第2話:そして少年は告げられる(2)
何言ってんだ?この人は。異世界への片道切符?そういう場合は大抵言われる奴が勇者とか英雄やらになっちまうだろ?
あれ、でもこの人俺を『勇者の卵』って呼ぶよな?って事は何?俺は勇者でしたってオチか?
「別にどっちでもいい」
「お?言うねえ。話をとりあえず訊いてくれるかな?そこの『英雄の卵』君と一緒に、さ」
俺が昭道の方を向くと、なんか瞬きしながらこっちを見ていた。あれ?神様の事見えてるのか?
俺が初めて会ったとき、他の人には見えないから。とか言ってたのに。しかもなんだって?『英雄の卵』?もう完全に意味分からなくなってきた。
「私はここ以外に、もう一つ世界を担当してるんだけどさ。そこに別の神が『魔王』を生み出しちゃったのよ。それで、私のお気に入りの子にお願いされちゃったのよ。『助けて下さい』ってさ」
「そんなもん自分の世界でどうにかすりゃいいだろ?何か特別な力を持つ奴に、それこそ勇者の装備的な物を用意してやれば。俺が出張る必要無いだろ?」
「それが出来たらこんな事は頼まないよ。私のお気に入りの子以外、極めて強い特別な力を持つ子がいないのよ。その点君はバッチリよ。特別な力を持ってる。
大体君は本当はこの世界で言う『魔王』だったのよ?でも、君の隣にいる『英雄の卵』君が友達になった事で、その運命は変わり君は『勇者の卵』になったの」
「それは本当だったら俺は、昭道……いやアキと闘う事になってたって事か?」
「そうだね。それで、どうする?向こうの世界では君を必要としている人がいるんだけど」
「それなら仕方ないか。行くよ。俺しかいないんだったらな」
「あの、神様。俺はまだ駄目なんですか?」
「君はまだ駄目。こっちの彼の方が早くに修業を始めてたから、完成度としてはこちらの方が高いのよ」
「そう、ですか」
アキは寂しそうな顔を浮かべつつも、次の瞬間には笑顔で振りむいた。
「頑張れよ。もしかしたら、俺もそっちに行くかもしれないからそれまで頑張れよ。クロ」
「当たり前だろ?お前こそ勉強なんとかしろよ?」
「それ言うなよ~。それでお前、彩香には言っていくのか?」
「その必要はないだろ?どうせ俺に関する記憶とかは消すんだろ?」
「まあね。君の情報が残ってると、この世界に歪が生じるしね。でも『英雄の卵』君からは奪わないよ。サービスだよ」
「それでいつ迎えに?」
「今夜零時に君の家の玄関先で。荷物とかまとめときなよ」
「そうする。お前はどうする?」
「もちろん見送りに行くよ。だから、頑張れよ」
「はいはい。それじゃ、とっとと家に帰るとしようかね」
「そうだな。それじゃあ神様、また後で」
「うん。バイバーイ。頼んだよ?『勇者』君」
そう俺に告げると、神様はスゥー、と姿を消してしまった。俺は家に帰るとアキに協力してもらいつつ荷物をまとめ始めた。