第192話 サスリブ村の討伐依頼 その3 火焔の馬と子鬼魔導師
いつもお読みいただきありがとうございます。
このたび登場人物の一部をキャラクターメーカーで作らせていただきました。
作者のツイッターで公開してますので、もし良かったらご覧ください。
大事なものを載せ忘れてた…(;´Д`)
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@tensei_itotukai
入り口を上位種が守っていたから安心してるのか、洞窟内には索敵魔法で探った通り特に守りを固めているということもなく、僕たちは容易に侵入し奥へと進んでいけた。
「奥では随分と激しく争ってるみたいだね」
「ですね。でも、狭い洞窟内だとフレアギャロップの実力も活かしきれませんし、恐らくこれは……」
僕たちは奥へ奥へと進み、前方に広い空間がある少し手前で止まって中の様子を探る。
するとそこには炎に焼かれて転がっている無数のゴブリンと、赤々とした体毛に真紅の眼、橙色の尻尾、燃えるような鬣や蹄をして炎を身に纏う大きな馬と、その大きな馬をそのまま小さくしたような仔馬を捕らえて配下に守られている、恐らくはゴブリンの中でも魔導師系統の上位種がいた。
「小さいのを人質にしてるのかな?
それにしてもゴブリンキャスターだっけ?……魔法使い系のゴブリンの上位種って珍しいよね」
「違いますよジグさん。ゴブリンのなかで魔法を扱える者がゴブリンキャスターで、あれはそのいくつかいる上位種の中の一つで、恐らくはゴブリンウィザードです」
「ゴブリンは種類が多くてややこしいなぁ……」
ルミアの説明に混乱し始める僕だったが、ちょうどその時ゴブリンウィザードが仔馬を氷の檻に閉じ込めて、配下のゴブリンたちにフレアギャロップへの攻撃を命じた。
しかも自身は何やら詠唱のようなものを始めて、ゴブリンたちの相手をしているフレアギャロップに杖を向けるとその瞬間、杖からは雷が発生してフレアギャロップを貫き、体勢を崩したところにゴブリン達が群がっていく。
しかしフレアギャロップも負けじと全身から炎を巻き起こしてそれらを焼き払うと、蹄の炎を更に燃え上がらせて血を流しながらゴブリンウィザードへと突進していく。
だがその突進は、ウィザードを守るように立ちはだかったバトルゴブリンの大盾に阻止され、ガァンッ!と音を立てて両者が仰け反ると、またもウィザードの放った魔法がフレアギャロップに命中する。
「……ねぇルミア、フレアギャロップは人間を襲うことは無いって言ってたよね?」
「例外はありますけど、こちらから手を出さない限りはあちらも滅多に関わってきませんよ~。
それでも彼らの素材はそれなりの値段で売れますから、冒険者はたまに手を出すようですし、この近辺にいるはずの無いフレアギャロップがここにいる原因も恐らくはそれですね~」
「こう見えて僕って前世では競馬こそしなかったけれど、1人寂しく牧場に行っては馬にニンジンをあげたり、遠くから写真を撮ったりしてたんだよね……」
「へぇ、お馬さんが好きなのですか。それは知りませんでしたね~」
「だからさ、その……馬っぽいとは言ってもモンスターだけど、あんな風に子供を守ろうとしてるのを見るとさ……」
「はは~ん、さてはジグさん……」
そこまで言った僕が口籠もっていると、ルミアは興味深そうな表情でこちらを見てニヤリと笑う。
「いや、冒険者としてはどうなのかなとは思うんだよ? でも……ねぇ?」
「まぁ私は別に構いませんよ。子を守る親の気持ちを理解できないワケでもありませんし、神たる私は本来、モンスターも人間も分け隔てなく扱わねばなりませんからね~」
ルミアはそう言った後に、魔族とアンデッドは別ですし今は人間ですけどね~、と付け足して笑う。
「ありがとう。ルミアには治療を任せても良い?」
「はいはい、任されましたよ~」
「よし、じゃあ行くね…!」
協力してもらえるのが嬉しくて、ついニヤけてしまう。
僕は物陰から飛び出すと一気に間合いを詰めて、フレアギャロップに斧を振り下ろそうとしていたバトルゴブリンの顔面に思い切りドロップキックを叩き込む。
『ホーリー・ライト!』『自在粘糸!』
続いて閃光魔法でゴブリン達の視界を奪うと、粘着糸を飛ばして仔馬の捕らえられている檻を引き寄せ、白剣でそれを破壊して解放する。
『キュアエル!』『マジックシェル!』
続いてルミアがフレアギャロップに回復魔法と魔法耐性の補助魔法をかけると、言葉は通じなくとも自分たちを助けようとしていることを理解したらしいフレアギャロップ親子は、僕たちを避けるように炎を伸ばすと目がくらんでいるゴブリン達を焼き払う。
「おぉっ、何てお利口なお馬さんなんだ!」
「ジグさんがちょっと気持ち悪いですね……」
「う、うるさいよそこっ! ファンタジーな世界でこんなカッコイイ馬型モンスターと会うと、しかも争わずに協力できるなんて思ってもみなかったんだよっ!」
「はいはい分かりました。モタモタしてると閃光魔法の効果が切れますよ~」
何だかいつもと逆の立場になってる気がするが、今はそれどころではない。
「わ、わかってるよ! 『金剛斬糸!』」
僕は慌てて糸を放つと視界を取り戻し始めたゴブリン達をまとめて倒し、残るはこちらの攻撃を索敵魔法か何かで察知して、土属性の盾魔法で防いだゴブリンウィザードのみとなった。
「他の上位種よりも攻防のバリエーションが多くて厄介だなぁ…」
バトルゴブリンやゴブリンチャンピオンなら金剛斬糸でアッサリ倒せるのに、各種の魔法を使えるウィザードはなかなかに手強い。
僕は白剣を構えて突進していくと、ウィザードは魔法を放って迎撃してくる。
『エル・ミラージュ!』
次々飛んでくる魔法を避けながら、僕は幻影魔法を使って的を絞らせないように撹乱しながら接近していくと、ルミアの癒しを受けて回復したフレアギャロップが並んで突進していく。
「そうだよね。アレだけ痛めつけられたんだから、お前もやり返したいよね……よし、一緒に行こう!」
僕はフレアギャロップの前を走りながら飛んでくる魔法を白剣で薙ぎ払うと、ウィザードは盾魔法で守りを固める。
「『ホーリー・レイ!』……いっけぇっ!」
僕はそれを熱線魔法で破壊すると、フレアギャロップが猛スピードで突進してウィザードを撥ね飛ばして洞窟の天井に叩きつけた。
「トドメだっ!『金剛斬糸!』」
落下してくるゴブリンウィザードに風の糸でトドメを刺すと、ようやく洞窟内のゴブリンは全て片付いた。
今まで語られていなかった、ジグの前世での趣味がチラッと垣間見えたお話でした。
実は過去にも魔石集めや巡回の旅で馬車に乗ったり、カンディバースに行く際にも馬に乗れて、結構楽しんでいたりしているジグです(笑)
予想以上に大量発生していたゴブリンでしたが、群れのボスも巣穴の中も綺麗に片付けて、討伐は無事成功しました。
次回は洞窟を出て村に戻ります。




