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変装探偵 柳沢凛   作者: 神楽屋
崩されたシンメトリー
10/16

歓迎会&反省会

これは後日談というか、オマケのようなものであり、本編とはそこまで関連性はありません。なお、本編の事件の補足がほんの僅かにあります。

「はい、では、宗良君の助手就任と事件解決を祝って乾杯!!」

「乾杯。」

「……。」


事件解決のその夜、僕と凛さんと優花さんは、とある居酒屋に飲みに来ていた。どうやら、お祝いのようであるが、何故か、違和感がある。


「どうしたの?」

「……あ、海崎さんだ。あの人はどうしたんです?」

「あぁ、海崎刑事なら、八神刑事にこってりしぼられてますよ。確か、法律ギリギリのことをしたとか。」

「仕事をすっぽかしたことを怒られた訳じゃないんですね……」


多分、毒物の扱いの法律だな。名前は知らないけど、流石に、トリカブトとかを持っていくのはまずいだろうしなぁ。その目標が僕だったというのは、かなりホラーな話だ。


「あんなボンクラのことなんて放っといて、今日は飲むわよ!! 何たって、歓迎会なんだから!!」


凛さんは、えらい張り切っている。……そんなに海崎さんのことが嫌いだったのだろうか。まぁ、愛の告白とか、思いっきりスルーしてたけど……。


「海崎刑事がここにいると、酔った凛先生を襲うのです。」

「え!?」

「まぁ、それを凛先生が撃退するのが、いつものことですけど。」

「あ、なるほど……」


あの人、そこまでいっちゃってる訳ね。警察なのに、ここまで無茶苦茶な人なんて、他にいるのだろうか。ちょっと、想像つかないな。


それにしても、今回の事件は、どこか気持ち悪いものだったな。河本かんなは自衛のためにやった訳で罪はないし、それどころか加藤智彦を愛していた。


そして、報われないと知りつつも、橋本雄大は河本かんなを思い続けて、守ろうとした。


森川一郎は完全にとばっちりで、加藤智彦はわがままな男だったのだろう。


こう考えてみれば、かなりあの二人は悲しい思いをしている訳だ。愛しているけど攻撃せざるをえなかった女と、どれほど大切に思ってもその思いは届かない男。


僕が橋本雄大の立場であったら、同じことをするのだろうか。そう考えてみれば、彼は、したことはまずいものであるが、非常に人として高尚なことになる。


僕の顔を見て気付いたのか、凛さんが話しかけてきた。


「なーに考えてるの、宗良君。」

「いや、今回の事件で、河本かんなは大丈夫かなって思って。」

「大丈夫よ。あの子には、橋本雄大がいるんだから。」

「ですが……。」

「あのね、河本かんな自身も気付いてないと思うけど、あの二人、両思いよ。」

「……え?」

「私、さっき、河本かんなが加藤智彦を愛してたって言ったけど、正確には違うと思うの。あれは、愛ではなくて、依存よ。」

「依存……。」

「そ、カウンセリングして気づいたけど、彼女は脅迫概念が強かったの。まぁ、脅しを真に受けちゃったのを聞けば分かるわよね?」

「……」

「多分、勘違いしちゃってるんだろうねぇ。だって、加藤智彦のことを話す顔と橋本雄大のことを話す顔が違ったから。まぁ、これは二人の問題だし、気にしなくてもいいと思うわ。それに、DVの跡もあるし、罪もそこまで重くはないでしょう。だから、私たちは気にしなくてもいいの。」

「……そうですね。」

「そうですよ、立花さん。もっと、気楽に考えましょうよ。」

「あ、優花さん!?」


急に優花さんが僕にもたれ掛かってきた。もしかして、酔っぱらったか!?


現在の座り位置として、僕の隣に優花さんが、向かい合って、凛さんがいる。そして、今ごろになって気づいた。何だ、このハーレムは。


見れば、酒の瓶がすでに一本空になっている。この二人、もしかして、酒豪なのか?


「あ、こら、人の男に手を出すんじゃないわ!!」

「いいじゃないですか、凛先生。別に、立花さんは誰のものでもないのですし。ね、立花さん?」

「ま、それもそうですけど、とりあえず、離れていただきたい。」


ここで酒に食われたら終わりだ。僕は、海崎さんルートを通りたくはない。すでに刑事を吹き飛ばしている凛さんと刑事の優花さん。手を出したら、本格的に骨でも折られかねない。


「えぇー、いいじゃないですか。それに、立花さん、推理の時はカッコよかったですよ。」

「それは感謝しよう。だから、お願いだから寄りかからないで、理性飛んじゃうから。」

「飛ばしちゃえー。」


一時のノリで腕一本失ってたまるか。僕は、自力で優花さんを押し戻した。すると、優花さんは諦めたように、また酒を飲んでいる。


そして、放ったらかしにされている凛さんはというと、えらいことになっていた。


「あぁー、もう、あのボンクラは何の役にもたたないくせに求愛ばっかしてくるし、事件ばっか持ってくるしー。宗良君は私を相手にしてくれないしさー。」


酒瓶がいつの間にか三本に増えている。隣を見れば、二本。……こいつら、アルコール中毒にでもなるつもりか? というか、このままだと、僕が被害者になること間違いなしだな……。


その日、結局飲み過ぎた二人を僕は介抱することになった。分かったのは、どんな美人でも、酔っぱらいすぎたら醜いという、悲しい現実だけだった……。

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