第3話:そして少年は旅立つ
「これで終わりっと。それじゃあ、ほい。この世界で最後の俺の料理だ」
「おお、旨そうだな。しかしお前の料理をこの世界で食うのもこれが最後、か。なんだか感慨深いよな」
「そうだな。お前があの時声をかけてくれなきゃ、今の俺は無かったけどな」
「声をかけたらとんでもない喧嘩になったじゃねえか。あれ、結構いたかったんだぜ?」
「仕方ないだろ?あの状況であんな軽い声をかけられなんかしたら、さ。それよりもとっとと食え。温かい内が上手い料理しかないんだぞ?冷めたら本来の旨みが無くなる」
「お、それもそうだな。早いとこ食わないと」
「それじゃあ、私もご相伴にあずかろうかな」
「……いきなり登場するのは止めてくれませんか?神様」
「ま、良いじゃん。ほら、早く食べようよ」
それから俺達は、喋りながら食事をつづけた。零時まではめちゃくちゃ速かった。それから俺は荷物をしまう作業に入った。
「この荷物を汝の中へ『黒影』」
俺の足元の影が伸びて、俺の前にあった荷物を全て呑みこんだ。呑みこんだとはいっても別空間に収納してるだけなんだけど。
「あ、君を送る世界はスキル制になってるから」
「スキル制?それってあれか?剣術〇〇レベル、とかそんな感じか?」
「そうそう。君は魔術のスキルがマックスの100になってるから、魔術創造の能力がつくよ」
「そりゃあ、ありがたいね。でも普段通り、俺の黒の力と名前でのみ発動するんだろ?」
「ええっとね、もう出来てる術だったら無詠唱でもできるよ。でも、新しい術は無理だから」
「了解。それじゃあ、行くとしようか」
「そうだね。準備は万端みたいだし、玄関の外に出て。もう出来上がってるから」
「わかりました。アキ、無いとは思うけどもし彩香が俺の事を覚えていたら、この手紙を渡してくれないか?」
「……わかった。でも、無いと思うぜ?」
「それでも、だよ。一種の希望だから」
「そうかい。確かに預かった」
「……ありがとう。それじゃ、じゃあな」
俺達が表に出ると、魔法陣が光り輝いていた。この光も他の人には見えない。見えるのは特殊な力を持つ者だけらしい。
「何?この光は……一体何なの?」
「彩香……。どうしてこの光が見えるんだ?いや、そんな事はどうでもいいか」
「ちょっと、どういう事よ!?クロ!」
「後の説明はアキに任せた。じゃあ、さようならだ。バイバイ、彩香。
――――我が翼、異なりし世界を飛ぶ力を与えよ。『黒翼』――――」
俺の背中から黒い翼が生えた。烏のような常闇の色。でも、綺麗な色。それを羽ばたかせ空中に浮いている陣に向かって飛翔した。
そして俺は、生まれてから16年間育った世界を捨て、別の世界に飛び去った。




