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旅の始まり13

 調査結果を受け取ってからまずはギルドに報告することにした

 こんな化け物、もしほかの場所で出現したら多数の被害者が出るに違いない

 それに私の予想が正しいなら、あの化け物は人を吸収して育つ

 たった二人吸収しただけでもあの強さだったんだから、もし大勢があの化け物に食われてしまったらそれこそ私達でも手に負えないかもしれない

 それはまさしく世界の危機…

 とにかく情報には気を配っておかないと

「報告ありがとうございます。ギルドの方でも情報共有して警戒しておきます」

 ギルドの受付さんはそう言って報酬をくれた

 それからすぐに別の依頼を受ける

 そうそう、今回の依頼達成で私達はランクが上がったみたい

 Cランクになれたわ

 あの化け物を倒したという功績が大きかったようね

 それからレベルも上がってる

 私が88で、アルタイルが92

 レベルのことは今あまり気にしなくていいと思うけど、そろそろ決まったジョブを取らないといけないのよね

 アルタイルは勇者固定みたいだけど、私の場合はいくつか選べる

 お母様と同じディーヴァもいいかも

 うーん、それはまあおいおい考えるとして、Cランクになれたことでさらに難しい依頼もこなせるようになったから、今回は遠く離れた魔族国最果てにいる神獣ラヴレンドラが守る、永遠の湧き水を汲みに行く依頼を受けたわ

 この依頼、神獣が絡んでくるだけあってBランク以上の冒険者しか受けれないんだけど、他のBランク以上のパーティと一緒なら受けれるのよね

 だから私はお姉ちゃんに頼み込んでついてきてもらった

 カルテアお姉ちゃんはSランクの冒険者証を持ってて、700超えと強いのよね

「アスティラ、僕を呼ぶとはそれだけ危険な依頼なんだね。でも大丈夫、可愛い妹の君は必ず守るから」

「カルテアさん、よろしくお願いします」

「ふん、アルタイルか。ちゃんとこの子を守ってるんだろうね?」

「それはもちろん、とは言い難いですね。僕の力がまだまだ足りていません」

「だったらもっと精進しろ。僕の可愛いアスティラを傷つけるようなことがあってみろ。僕がお前を殺すからな」

「はい、肝に銘じておきます」


 依頼を受けた私達三人は私の転移で一気に魔族国の端、辺境都市ヒュレトラーナへと飛んだ

 お姉ちゃんは何度かここに来たことがあるみたい

 この依頼の依頼人もこの都市に住む辺境伯で、毎年その永遠の湧き水を祭事に使うみたい

 ただその湧水を取りに行くのが大変

 神獣が守ってるだけあってその神獣に力を認めてもらわないと湧き水を汲めないのよね

 お姉ちゃんなら勝てると思うんだけど、お姉ちゃんにはついて来てもらっただけ

 神獣との戦いは私とアルタイルでやらなくちゃ強くなれないもの


 ここら一帯は砂漠地帯なんだけど、オアシスに都市が作られたから意外とにぎわってる

 ちなみに湧き水を使う祭事っていうのが、このオアシスが干からびなないためのもので、毎年行ってこの都市の末永い安寧を願って行われるもの

 この辺りは人間が放棄した後、大昔から魔族の土地だったんだけど、その頃から今までの長きにわたってずっと行われてきたのよね

 伝統的な行事に携われるんだから少し楽しみかも

 いやでも神獣の強さが計り知れないわね

「まぁあれはそこまで強くない。というか手加減してくれるはずだぞ。何せあれがオアシスの水を管理しているんだからな」

「そうなの?」

「ああ、神獣ラヴレンドラは水獣型の神獣で普段はかなり温厚で人懐っこい。しかしひとたび怒らせれば水による災害を引き起こして全てを流してしまうと言われている。かつて人間族が怒らせたときはこの辺り一帯が水没したらしい。その頃はまだ魔族はもっと過酷な環境に追いやられていたらしい。それが幸か不幸か魔族に長寿と過酷な環境に耐えうる体を与えたようだ」

「なるほど、さすがお姉ちゃん博識」

「ふふん、ガイア様の書庫を幼いころ読み漁っていたからな」

「あの、そろそろ街に入りませんか?」

「む、そうだな」

 ずっと街の前で話してたからすっかり街の中に入るのを忘れてた

 急いで入ってギルドに向かう

 街のことはお姉ちゃんが知ってるらしいからギルドの場所はすぐに分かった

 そこで依頼を受けたことを報告して、宿を取ってから現地に向かう

 街から約一キロほど東に向かった砂漠の中心辺り、そこに神獣ラヴレンドラの住む泉があった

 綺麗な真っ白な神殿の中央に泉があって、そこにはうねる何かが見えた

 私達が来たことに気づいたのか、水面に何かが顔を出す

「か、か、か…」

「どうしたアスティラ」

「可愛い! 何なのあの可愛い子!」

 水面から顔を出したのは目がクリッとした一角の猫のような水獣で、ミューミューと鳴いている

「この子が、神獣ラヴレンドラですか?」

「恐らくそうだと思うが、可愛いな、すごく」

「ほんとに。もしかしてまだ子供で、この子の両親がいるんじゃ」

「うーん、そんな気配は感じないけど」

 まわりを探知のスキルで調べてみたけど、この可愛い子以外に何の気配もなかった

 私は水面に近づいてその子を抱っこしてみる

 水が少し冷たいけど、その子は私のほっぺをペロペロと嘗めてキューンと鳴いた

 可愛すぎてメロメロになったんだけど、その子に一応聞いてみた

「この泉の水、少し汲んで行ってもいい?」

「キュン!」

「これは、オッケーってことかな?」

「みたいですね」

「しかし試練は?」

「キューキュ、キュキュン」

「え、いいの? でも試練は?」

「キュキュキュ、キュン」

「え、そうなんですか? ありがとうございます!」

「アスティラ、この子の言ってる子と分かるのか?」

「ええ、十分実力があるから持って行っていいよって言ってます」

「何でわかるんだ?」

 私には言語理解というスキルがある

 赤ん坊の頃から両親の言葉が分かったのもそのおかげ

「なるほど、レベルが上がったからそのスキルを取ったわけか。平和を望むお前らしい選択だな」

 本当は全スキルを取ってるけど、そんなこと言ったら混乱しちゃうし転生したっていうことも話さなくちゃいけないもの

 そうなれば、気味悪がられて、もしかしたらみんな離れて行っちゃうかもしれない

 それが怖い

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