内の一つがここだ」

通路の先にある扉を開けると、そこには詩音達と同じように何かしらの仮面をつけた恰好のいい人達が熱気に包まれながら数字を叫んでいた。

そんな人達の前には首輪を嵌められた女性が全裸で立たされていた。

「奴隷オークションさ」

言葉を失っている詩音の隣がガーゼがこの場の事を説明する。

「ここで買われる奴隷は表とは違って非合法で手に入れられた奴等ばっかだ。あの女もきっと盗賊に散々嬲られた後でここに売られたんだろうな」

競売にかけられている奴隷とされた女性は仮面をつけた男性に買われて、そして、次は獣人の少女が姿を見せると、また数字が叫ぶ声は響く。

「なんで子供まで………………………」

「言ったろ? 非合法だって。金になるのならガキだって売るとこだぜ? おっと、先に言っておくが旦那、何もするなよ。ここで旦那が暴れてもまた別の所でオークションが開かれるだけだぜ」

前もってそう釘を刺しておくガーゼに詩音はただ啞然とするしかなかった。

「基本的にここで売られる奴隷は盗賊やら誘拐などで連れてこられた奴等ばっかだ。まぁ、ここにいる奴等は奴隷にされた経緯なんてどうでもいいか。自分が楽しむ為に奴隷を買いに来ただけなんだしよ。旦那も注意しとけよ? 旦那の女達は大金を出してでも買おうと思ういい女ばかりなんだからな」

まぁ、まずそんなことはねえだろうが。とガーゼは口にする。

「ここで暴れても裏社会の住民を敵に回すだけだ。一番の解決策といったらやっぱり金だな。裏の世界は金が全てだからよ。金さえ出せば大抵はどうにでもなる」

「………………………………それが、お前が金が欲しいって言っていた理由か?」

「まぁな。裏は表と違って金を持っている奴がものを言う。旦那に金があればここにいる奴隷を買って自由にすることだってできるぞ? それができるレベルだろ? 旦那は」

「………………………………俺にこれを見せさせて今回だけじゃなく、別の魔王も倒させようと腹か?」

「話が早くて助かるぜ。そういうこった」

今回だけ街を襲う魔王を倒せば終わりだと思っていた。だけど、ガーゼはその一回で詩音と手を切るつもりはなかった。

魔王を楽々倒せれる唯一の存在。ガーゼは詩音を使って魔王を倒し続けさせるのが目的だ。

「………………………………碌な死に方しないぞ、お前」

「裏の世界の人間がまともな死に方なんてできるわけねえだろう? なら、生きている内に好きなようにするだけだ」

皮肉にもガーゼはそう返した。

自分はまともな死に方なんてできないと分かっているような口ぶりだった。

「魔王核の売り上げを半分寄越せ」

「ああ、十分だ」

これに終わりはないことはわかっている。いくら大金を手に入れて奴隷を買って自由にしたとしてもまた攫われ、奴隷として売られ、それをまた買うの繰り返しだ。

自分が甘いというのはわかっていてもそれを放っておくことはできない。

詩音はここから出ようと思った矢先、本日の最後の奴隷が出てきた。

「お、旦那。あれなんかいいんじゃねえか?」

ガーゼの言葉に詩音は視線をそちらに向けるとそこにはまだ幼い少女が立っていた。

歳は五歳ぐらいだろう。ボロに身を包まれ、金色の髪を肩辺りまでに切り揃えられた耳長の少女。

「エルフだぜ。俺も生で見るのは初めてだ」

エルフ。眉目秀麗、不老長寿で有名な種族。森と共に生活するエルフはまずお目にかかれることはない。

そのエルフが奴隷オークションで競売にかけられている。

「旦那、折角だし、あのエルフの子供(ガキ)を買ったらどうだ? 他の奴等を見た感じだとそこまで買う気はねぇみたいだし」

滅多にお目にかかれない種族にも関わらず叫ぶ数字が低い。先ほどまでは100万は普通に超えていたが、今では50万辺りで停滞している。

隣でガーゼが『用途がねぇだろうからな』とぼやいていた。

肉体労働にも愛玩にも使えないからという理由で値段が安い。最後に出てきたのもエルフだからという理由だろう。

「今後奴隷を買った時も前例がいた方がやりやすいだろ?」

「わかったよ………………」

詩音はエルフの少女を100万(ゴール)で落札した。

帰ってセル達になんて説明しよう………………………。

詩音は頭を抱える問題が増えてしまった。

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