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迫る脅威3

 複数同時に別々の村で突然現れた偽勇者の大群

 どうにかして魔物を操る術があるうえに、どんどん強力になっていく十二勇士や改造人間、それにあの人を素体とした化け物

 未だに偽勇者は姿を見せないし、人間族はいたずらに兵を出陣させて疲弊しきってると思う

 今まで協力していた種族も段々と人間族から離れて行ってる

 今まさに人間族は孤軍奮闘の勢いで、戦える者は子供でも使ってくる始末

 もちろん子供の兵は殺さず捕らえて戦争終結まで捕虜として大事に扱うよう魔王様は言ってるけど、最近は自爆覚悟で向かってくる子供までいる

 魔王様はそれを悲し気に止めているけど、中には間に合わないことも…

 魔力を暴走させて爆発する子供達

 あんなに悲しそうな魔王様は見ていて胸が痛くなる

「さてアスティラよ。我はしばしこの国を離れて敵情を探ろうと思う」

「お一人でですか!?」

「いや、アルタイルとお前についてきてほしいのだ」

「私達が、ですか。はい! それはもちろん」

「うむ、真なる勇者がアルタイルだと分かればもしかしたら人間族も考えを改めなおしてくれるやもしれん」

「でもどうやって証明するのですか?」

「うむ、勇者には勇者にしか出来ぬことがある」

「勇者にしかできないことですか?」

「うむ、それは魔の浄化だ」

 魔王様のお話ではこの世界には魔物が生まれる魔溜まりというものがあって、勇者はそれを浄化できるらしいわ

 初めて聞いたけど、魔王様が国領内で見つけた魔力溜まりを見事浄化して見せたアルタイル

 その浄化がすごく様になってて惚れ直しちゃった

「うむ、やはりアルタイルは勇者で間違いない。利用するようで悪いのだが、頼めるか?」

「もちろんです魔王様、魔王様の目指す平和な世界実現のためですから」

「我が不甲斐ないばかりにお前たちには苦労を掛けるな」

「何をおっしゃるんですか魔王様! 魔王様ほど平和に尽力されている方など僕は存じません」

「そう言ってくれると我も気が晴れるというもの。出立は明日だ、各自準備をして明朝我の城に来てくれ」

「拝承致しました」

 

 翌朝、すっかり落ち着いて復興を始める街の中、私とアルタイルは魔王様の白へと向かった

 一般市民は全員大した怪我もなく無事だったけど、冒険者や兵士に被害が出て、その中にはやっぱり亡くなった人もいる

 アルタイルの家の戦闘メイドさんも数人犠牲に…

 戦争は奪うばかりで何も生まない

「アスティラ、大丈夫?」

「うん、犠牲になった人達のことを思うと」

「そうだね。僕も、悲しい…。エリーは小さいころから一緒に遊んでくれたし、マーナはいつも僕に新作のお菓子をふるまってくれた。コニスは花を育てるのが好きで、庭にたくさんの花を植えてたっけ。アスタは古株で母様とよくカードゲームをしてたな」

「四人供、素晴らしい人たちだったのね」

「死んだ人は戻ってこない。僕だってよく分かってたはずなのに、やっぱり失うと寂しいよ」

 道中は彼女たちに黙祷を捧げながら歩いて、城に入った

 アルタイルと私は公爵家の者だからもちろん顔パス

 城に入るとすぐに魔王様の部屋に案内されて、そこでは魔王様と妹で幹部のエイリアスさんが待っていた

「来たか、もう準備は…。できているようだな」

「マナちゃんも行くならもちろん私もついて行くよ。何やらやらかすか分かんないしね」

「はぁ、いつもこうなのだ。我が何かしようとするとエイリアスが目付としてついて来る」

「だってマナちゃん私が止めないとアホみたいな極大魔法連発して地形変えちゃうんだもん」

「なっ! あの時はまだ未熟だったからでもうそのようなことないわ!」

「またまたー、結構最近もやらかしてたじゃない。ほら、十年前のクラベル海戦のとき慌てたマナちゃんは」

「そそそそそれはいい! それは話すな!」

「えー、ここからが面白いのに」

「アルタイル! アスティラ! 今のは聞かなかったことに! それと詮索もしないでくれ!」

 顔を真っ赤に染めて魔王様は大慌てで私達にそう言った

 一体何があったのかしら…

 あとで調べて…。あ、お父様ならきっと何か知ってるわね

 クラベル海戦はたしかお父様も加わってたはずだし

 クラベル海戦と言うのはこの国の海域にある沖の方で超巨大なクラーケンを討伐したときの戦いの名前で、実はそのクラーケンは当時人間族に協力していた海人族が操ってたのよね

 激戦の末超巨大クラーケンを討伐して海人族を退けたけど、海の形が変わってしまったっていう…

 あ、もしかしてその海の形を変えたのって

 うん、もうなんか全部分かった気がする

「エイリアスさんも大変ですね」

「そうなのよ~、キレたマナちゃんを止められるのも私だけだし、まぁこればっかりはしょうがないっていうかね」

「こら! それではまるで我がバーサーカーのようではないか!」

「ほらね、自覚がないから困ったもんよ」

「ア、アハハハ…」

 憤慨する魔王様を尻目にエイリアスさんはここぞとばかりに不満をぶちまける

 魔王様は最後涙目になってほっぺを膨らましてた

 こういうところは見た目相応で可愛いわね

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