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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第2部 海の国編 (初任務・火焔馬・海の民・ハイワーシズ)

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第269話 海の民の今後 その6 別れと新たな門出

 移住者の第一陣がハイワーシズに出発してから遅れること数日。セントリングの返事を届けに来たのはなんと、護聖八騎にして上位四人のうちの一人である『全魔(ぜんま)』エレオノールだった。


「今回の件について王は驚いておられましたが、先に届いていたガイウス将軍からの進言もあって、快く受け入れることを決めましたわ。

 セントリングに到着するまでの護衛は(わたくし)が務めますので、どうかご安心くださいませ」


「長年に渡り多大なご迷惑をおかけしたにも拘わらず、受け入れを快く承諾してくださったセントリング国王の、寛大なるお心に感謝いたします。

 また、同胞をお守りくださるエレオノール殿と、旅立つ者たちの無事を祈っております」


 謁見の間でエレオノールと対面したクリムゼリスは、アルテミアから予めセントリング側の答えを聞いていたため、イリトゥエルが作った解答文章をとにかく暗記して、棒読みながらもどうにか役目をこなした。


 一方で、こちらもアルテミアから事情を聞いているエレオノールは、ぎこちないクリムゼリスの言葉や仕草に理解を示し、むしろそれを微笑ましく思っているようだった。


 修行の成果が出るにはまだ少し時間がかかるようだけど、クリムゼリスにとっては良い経験になったことだろう。

 彼女の後ろに控えて時折、助け船を出しているイリトゥエルも何だか少し誇らしげだ。



 そうして翌日には早速、セントリングに移住する人たちが船に乗り込み、僕たちもそれを見送りに来ていると、ケオカマールに連れられたプロディサウラと一緒に、荷物を背負ったアクノヴァルナがやって来た。


 二人とも体の調子は既にだいぶ良くなっていたのと、この数日間で色々と話し合ったのか、特にアクノヴァルナの方は随分と表情がスッキリして穏やかにもなっていた。


「私も彼らと共にセントリングへ行きたいと思います」


「えぇ、話は聞いてるわ。でも、本当に良いの?」


「はい。私には私の償うべき罪がありますし、何よりこれがあの御方の望みですから」


 話を聞いたアルテミアが、後ろにいるプロディサウラの方を気にしながら言うと、アクノヴァルナは強い意志を宿した眼で真っ直ぐにアルテミアを見て頷く。


「そう……何か吹っ切れたみたいね。私としてもあなたとの勝負はついてないから、セントリングに来てくれるのは嬉しいわ。これからよろしくね」


 アルテミアがそう言って手を差し出すと、アクノヴァルナもそれに応えて握手を交わす。

 すると僕の隣でそれを見ていたルミアも、

「ふふふ、私との勝負もまだついてませんからね~」

 などと言ってそこに混ざっていった。


「望むところです。でもしばらくは開拓などで忙しいと思うので、私のところに来るならお手伝いが優先ですよ?」


「うぅっ、まぁそれは仕方がありませんね~。

 ではその時にはジグさんやイリトゥエルさんも連れて、三人でお手伝いしますよ~」


 挑戦的に言ったルミアだったが、本当に穏やかになったアクノヴァルナには以前のような毒気が無く、逆にお手伝いの約束をさせられていた。

 しかし、そんな彼女を見たアルテミアやルミアは、どこか嬉しそうでもあった。


「皆のこと、くれぐれも頼む」


「お任せください。他の者たちと力を合わせ、必ずやプロディサウラ様と……そして、クリムゼリス様のご期待に応えて見せます」


 プロディサウラの言葉に頷いたアクノヴァルナは、絶対に従わないと言っていたクリムゼリスに様付けしていた。

 本当にどうしたというのだろう? まさか数日のウチに中身がすり替えられていたりしないだろうか。

 頭の中で「?」がグルグルと回るなか、一緒にいたルミアとイリトゥエルは、僕ほど疑問には思っていない様子でそれを見ていた。


「二人は何か知ってるの?」


「えっ? いえ、私は別に、その……」


「ジグさんに察しろというのは難しいかも知れませんが、ここで理由を教えるのも野暮というものですからね~」


 僕が尋ねると、赤面して何やらモゴモゴ言っているイリトゥエルと、二人を見て微笑みながらも結局は教えてくれないルミアであった。



 そうしてエレオノールがアクノヴァルナや移住者を連れてグランドセイルを離れ、その数日後には僕たちもハイワーシズへと向かう日がやって来た。


 アクノヴァルナをセントリングに向かわせたプロディサウラ自身は、ハイワーシズへ行って提供された島の開拓に従事するらしく、クリムゼリスや他の海の民に別れを告げると、ケオカマールの船へと乗り込んでいった。


「もうしばらくすれば補修も済んで、クリムゼリス様の戴冠式(たいかんしき)も行えるというのに」


「んなモンは後だ後! 今はやることが多すぎてそれどころじゃないし、そんな事にあてる時間があるならアタシも皆も、ゆっくり休んだ方が良いだろ」


 支度を終えた僕たちを見送りに来たラファーガが残念そうに言うが、疲れた表情のクリムゼリスが勘弁してくれといった感じで答える。


此度(こたび)は本当に世話になった。改めて礼を言う。それと、色々と済まなかった」


「もう気にしなくて良いですよ。それよりもクリムゼリスの事をお願いしますね」


「あぁ、それは任せてくれ。せっかくやり直す機会を授かったのだ、クリムゼリス様と共に何としてもやり遂げて、必ずこの恩に報いよう」


 すっかり忠臣となったフルトネールが頭を下げるが、僕としてはそれはそれで怖いので止めて欲しかった。

 アクノヴァルナと同様に彼の表情もだいぶ穏やかになっていたが、それでも僕としては最初の出会いやその後の交戦経験から、どうやらフルトネールに対する恐れの感情が、心のどこかに植え付けられているらしかった。


 これが刷り込みってヤツなのだろうか……。僕はそんな考えを振り切るように顔をブルブル振ると、僕たちに謝るよりはと思って新しい主のことをお願いした。するとフルトネールは胸元に拳を当てて頷いていた。


「三人とも、そろそろ時間よ?」


 僕たちが他愛もない話をしていると、アルテミアの呼ぶ声が聞こえてきた。


「じゃあ、そろそろ行くね。クリムゼリスも大変だろうけど、皆と一緒に頑張って」


「話し方や作法などは全て紙に纏めてありますから、それを読みながら毎日の練習を欠かさず、習慣にするようにしてくださいね」


 僕とイリトゥエルが言うと、顔を強張らせたクリムゼリスは無言で頷く。


「大丈夫ですよ~。クリムゼリスさんはこの私が認めた偉大なる者なのですから、きっと海の民を再建するどころか、黄金時代を築くほど皆のことを幸せに出来るのです~!

  導きの女神たるこの私が……わ、わだじが言うのでずがらぁぁぁぁぁっ!」


「ば、馬鹿野郎っ! せっかく我慢してたのにルミアが泣いたら……泣いだらダメだろぉぉっっ!」


 予め湿っぽい別れは門出に相応しくないからと言っていたルミアだったが、自分が真っ先に我慢の限界を超えて涙が決壊していた。

 そしてそれに釣られてクリムゼリスも泣き始めると、イリトゥエルも耐えられなかったようだ。


「これまで大変な苦労をしてきたのですから、ちゃんと幸せになってくださいね!」


「ありがどぉぉっ! イリトゥエルも一緒にいるからって油断しないで、しっかり掴まえておけよぉぉ!」


 互いに泣きながら抱き締めあって健闘を祈るクリムゼリスとイリトゥエル、そしてその(かたわ)らでわんわん泣いているルミアという光景は、女子三人が短期間でどれだけ仲良くなったかを表しているようだった。


 そうしてひとしきり泣いた彼女たちは、その後はスッキリした表情で互いに握手を交わすと、案外アッサリと別れた。

 女の子ってよく分からんね……などと考えていた僕も、クリムゼリスと別れの挨拶を交わして握手する。


「またそのうち皆で、今度は遊びに来いよなっ!」


「うん、必ず。楽しみにしてるから、それまでクリムゼリスも元気してるんだよ」


「わかった! でもあんまり長いこと顔を出さないならコッチから依頼を出して、来る理由を作ってやるからな!」


 僕の手が痛くなるほどの力で強く握りながらそう言うと、クリムゼリスは悪そうな顔で笑う。


「わかったわかった。それに海の民の皆から教えてもらった義手のこともあるし、それの結果も報告がてら必ず遊びに来るよ」


「ならよしっ!」


 手を放したクリムゼリスは弾けるような笑顔でニシシと笑うと、いよいよ船の出航が始まる。


「皆、本当にありがとう! アタシは絶対に海の民を立て直すから、そうしたら必ずまた会おう!」


「手紙を書きますから、クリムゼリスからもお返事をくださいね!」


「クリムゼリスさんなら絶対に出来ます~! 自分の力を信じてください!」


「一人で頑張りすぎないで、ちゃんと周りも見るんだよ!」


 互いに手を振りながら別れを告げ、再会を誓うと僕たちの乗る船はグランドセイルを離れ、ハイワーシズを目指して北西へと進路を取る。


「さぁ、私たちの仕事はこれからが本番よ。

 本来の目的はハイワーシズの会議に出席する、ウィルヘルム大臣の護衛なんだから……」


「あっ……」


 アルテミアの言葉にそういえばと気付いた僕たちは、互いに顔を見合わせると苦笑いを浮かべて、今回の元々の目的を思い出したのだった。

だいぶ長かった海の民編もひとまずここまでです。


人が変わったようなアクノヴァルナですが、肩の力を抜いただけではこうはなりません。

まぁ恐らく何かあったのですが、これは『本人たち』だけが知っていれば良いことかなと。


エレオノールが久しぶりに出てきましたが、危険な海を渡るために必要な戦力として今回は出てもらいました。

もしも彼女のいる船を襲う海賊がいたなら、ご愁傷様ですね(笑)


2カ所に分かれる事になった人々には守る者が必要ということで、プロディサウラとアクノヴァルナはそれぞれハイワーシズとセントリングに向かうことを決意。


まだまだ復興途中で多額の賠償もあり、人も減って完全な再建までにはほど遠い海の民は、本当にこれからが大変です。

しかし、手を差し伸べられずにいた頃と違って隣国との関係も改善され、皆が一つの目的へと進む今こそ、生まれ変わるチャンス。

どんな苦境も乗り越えてきたクリムゼリスが長なら、きっと大丈夫なはず。


というわけで、いよいよハイワーシズ編に突入しますが、その前に補足や息抜きを挟むかも知れません。

予めご了承くださいませ(゜゜)(。。)ペコッ

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― 新着の感想 ―
[良い点] まずは海の民編の完結(でいいのかな?)おめでとうございます! きっと何かあったプロディサウラさんとアクノヴァルナさんですが、一緒にいられないのですね。 個人的には二人が一緒にいられたらと…
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