海賊・共通A②
「当然のことをしただけだし、礼なんていいって。でもまあ、俺に惚れたっていうな……いてっ!」
軽薄そうな男はいいかけてから押し黙る。
どうやらヘッドとやらに小突かれたようだ。
「悪いなこの馬鹿が、今のは気にするな」
彼はズルズルと引き摺られて去っていく。
「……チッ、遅かったか!!」
苛立つ男の声がする。また悪い奴だろうか、警戒しつつ黙って様子をみる。
下手に動けば見つかるのが世の常だからだ。
「先輩!こっちにはいません!」
少年の声が後ろからして、気がつけば私は前にでていた。
つまり後ろから謎の少年が、前には謎の男がいて挟み撃ちをかけられる形になっていた。
「誰だ!?」
「海賊の仲間か!?」
――――あれから、私は二人に事情を話す。もちろん自分が貴族の娘で屋敷を追い出されたということは伏せた。
そして一応このボロい姿のお影で私はそこらの貧しい娘で親に口減らしに捨てられた。という感じのただの被害者だと解釈して貰える。
貴族ということ以外は全部あってるので、これは嘘ではなく面倒事を回避する方便だと思う。
彼らだって貧しい農民の娘なら親元に返してもまた捨てると考える。
しかし貴族ならば取り調べやらがあるために面倒なのだ。