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転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第2部 海の国編 (初任務・火焔馬・海の民・ハイワーシズ)

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第182話 初任務 その14 金色の女騎士

 メラリオと別れた僕はソドリオを担いだラジクと共に、街に向かって森の中を進んでいる。

 すると前方に負傷した街の衛兵が、木に寄りかかっているのが見えた。


「こんな所で何をしている? もしや街で何かあったのか!?」


 前を進んでいたラジクが近寄って尋ねると、衛兵は口をパクパクさせて何か言ったが、声がかすれてよく聞こえない。


「ゆっくりでいいから教えてくれ」


「ラ、ラジク様…」


 ラジクはソドリオを下ろして衛兵の口元に耳を近づけると、衛兵はラジクの肩を掴み、死角からナイフを取り出してその背中に突き立てた。


「し、師匠!」


「ぐっ…! き、貴様…」


「噂通りの甘い男なのねぇ、ラジク?」


 先程まで衛兵の姿をしていたその人物は女性の声でそう言うと、黒い闇の魔力が体から剥がれていき立ち上がると、肩くらいまでの波うつ紫の髪に妖艶な赤い目をして、金色の竜を(かたど)った鎧を纏った騎士のような姿になった。


「そ、その鎧はドラグニアの竜騎士か…! ぬぅ、どうしてこんなところに…」


「そんなことはアンタの気にする事じゃないさ。さっさと死になっ!」


『因果応報の盾!』『キュアエル!』


 女騎士が腰の剣を抜くと同時に、僕は風の盾を張り回復魔法を唱える。


「おや、その坊やはまだそこまでの魔法を使えるのかい?」


「い、いかん……相手が竜騎士となると、たとえお前の盾魔法でも…!」


 女騎士が風の盾に向けて雷を纏った剣を振るうと、剣は弾かれたが同時に魔力をゴッソリと持っていかれた。


「へぇ、これはなかなか……」


「くっ……師匠は狼煙でも上げて、あとは黙って回復薬を飲んでおいてください!

『キュアエル!』『キュアエル!』『キュアエル!』」


 弾かれた雷剣を見てニヤリと笑う女騎士に嫌な予感を覚えた僕は、更に魔力を込めて盾を維持しながら、連続で回復魔法を唱えてラジクを治療する。


「す、すまん…」


 僕の剣幕(けんまく)にラジクは肩に刺さったナイフを抜いて、回復薬を飲み白2本の狼煙を上げる。


「仲間を呼ばれちゃ困るのよねぇ…」


 女騎士はその狼煙を魔力弾か何かですぐさま打ち消すと、先程よりも激しい雷を纏った剣を構える。


雷迅剣(らいじんけん)!』


 女騎士の剣が眩く光ると、刹那(せつな)の雷光と共に風の盾は切り裂かれ、いつの間にか背後に回り込んでいた女騎士がこちらを振り向くと、僕の体からは血が噴き出して視界がぐらりと傾く。


 まさか風の盾ごと、サラマンダーの鎧もろとも、あの剣で斬られた?


 すでにハイワーシズの首飾りが光っているが、これは間に合いそうにない。

 ボタボタと流れ落ちる血を見て僕はそう思うと、フラつく足をどうにか踏ん張って体を支えるが、それも長くは保ちそうにない。


 隣では剣を構えたラジクが女騎士に向かっていくが、先程の怪我もまだ治りきっていない今、あの雷剣を前にして勝ち目は無いだろう。


 ……ならば助けを呼ばなくては!


 僕は残り少ない魔力を使って回復の糸を傷口に集めて治療し、白2本の狼煙を上げると、今度はラジクの相手をしている女騎士はそれを消すことが出来ずに、無事に知らせることが出来た。


「あら、しぶとい子ねぇ……でもアタシは計画を邪魔されるのが嫌いなのよっ!」


 女騎士はそう言ってラジクに回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばすと、雷を纏いこちらに突っ込んでくる。


「ぐぅぅっ!」


 僕は痛みに耐えながら白剣を構えるが、握る手には力などほとんど入っていない。

 ギンッ!という音と共に白剣が弾かれると、目の前にいた女騎士は剣を振りかざして、トドメを刺さんとばかりに斬りかかってくる。


「うぉらぁっ!!」


「かはっ…!」


 僕は振り下ろされる剣になすすべ無く斬られそうになっていると、女騎士の背後から赤々とした炎が見えて、その直後に女騎士は僕の横を通り過ぎ吹っ飛んでいった。


「おいおい二人とも大丈夫かよ?

 それにしても何でこんな所でモタモタしてるのかと思ったが、お前らがこんなザマになるような相手なのか?」


「メ、メラリオ?……さっきぶりだね。

 師匠は不意討ちを受けちゃって、僕も盾魔法ごと斬られちゃった……はは…」


 そう言った僕は力が抜けたのか、膝から崩れ落ちる。


「笑い事じゃねぇだろそれ……んで、オッサンの方はどうよ?」


「戦えんこともないが、回復薬が効いてくるまではもう少し時間がかかるな…」


 メラリオはさきほど受け取っていた回復薬を僕に飲ませながら、こちらに戻ってきたラジクに尋ねる。

 それに答えたラジクだが強がっていても傷はかなり深いし、そうでなくとも街の防衛から今までずっと戦っていて、かなり消耗しているはずだ。


 それに女騎士の実力はかなり高いし、ここは逃げるべきだと思うけれど、先程の動きを見るに大人しく逃がしてくれるとは思えない。


「また若いのが出てきたわねぇ…。

 女性をいきなり蹴り飛ばすなんて、マナーがなってないのかしら?」


「ケッ! 騎士みてぇな格好をしてるくせに、オッサンを不意討ちした奴が言うセリフかよ?

 それに女らしく大切に扱ってほしいのなら、もう少し格好や行いに気を付けた方が良いんじゃねえか?

 少なくともテメェは俺の知る可愛げのある女とは、だいぶズレてると思うぜ」


「この……! 大人の魅力も分からないガキが言ってくれるわね!」


 女騎士はメラリオの言葉に怒りを(あら)わにすると雷を纏い、剣には闇属性を付与して向かってくる。


「ハッ! それだけ厚塗りの化粧で誤魔化しておいて、大人の魅力もクソもあるかよっ!『双爪炎斬(そうそうえんざん)!』」


 メラリオは炎を纏って両手に爪型の武器を装着すると、それで目の前をX字に引っ掻くように、思い切り振って同時に炎の刃を10本も飛ばす。


「このガキがぁっ! 『エル・ライトニング!』」


 ゴオォォッッ!と唸りを上げて襲い掛かる炎刃を、女騎士は鬼の形相(ぎょうそう)を浮かべて雷魔法で迎撃する。

 すると互いの魔法はその威力によって爆発を引き起こし、その爆風を突っ切ってメラリオが突進していく。


「俺がその塗装(とそう)()いでやるぜぇっ!」


 メラリオは回転しながら爪を振り下ろし、避けようとしていた女騎士を頭から切り裂いた。


「なっ!?」


 しかしそれはいつの間にか女騎士が作り出した分身体だったらしく、黒い霧となって霧散するとメラリオの周りには三人の女騎士が姿を現した。


「バカなヤツ! 後悔しながら死になさい!

『ダーク・レイン!』『ダーク・ハンド!』

『エル・メニア・ダーク・アロー!』」


「くそっ、こんなもん…!」


 三人は同時に闇属性魔法を放つとメラリオは回避しようとしたが、黒い雨に打たれて魔力を失い、動きの鈍ったところを追いすがってくる黒い手に絡め捕られ、身動きの取れなくなった体に幾つもの黒い闇属性の矢が刺さって、光属性を持たないメラリオはそれらをまともに受けて魔力を吸われ、程なくして魔力切れを起こし気を失ってしまった。


「メ、メラリオ…!」


「ジグ、お前は回復に専念しろ。

 そして俺が時間を稼いでいる間に、ソドリオを担いで街まで逃げろ」


 ラジクはメラリオにトドメを刺そうとしている女騎士に、風の刃を放って牽制しつつそう言う。


「こんな時まで捕虜(ほりょ)を連れて行けと!?」


「逆だ。ここまでしておきながら何の情報も得られない方が、任務としては失敗なんでな…。

 それにあの女は西の神竜帝国・ドラグニアの竜騎士だ。あんなものが関わっているのなら是が非でもソドリオから話を聞き出さねばならん。

 それに……せめて事の経緯を明らかにせねば、この地で払った犠牲が無駄になるだろう。

 なぁに、そいつが死なない限りはレストミリア殿が幻惑魔法でも薬でも、それこそ何でも使って秘密を暴くだろうから、そのためにもお前にはソドリオを連れて逃げてもらわねばならん」


「……わかりました。でも師匠、死なないでくださいよ?」


「バカ者め、俺は最近では『鉄人(てつじん)』などと呼ばれてるのだぞ?

 それに相手は黒骸王(こくがいおう)でも虐狼牙(ぎゃくろうが)でも百化(ひゃっか)でもないのだ。奴らと戦って生き残った俺には心配などいらん」


「……それもそうでしたね。ではまた後で…!」


「おおぉっ!」


 僕はラジクが女騎士に突進していくのと同時に、メラリオに飲まされた回復薬の効果を傷の治療と身体強化に注ぎ込んでソドリオを担ぐと、その場から一気に離脱した。


「早く…早くミリアさんに知らせなきゃ!」


 背後から聞こえる激しい戦闘の音に、不安を煽られながら僕は懸命に森を駆けていく。

やっと事が終わったと思ったところで、またもや新手です。

しかも今回は盗賊団よりも厄介な相手ですが、ひとまずは知るべき情報を手に入れるために行動することを優先させ、倒れたメラリオも負傷したラジクも残して一旦街へと逃げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出ましたねぇ、なんだかとても癖も実力も強そうなご婦人が。 どうやら護聖八騎と同等のようですので、ジグ君にはやはり厳しい様子。 そしてメラリオ君の話しぶりからするとそこそこにお年を召して………
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