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一生懸命笑顔を作ってはいたけど。
あたしは会社に戻ったあと、涙こそ流さなかったものの、結局ぐすぐすと鼻を鳴らし続けていた。
「どうした? 風邪か?」
ショコたんが話しかけてきた。
「……すまん。冗談を聞いている気分ではなさそうだな」
あたしが睨みつけるような視線を向けると、ショコたんはすぐに謝罪の言葉を続ける。
「……いえ」
短く答えるだけのあたし。
ショコたんは、すべてわかってるんだ……。
その予想を証明するかのように、彼女は優しく語りかけてくれた。
「こんな仕事をしていると、今回のように悲しい結末となることもある。だがな、マリオン。涙は悲しみを流し去ってくれる魔法の水なんだ」
「で、でも……! 流し去っちゃったら、キャラちゃんの思い出とかも、忘れちゃうってことに……!」
ショコたんの言葉が納得できなかったあたしは、すかさず反論を返す。
だけどそこに、ショコたん本人から、さらなる反論が加えられた。
「それは違うぞ」
呼吸を整えるように、そしてあたしが落ち着く時間を与えてくれるように、ほんの一瞬だけ、彼女は間を置く。
続けてショコたんは一気に、あたしの心の奥底まで届いてくるほどの、重く、それでいて熱く、だけどとても温かい言葉を贈ってくれた。
「人は誰しも、悲しみを乗り越えて成長していく。
いわば、たくさんの人の想いを重ねた地面に立って、上へ上へと目指して手を伸ばしていくんだ。
涙で悲しみを洗い流すこと。
それはべつに、忘れてしまうことではないんだぞ?
洗い流された悲しみは、しっかりと足もとで息づき、マリオン、お前の体を、そして心を支えてくれる。
命のステップになるんだ。
だからこそ、お前はそんな人たちの想いに負けないように、頑張って生きていかなくてはならない。
他のみんなや、われ自身も、な。
泣いたあとには心からの笑顔が待っている。
その笑顔は、決して悲しみを忘れたから溢れてくるわけじゃない。
すべてを受け入れたことによって溢れてくる、未来を照らし出す輝きなんだ。
だから泣くのを恥じることはない。
もちろん、笑うのを恥じることもない。
それを伝えていくのが、われらティアーズマジックの務めなんだよ」
「ショコたん……」
あたしは落ち着いて、優しい瞳を向けてくれている彼女を見つめる。
見た目はどう考えても幼い女の子としか思えないのに。
今まで生きてきた年輪が、その心の中には刻まれているのだ。
もっとも、その年輪はショコたんの顔にも、微かな目尻のシワとして刻まれているみたいだけど。
……なんて言ったら、お団子クラッシュを食らっちゃうだろうな。
ともかく、背も小さくて、かなり控えめなあたしにも増してペッタンコな体型からは考えられないほど、彼女は大きな存在なのだと、改めて感じた。
そんなあたしを見つめ返しているショコたんは不意に、
「……なにやら失礼な思念も感じるが……。まぁ、今日のところは不問としておくか」
と、一瞬目を光らせながらつぶやいた。
あう……、もしかしてショコたん、人の心まで読めたりするの……?
どうやらショコたんは、大きな存在であると同時に、得体の知れない存在でもあるようだ。
でもあたしは、そんな彼女のもとで、これからもティアーズマジックの社員として、生活を続けていく決意を固めていた。
――キャラちゃん、それでいいんだよね?
――うん! 頑張ってね!
あたしの耳には、天国から鳴り響いてくるキャラちゃんのエールが、はっきりと聞こえたような気がした。




