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貴方の言うことでも。

三話構成です。

戦争描写があります。


この事を了承の上で読んでくださると幸いです。


私と彼は幼馴染だ。


「おまえ、今日からオレの子分な。」

「うん。」


貴族の同世代の子の集まりで一人だけ浮いていた私の手を引いて彼はそう言い放った。


最初は彼の気まぐれだと思っていた。

でも、予想に反して集まりがある度に彼は私に声をかけてくれた。


「おい!その本、オレにも読ませろ!」

「うん。いっしょによもう。」


言葉は少し乱暴だけど、垣間見える彼の優しさが好きだった。


私は彼の言うことなら何でも従っていた。

彼の言うことにはすべて私への気遣いがあった。だからこそ、私は彼にどんどん惹かれていった。


私と彼が初めて出会ったときから二年が経った頃、私と彼の仲が良いという噂がたち、両家の話し合いが行われ、彼と私の婚約が結ばれることになった。


彼の性格上、あまり大人たちの事情を理解していなかったのだろう。

何故か私と会う機会が増えることだけを喜ぶ彼を愛しいと感じた。


そこからは恋心は増すばかりだった。


婚約者という立場を得た以上、彼の隣に堂々といられる。

そのことに毎日浮かれていた。


彼は会ったときから変わらず、私を子分扱いするけれども彼の隣にいられることに浮かれていた私はそのことを気にも留めず、一時の喜びに浸っていた。


婚約者になってから三年が経った頃、私たちは九歳になった。

その頃になってから、彼は『婚約者』というものを理解し始めたからか、少しだけ私の前で照れくさそうにするようになった。


その時の喜びは一生忘れないだろう。


照れくさそうにするものの、彼の優しさはかつてと変わらず、むしろ婚約者としてより優しくしてくれるようになった。


彼はたくさんの花を抱えて、私にくれた。

顔を真っ赤にして。


そんな彼を私は愛している。


十一歳になり、彼は学園へ、私は家で家庭教師からピアノ、ダンス、刺繍などを教わるようになった。


会う機会は減ったものの、彼はまめに手紙を書いてくれた。


でも、ある時を境に手紙は減っていって、遂にはぱったりと来なくなった。

私が送っても彼は返事を返してはくれなかった。


その頃、わが国と隣国は緊張状態になっていた。いつ戦争が起こるかわからない。

普段、宝飾品やドレスの話で持ち切りの淑女の茶会ですら、ひっそりと話題に出されるくらいだった。


手紙が来なくなったのはもしかしたら……。


私は嫌な考えが頭に浮かんで、それを消すように淑女教育に没頭していた。


そうして月日が過ぎ去っていった頃に手紙が一通来た。


彼からだった。


「好きな人が出来た。婚約破棄をしてくれ。」


意味を理解することが出来なかった。たった二言なのに。

それだけ私にとって衝撃的で胸を引き裂かれたような想いだった。


淑女の間ではこんな噂がたっていた。

「隣国との緊張緩和をするために婚姻を結ぶらしい。隣国の王女たっての申し出だ。」と。


わが国は王子が存在しない。女王が許されている国であるからだ。


だからこそ、王族の次に爵位が高い嫡男として彼が選ばれるのは必然なのだ。


彼の優しさ故に「好きな人ができた」と言ったのだ。仕方ないのだ。

平和のための犠牲は仕方ない。


そう思わない限りは私はきっと割り切れない。

いや、そう思ったとしても私はきっと彼のことを……。


そして、私が彼に返信をしないまま、婚姻は結ばれた。


国中が祝福の花をまいているようだ。花の香りが締め切った部屋にまで漂う。


彼のためにやっていた淑女教育になんの意味の見いだせず、手につかなかった。


描いていた未来が一瞬にして砕け散ったようで、もはや自分という存在が生きていることすら忘れるかのように過ごした。


婚姻が結ばれてから二週間が経った頃、隣国が戦争の準備をしているとの情報が国中に知れ渡った。


そして王女に事情聴取したところ、王女は隣国を追放され、この国で生きる為に国璽を偽造したと自白した。


国中は混乱に陥った。


そして国中の男性が集められ、軍隊がつくられた。

その中には彼もいた。


彼は貴族なので、先頭の隊だった。


婚姻式の時には開けなかった窓を開けると軍隊を送るパレードが行われていた。


彼は軍服に身を包んで真剣な表情をしていた。


腰袋から手紙が少し見えていた。


あの封筒は間違いなく私のものだった。


出兵すると決まった時に急いで出したものだ。


なんせ彼が「ごめん。俺のことは忘れてくれていい。」なんていう馬鹿な手紙を送るものだから。



だから私は……。


『貴方の言うことでも聞けないことはあるんですよ。』

















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