表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生の糸使い [830万PV突破・400万字、900話以上の大ボリューム!]  作者: 青浦鋭二
第1部 教会の孤児編 (襲撃・修行・エルフの里・黒骸王・巡回の旅・王都攻防戦)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/952

第116話 閑話 凍華槍の帰還と見習いの訓練

補足したいことや今後の流れの中では描きにくい部分を、アドルピスカ視点の閑話として挟み、消化することにしました。

 …私はアドルピスカ。護聖八騎の一人で『凍華槍(とうかそう)』と呼ばれてる。主に武器は槍を使う。氷属性の魔法が得意。


 最近まではセントリングの南方、サスリブ山を越えた更に先にある、獣人連合国家・アニマナイトへの備えとして、国境付近で任務にあたっていた。


 交代の時期となって報告のためリッツソリスに戻ったら、アルテミアやアイゼンフォートが見習いや新人を連れて、なんだか面白そうなことをしていて私も参加したかったけど、団長への報告があったから我慢して、とりあえず戦うか迷ってたアルテミアを焚きつけ、ラジクとの戦いの様子を後から聞くことにした。


 報告や事務仕事は詰まらない…でも仕事だから仕方がない。一通り片付けると、団長からはしばらく休みを与えると言われた。

 休みと言われても、私にはどうしたら良いか分からない。訓練でもしながら過ごそうかなと考えていたら、疲れた様子のアルテミアと会った。


 ついでだからラジクの相手はどうだったのかと聞くと、相手は現在中級騎士とは言え、護聖八騎加入の打診を受けたこともあるので、かなり苦戦したらしい。


 一つ年下のアルテミアは見習いの頃から群を抜いて優秀で、中級騎士だった年の離れた姉ラファエラを目標に、努力を惜しまず鍛練に励んでいた。

 四人の小隊で偵察任務の最中に襲撃を受け、仲間の裏切りによって姉が亡くなったときには、妹のアルテミアやラファエラの恋人だったラジクも、しばらくの間は凄く落ち込んでいた。

 それでも二人は悲しみを乗り越え、バネにしてより一層の努力を重ね、国内でも屈指の実力を持つ騎士となった。


 昔は敵わなかったラジクとも、互角かそれ以上に戦えるようになったと喜ぶ彼女を見て、私は少し嬉しくなった。


 翌日、騎士団所属の鍛冶工房に武器や防具を整備に出した私が、騎士団本部や練兵場をぶらぶらと歩いてると、アイゼンフォートがやって来た。

 話を聞くと近いうちにサスリブ山周辺で、見習いや新人の訓練を行うらしい。


 私は休暇中だけどすることがないから、その訓練に同行したいと言うと、アイゼンフォートは凄く嬉しそうに礼を言って了承してくれた。

 ありがたく思った私はお返しのため団長に相談して、留守を預かると言っていたアイゼンフォートが暇をしないように、仕事を割り振ってもらえるように頼んでおいた。

 ラジクやアルテミアが留守にするから、その分アイゼンフォートが頑張るならと団長も喜んでいたので、我ながら良い考えだったと思う。



 二日後、私は予定通り出発する事になった、アルテミアたちに同行するため南門に向かった。

 早めに到着してアルテミアやレストミリアと待っていると、ラジクが彼の弟子らしい子供や、レストミリアの教えを受けている女の子を連れてきて紹介された。


 休みの間に様々な任務の報告書に目を通していて、その中でも黒骸王についてのものや、各地を回ったアルテミアの報告書は、なかなか珍しい内容だったのでよく覚えていた。


 まだ弱冠13歳という若さにも拘わらず目の前の少年は、2つの盗賊団の壊滅、ハイワーシズの第三王女誘拐の阻止、エルフの里の救援任務に参加、黒骸王戦での活躍、アルテミアの任務に同行した際の行動など、実力者達が同行しているとは言え、普通では考えられない働きをしてきたらしい。


 少年の隣で緊張している様子の赤髪のシスターも、若き俊英・知将として知られ、魔王軍との戦いで抜群の戦功をあげたアベル将軍と、リッツソリスの聖女として名高く、今なおセントリング史上最高の治癒術士として語られる、元治癒術士長のマリアとの間に生まれた娘で、成人してから…と言うよりここ最近になって訓練を始めたにも拘わらず、短期間の訓練によって異常な速度で成長し、治癒術士や一部の騎士の間では噂になっていると、報告書には書かれていた。


 見た目は普通の子達なのに、外見では分からないものだと思いながら簡単に挨拶を交わすと、私はアルテミアのところに合流する。

 人見知りはしない方だけど、会う前から色々な情報を知っていたせいか、本人たちから詳しい話を聞きたくなったり、手合わせを所望しそうになるのを我慢していたため、なんとなくムズムズしてきて居心地が悪かったのだ。


 その後は隊列を組んで目的地へと向かい、私は全体の真ん中辺りで周囲を警戒しながら歩いていた。すると少し前方に先ほどの少年が、小隊の仲間から少し離れたところを、一人で歩いているのに気がついた。

 どうしてそのようなことになっているのかと疑問に思い、近付いてみると他の三人は小声で何やら話し合っている。

「話しかけよう」とか「でも身分が…」とか言っているのを聞いて、仲良くなりたいが相手の正体が知れないので、警戒しているのだと理解した。


 報告書でも少年の出自については不明と書かれていたので、普通の孤児と知らない者達からは王族や貴族など、身分の高い何者かの隠し子とか、どこかの金持ちの御曹司と思われているという噂を耳にした。

 そしてその噂に伴い、少年を自分たちの都合のために利用しようと暗躍し、また色々と画策している者がいるということも私は知っていた。


 寂しそうに歩く少年がなんだか気の毒で、私は口下手ながら四人に話しかけ、打ち解けられるよう頑張ってみようかと考えていると、治癒術士長のレストミリアが一足先に、少年の元へと向かい何やら話を始めたので、私はタイミングを逃してしまった。


 知り合いの彼女と話すことで少し表情が明るくなり、また打ち解けられるようにとは思っても気の利いた言葉が思い浮かばなかった私は、歯痒い思いをしながらも見守る事しか出来ず、最初の目的地であるスウサの大草原に到着してしまった。



 草原での訓練はいくつかの小隊ごとにモンスターを討伐し、ある程度時間が経過したり体力や魔力、実力的な限界を感じたら交代することにして実施された。


 少年に関しては、スウサ周辺のモンスターはすでに討伐経験があるとのことで危険は無いと判断し、私はもう一人の赤髪のシスターの方を見守ることにして、本部を守るアルテミアや周辺警戒のために動き回っているラジクの代わりに、現場で訓練の監督役をしていた。


 私が赤髪のシスター…アマリアの小隊を見に行くと告げると、レストミリアが大変残念そうにして、出来れば代わって欲しいと頼まれた。

 しかし回復魔法を扱えない私が、現治癒術士長である彼女の代わりを務められるわけがないと却下すると、自腹で大量に買い込み持ち込んでいたらしい回復薬を根こそぎ渡してきて、

「皆にはこれを飲ませてくれれば良いから!」と駄々をこね始めたので、槍の穂先で軽く刺して正気を取り戻してもらった。


 …いや、もしかするとあまりの気迫に、こちらも力が入ってしまったかも知れないけど…。


 私は血の涙を流さんばかりのレストミリアの元を去り、訓練に出発したアマリアたちのところへ行くと、情報を見た限り戦闘は苦手で実戦経験も少ないと思っていたが、彼女は幻影魔法で味方を支援し盾魔法で守り、攻撃では魔力弾や、驚いたことに熱線魔法まで駆使して、仲間と協力しモンスターを次々と討ち取っていた。


 もちろん彼女は裏方で、他の仲間…特に前衛を務めたゲオリグ…?とか言う、下級騎士見習いの力が大きかったのも事実だけど、アマリアの働きなくしてあれほどスムーズに討伐が進んだとは思えなかった。


 これなら安心かと思っていると、トライホーンが二体向かってきて戦線が崩れかけた。

 今の彼らの実力でトライホーンを二体同時に相手するのは、さすがに厳しいと判断した私が救援に向かおうとすると、トライホーンのことを知っているらしいゲオリグが、他の三人に指示を出して自分が片方を抑えている間に、三人がもう一方を倒すという作戦をとり始めた。


 自分たちで考え危機を乗り越えるのも、それはそれで良い勉強になると判断し、私は見守ることにした。

 ゲオリグは近接戦が得意なだけあって、身体強化でトライホーンを撹乱し三人から引き離す。

 もう一方では一人の騎士見習いがトライホーンを引きつけ、治癒術士が彼に向かって支援と回復を集中させている間に、後方でアマリアが全身から魔力を集め集中している。


 騎士見習いも守りの堅いトライホーンの外皮を、支援魔法で強化された力を振るい、一点集中で攻撃して削り、破損させる。


「フレデリカさん、ラントラさん、こちらの準備はできました!

 …はぁぁっ!『ホーリー・レイ!』」


 合図を聞いた二人が飛び退くと、アマリアの手から放たれた熱線は見事にトライホーンの首元、ラントラと呼ばれた騎士見習いが、懸命に攻撃し破壊していた部分に直撃し、トライホーンを絶命させた。


「…驚いた。本当に短期間で熱線魔法をモノにしているのね…」


 外皮を剥がされているとは言え、トライホーンを一撃で倒したアマリアに私が驚いていると、ホッとひと息つく二人に「まだです!」と声をかけ、アマリアは一人でトライホーンを相手にしているゲオリグの元へと急ぐ。


 負傷して出血ながらも、必死で耐えていたゲオリグと合流し、一旦下がらせてフレデリカと呼ばれた治癒術士が、ありったけの魔力を込めて多重回復魔法をかける。


 その間にラントラがトライホーンを引きつけ、アマリアは幻影魔法や閃光魔法でそれを支援し、ゲオリグが復帰すると前衛の二人は、あちこちボロボロになりながらもしつこく攻撃し続け、再び魔力を溜めたアマリアの強烈な一撃で、どうにか撃破した。


 途中で何度か氷魔法を使い、ひそかにトライホーンの足を滑らせたり止めたのは、疲れ果てながらも強敵を倒し、喜びを分かち合う彼らには内緒だ。


 そうして草原での訓練が終わり、サスリブ山の麓に広がるサスリブの森を目指して、私たちが街道を南下していると、グレートホーンが群れを率いて襲ってきた。

 私は退屈していたので迎撃に出ようとしたけど、私以上に退屈していたアルテミアやラジクが真っ先に駆けだして、こっちの獲物も残してと言う間もなく殲滅してしまった。


 ……二人ともスッキリした顔をしててズルい。


 森に到着して、皆が野営の支度をしたり食事を摂っているあいだに、私はアルテミアと一緒に夜に備えて先に寝ることにした。


 ふと目が覚めると、どれくらい寝たかはわからなかったけれど周囲はまだ暗かった。そして見張りの雑談などとは違う、何か騒がしいような、違和感があるような雰囲気に嫌な予感がした。


 …何かがこちらを見ているような……それとも狙われている?


 同じく異変を感じて目覚めたらしいアルテミアと共に、索敵魔法を使って遠くまで周囲を探ると、森の外……特にサスリブ山方面から多数のゴブリンが接近しているのを感じた。


「…まだ少し距離がある。でも索敵魔法も使ってない普通の見張りじゃ気づけない」


「すぐに皆を起こして、戦闘準備を…」


「敵襲だ!皆起きて戦闘準備を!」


 私たちが支度をしながらそう話していると、黒髪の少年……ジグの叫ぶ声が聞こえた。


「…私たちですら今気づいたばかりなのに」


「そう言えば、あの子はエルフの指輪を持っていたわね。敵意のある者が近付くと指輪が光るらしいわ」


「…なにそれ凄く便利…私も欲しい」


「あの子のはエルフの姫からの贈り物だから、アドルピスカ殿が指輪を欲しいなら、エルフの殿方から求婚されないといけないわね」


「…うっ…それは難しい…」


「ふふふっ、まぁそれはさておき、今は敵を迎え撃ちましょう」


「うん。昼間のグレートホーンは譲ったから、今度は私が美味しいところをもらう…一番敵の多い南は任せて」


「わかったわ」


 飛び起きてきた皆に向かってアルテミアが指示を出すと、皆一斉に行動を開始した。

 私は迫り来る敵を迎撃するため暗い森の中を南へ進み、殺到するゴブリンたちを斬り、貫き、凍てつかせていく。


「雑魚ばかりじゃつまらない…『ブリザード』」


 吹雪を起こす範囲魔法で雑魚を一掃すると、ゴブリンの上位種と共に一人の魔族が現れた。


「まあ、もしかしてアナタ…護聖八騎かしら?」


 そう言うのは、うなじくらいまでのクセのあるワインレッドの髪、頭には細く短いながらも真っ直ぐで鋭い2本の角を生やし、背中にはコウモリのような羽を持つ女魔族だ。

 真っ白な肌には何やら紋様があって、手には短めの杖と小さな盾を持っている。


「名乗るつもりはない…敵は排除っ!」


 私は身体強化でゴブリンをかわし、一気に間合いを詰め槍を繰り出す。


「騎士のくせに名乗ることすらしないどころか、こんな不意打ちまでしてくるなんて…。アナタそれでも騎士なの?」


 私の槍を盾で受けながら、魔族はそんなことを言う…不快だ。


「夜襲をかけてきた奴らに言われる事じゃない…」


 盾を弾き更に攻撃を続けるが、近接戦が得意そうには見えない外見とは裏腹に、こちらの攻撃は全て受けきられた。


「まぁ良いわ…私はウクロネ。魔王軍四天王ルナメキラ様に仕えるしもべよ。アナタは姉のグレイジーナの仇ではないけれど、その仲間であることには変わりない。

 ここで死になさい!『エル・ダーク・アロー!』」


 ウクロネと名乗った魔族は羽ばたいて宙に浮かび上がると、空中に魔法陣を描いてそこから闇属性の矢を放ってきた。


『エル・アイス・シールド』


 私は氷の壁でそれを防ぐが、ウクロネは更にバトルゴブリンやゴブリンチャンピオンに指示を出し始めた。


「…これなら退屈しなさそう。ふふふ…思い切りやれる…」


 こちらに向かってきたバトルゴブリンの頭を兜ごと貫いて、私は残る敵へと突っ込んでいった。

一話で収まりませんでした…。なので次回もアドルピスカ視点で夜襲の模様を描きます。


この後の何話かを書き進めた後で、不足を補うために書いたのですが、割り込み投稿という機能を初めて使います。上手くいくといいなぁ…(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生
糸使い

魔法
魔族
魔王
男主人公
コメディ
冒険
シリアス
亜人種

人外
ハッピーエンド
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ