第191話 サスリブ村の討伐依頼 その2 大元と乱入者
イリトゥエルと別れて山道を進んでいると、ゴブリン達は僕の前進を阻むかのように立ちはだかってきた。
『エル・メニア・ウインド・カッター!』
次々と襲い来るゴブリンを蹴散らしていると、不意に背後で雷が迸る。
『ホーリー・レイ!』
『エル・エリア・ウインド・ハンマー!』
振り返るとそこにはハンマーを振り上げたまま、感電しているバトルゴブリンがいたので、僕は熱線を撃ち込んで頭部を吹き飛ばすと、その隙に四方八方から襲い掛かってきたゴブリンを吹き飛ばして糸でトドメを刺す。
「まったく、ウンザリするほどいるなぁ……」
そうして僕は独り言をつぶやきながら、再び山道を登って行く。
するとしばらくして木々が少なくなり、岩がゴロゴロと転がっている光景が目に入ってきた。
「ふぅ、どうやらここが山頂みたいだけど……」
到着した西サスリブ山の山頂にはゴブリン以外にも、数体の上位種が何かを守るように立っていた。
「あぁ~、これは良くないなぁ。チャンピオンやバトルゴブリンなんかの上位種がふんぞり返っているならまだしも、そいつらが守ろうとしてる何かがいるって事は、それ以上の上位種がいるって事じゃん…」
嫌な予感がすると思いながら、ゴブリンが何を守ろうとしているのか考えていると、こちらの姿を発見した上位種が一斉に動き始める。
「おっと、そんなに大勢で来られたら……」
突進してくるゴブリンの群れは僕に近づいた途端、先ほどのバトルゴブリンのように感電して動きを止める。
「……手間が省けて助かるよ。『金剛斬糸!』」
山頂にいたゴブリンを一掃した後、僕は回復薬を飲んでから付近を索敵魔法で探る。
すると岩だらけの中にポッカリと口を開けた、洞窟があるのを見つけた。
「うへぇ、これって東サスリブ山にもあったようなゴブリンの巣穴って事だよね。入りたくないなぁ……」
以前見たものほど大きくはないとは言え、ゴブリンの巣窟であると思われる洞窟を発見してしまったからには、その中にいるものも討伐しなくてはならない。
洞窟の入り口の前に立ち、過去の苦労した経験を思い出しながら顔をしかめていると、洞窟内にも広げた索敵魔法に反応があった。
「あれ? これって……」
索敵に集中すると洞窟の中には、どうやらゴブリン以外にも他のモンスターが何体かと、その上位種らしい大型のモンスターがいるようだった。
「いったい何だろう? モンスターについては訓練の合間に聞いてたけど、コレはさすがに分からないなぁ。
どの程度の強さかも分からないし、一旦退いて二人にも聞いてみた方が…」
僕がそんなことを考えていると、村の方角から青の狼煙が上がっているのが見えた。
どうやら村の方にいたゴブリンは片付いたらしい。山頂までのゴブリンは自分が倒したし、洞窟付近にももう残っていない。
なら後は洞窟内だけということになるから、それなら二人にもこちらに来てもらう方が良いだろうか…?
「いや、衛兵や村人には恐らく負傷者も出ているし、二人を呼んで手薄になったところを討ち漏らしが襲っても困るなぁ。
やっぱり僕1人で行くとしよう……」
「あらあら、迷ってるなら相談してくれても良いのですよ~?」
「うわあっ!? ……なんだルミアかぁ、驚かさないでよ……」
青の狼煙を確認した後は再び洞窟の内部に集中していたため、僕はルミアの接近に気付かず声をかけられて飛び上がった。
というか恐らくルミアは、驚かせようとしてわざとコッソリ近づいたと思う。何故なら驚いた僕を見て、とても満足そうな顔をしているからだ。
「こんな所に来て、イリトゥエルや村の方はどうしたのさ?」
「村へのゴブリンの侵入は阻止しましたよ。あの村の衛兵はなかなかに優秀なようですね~。
イリトゥエルさんは張り切りすぎて少しやり過ぎたので、今は破壊した村の壁や門を直すか、負傷者の治療をしているはずです~」
「ゴブリンに破壊されなかった代わりにイリトゥエルが壊したのかぁ……」
「まぁ仕方がないですよ。イリトゥエルさんのところはゴブリンが一番集中してましたし、多数の敵を相手に範囲魔法を使うなと言うのは、さすがに酷ってものです」
僕は頭を抱えて村長にどう謝れば良いかなと考えていると、ルミアがポンポンと肩を叩いてそう言う。
「まぁそれはそうだけどさ。で、村のことはイリトゥエルに任せたルミアさんは、ここに何しに来たのかな?」
「私も少し疲れたから休みたいなと思ったのですが、イリトゥエルさんは働いているしジグさんも戻ってこないのでは、流石に1人だけ休んでもいられなくて~。
それなら退屈しなさそうなこちらに来てみました☆」
ルミアはグッと親指を立ててウインクするが、ただ1人でサボるのは居心地が悪く、結果的に退屈しない僕の方に来ただけで、別に良いことは何も言ってないのでスルーする。
「まぁ来たんだったら手伝ってもらうけどさ、ルミアは索敵で洞窟内を探れる?」
「えぇ、もうやってますよ。っとこれは……もしかしてフレアギャロップもいるのですか?」
「フレアギャロップってあの上位種のこと?」
「そうです。この辺りで見かけるのは珍しいですが、魔力が高い割には気性も穏やかで人を襲うことはほとんど無く、言ってみれば火属性を持った馬みたいなモンスターですよ。
普通はゴブリンなんかと、それもこんな洞窟内で一緒にいるはずもないのですが…。
もしかすると足が速くて行動範囲が広いから、冒険者や他のモンスターに追われてこの辺りまで流れてきたところで、ゴブリンに子供が捕らえられてしまって取り返しに来たのかも知れませんね」
「へぇ、そんなモンスターもいるんだ。
ちょうど僕たちが到着してゴブリンは村に押し寄せてたから、手薄になったところで侵入したのかな?」
「タイミング的にはそうかもしれませんね~」
「でも入り口の近くには上位種が何体もいたのに、よくもまぁ入れたもんだね?」
「フレアギャロップは温厚なだけであって別に弱くは無いのですよ?
なんせ種類的には岳竜の遠い親戚にあたりますから、実力ならゴブリンの上位種が相手でも負けないはずなのです~。
ただ通常は争いを好まないから、機動力で突破した可能性が高いです。ジグさんが来たときには戦闘の痕跡はありましたか?」
「あぁ~、言われてみればたしかにゴブリンは無事だったし、その割には何かを守るように警戒してたかも。
あれはフレアギャロップが侵入した後に僕たちが現れたから、あんなに急いで村を襲ってきたり、逆に洞窟の入り口は上位種が守りを固めてたのか。
ならもう少し遅ければ、狭い洞窟内であの数を相手にしなくちゃならなかったのかぁ。
その点はフレアギャロップに感謝しなくちゃだね」
僕は洞窟内で雷糸を使い、バタバタと倒れるゴブリンたちと一緒に、自分も感電に巻き込まれる姿を想像してそう言う。
「それでジグさんはこれからどうするんですか?」
「ん~、とりあえず洞窟に入ってゴブリンを狩るよ。あとはその大人しいっていうフレアギャロップがどう出るかで、対応を変えようかな」
「わかりました。では私もお供しますね~」
こうして僕とルミアは、乱入者のいる洞窟の中へと進むことにした。
ゴブリンの巣を見つけたジグですが、どうやらそこにはゴブリン以外にもモンスターがいるみたいです。
サブタイトルの乱入者に関しては、ゴブリン的にはジグ達やフレアギャロップがそれにあたりますし、フレアギャロップにしてみれば逃げた先でゴブリンに襲われたうえ冒険者がきたり、ジグ達にしてみればゴブリンだけを倒しに来たのに他のモンスターどころか上位種がいて、何だかもうそれぞれが災難に見舞われています。
そんな中でひとまず村の防衛には成功し、イリトゥエルがやり過ぎた以外はほぼ無事でした。
次回は洞窟内でのお話の予定です。




