第84話:祭り
「……まさかばれているとは思いませんでした」
「無理ないですけどね。……お忍びですか?」
「そうですね。一応お名前を伺ってもよろしいですか?」
「ヴァルフェイル王国学生代表メンバーの一人で勇者。クロヤ・テルミヤです」
「同じくヴァルフェイル王国学生代表メンバーの一人で英雄。シロサカ・アキミチです。よろしく」
「右に同じ。違う点はただの異世界からの来訪者。ケイ・アカシだ」
「い……異世界人?でも髪の色が……」
「変装しているに決まってるでしょう?変装を解けば俺と啓の髪と眼は黒色になるし、アキは白色の髪と赤色の眼になります」
「そう……ですか。ちょっと感激ですね」
「そうですか?まあ、いいや。それで、城までお送りしましょうか?」
「……いえ、自分で戻れます」
「戻れるけど、戻りたくないと。それじゃあ、俺らと祭りをご一緒してくれません?」
「え?」
「いや、何ぶん不慣れな物で。ぜひご一緒していただけないかな?と思いまして。いいよな?二人とも」
「俺は構わない。それはアキも一緒だろう。気にする必要は無い。俺らはどうせお前の決断に従うだけだし」
アキも同じように頷いていた。単純だけど、今はちょっと有難いと感じている。姫様の方を見ると、ちょっと悩んでいる感じがする。
まあ、いきなり身も知りもしない奴に誘われたりすれば混乱もするだろう。俺は静かにコーヒーでも飲みながら答えが出るのを待った。
「……それじゃあ、お願いします」
「それはこちらのセリフですけどね。それじゃあ、行きましょうか」
俺は喫茶店の金を支払おうとすると、姫様がいきなり「私が払います」といってきた。さすがに女性にお金を払わせる訳にはいかない、という事でその場は俺が支払った。
その後は事あるごとに自分で払おうとしていた。自分で買い物をしてみたいと思ったんだろう。俺は姫様自身に買い物を楽しんでもらった。
「お楽しみいただけましたか?」
「ええ。本日はありがとうございました」
時は進んで夕方。祭りもこれからが本番という感じだったが、流石に姫様は戻らないといけないらしい。俺達もそろそろ戻った方がいいという事で、城まで送ってきた。
俺達は姫様にお礼を告げた後、それぞれの宿舎に戻った。お土産はアリシアにはネックレス。セイバーにはおそろいの腕輪。カリアさんはイヤリング。姉さんには指輪。
なんか姉さんが薬指にはめて喜んでいた。俺はもう婚約者がいるし、姉さんとは血もつながってるから結婚なんかできる訳無いんだけど……。
まあ、みんな喜んでいるし。それでいいか。ちなみにアキと啓は俺の指示の元、会長とテルファンさんにお土産を買って帰ってきた。二人ともすごい喜んでいたらしい。




