そう思って銃を手に取りこめかみに向けた
〇
皆の凍り付いた顔を見て、僕は自分のやってしまった事の重大さに気が付いた。自分の中の苦しみを耐え切れなくなり吐き出してしまった。吐き出してしまったその苦しみは、また憎しみのように伝染し、今度は活気ではなく底のない苦しみにもがくことになる。
僕は急いで彼らから離れ鍵を閉め部屋から出た。
「……」
これを終わらせるためには何が必要かを考え、それは一人一人の意識の変化だという答えにたどり着いた。
一人一人が今の異常事態に気が付き、一人一人の命の重さに気が付き、敵は彼らではないと皆が気付いた時に
この異常は終わることが
できるのではないか
そう
考えたが
バカみたいに
バカがバカみたいに
考えた
だけど、大きくなりすぎていて大きくなりすぎていて、
バカがバカ
みたいに
その考えを押し
つけたところで
相手に底のない苦しみを
与えるだけだということに
今
気が付いて。
あぁ
そうか
もぅ
終わらせることは
できないんだ
と
今
心の底から思って
敵の
これを終わらせるという名の敵の
大きさを
知った。
敵の大きさは
映画のスクリーンに
収まるようなものではなくて
個体ではなくて
人から無限に出てくる
真っ黒いガスは
地球よりも大きくなって
皆が死に絶えるしか終わりが見えないんだとわかった。自分一人では何もできないのだと、何百人と自分がいたところでどうにもならないのだと、きがついた。どうにもできない。ひとをかえたところであらたなくるしみをあたえてしまう。ぼくはくるしみのたねであり、いじょうのなかでのせいじょうはじゃまでしかない。だったらぼくはいらないのだと、心の底から思った。そう思って銃を手に取りこめかみに向けた。
〇
目を覚ますと、僕は公園を歩いていた。
「それでさぁ」
そう声が聞こえ隣に目をやると、さっき僕を抱きしめてくれていた男が楽し気に話していた。
「…」
「ん?どうした?怖い顔して?」
彼が目をきょとんとしながら覗き込む。
「え、いや、別に、何でもないよ」
「え?そんなことないだろ~」
そう笑って言う彼に
「何でもないよ、何でもない…何か他のこと考えてた。だから話何にも聞いてない。また一から話して」
そう言うと彼は大きく手を叩いて笑った。
〇
ダ…ダダダダ!
乾いた音が僕の銃から発せられ、それらは少し反響して、瞬時に灰色の空に飲み込まれ消えていった。
目の前に座らされていた死にそうな男の額に穴が開き、3秒前まで肩で息をしながら鋭い眼光でこちらを見ていた男は死んでいた。
死んでいた。しんでいた。シンでイタ。
仲間が何人も殺された。生かしておけば殺されるかもしれない。報告され次は僕らが一網打尽にされるかもしれない。されるかもしれない。つぎはじぶんかもしれない。なかまがなんにんもころされた。
ころされた。コロサレタ。殺された。
この人に?このひとに?この人に?
「おい!」
手が震えて、足が震えて、息が震えて、上下の歯が当たってカチカチと頭に響いている。
「もう一度撃て!」
この人に殺されたのか?この人は殺したのか?殺したのなら殺していいのか?殺してなければ殺しちゃいけないのか?殺していいのか?殺してはいけないのか?殺していいのか?殺しちゃいけないのか?ころして
「ぁ…」
死んだ男と目が合った。
「え!」
死んだ男はクククと肩を揺らして笑っていた。
周りにいた兵士も笑みを浮かべている。
怖い上官が高笑いして木の板を掲げる。
「ドッキリ大成功!」
「ぇ…ええ!」
驚く僕の姿に皆は腹を抱えて笑い出した。
〇
目の前に子供がいた。
目は青く髪の毛はきれいな黄色の男の子。
その隣には髪の毛のパーマが少し強めで目の優しい黒人の男の子。
その隣にはサラサラな黑い髪の気の弱そうな男の子。
その隣もその隣もその隣も子供がいて、僕らは皆、そのまま河原で遊んだ。海で遊び、公園で遊び、デパートのおもちゃ売り場で、何も買わないのにあれが欲しいこれが欲しいと指をさした。
そしてそのまま夜になり、たくさんのベッドの隣にそれぞれの優しい両親がいて、皆が今日あったことを似たニュアンスで違うように話した。
皆のお母さんとお父さんは優しくうなずき、優しくぼくらの頭を撫でた。
「今日も楽しかった!明日もきっと楽しいね!」
「だって皆がいるんだもん!」
お母さんとお父さんが優しくぼくを見ている。
「おやすみなさい!」




