第32話 海の主
新しいヒロイン登場は第34話からとなります。
それまでは真面目話にお付き合いください。
〜120日目〜
海の主出没情報が多い場所に来た。
「本当にできるんですか?」
「今の俺ならできると思う」
目的は海の主から直接話を伺うこと。
いつの間にか覚えてたいたスキル言語があれば可能なはずだ。
そのためにはまず海の主をおびき出さないといけない。
俺とカブリラは船に乗り込 ⋯⋯ え、1人で乗れって?
危なそうだからここでお留守番しとくと。
へいへい、わかりました。
1人で船に乗り、オールで漕ぎ出す。
波の揺れで視覚から、船に揺れから直接的に揺れて、すぐに気持ち悪くなってきた。
船酔いに耐えながらも目撃情報地点までなんとか船を漕いだ。
気持ち悪さと戦うこと数分。
何の前触れもなくクズリさんが言っていた不自然な渦が発生。
くるか!
「創生魔法『フライ』」
空に浮くと同時、船が転覆。
海中から巨大なクラゲが姿を見せた。
すかさず話しかけてみる。
「俺の言葉が通じるなら聞きたいことがある!」
「 ⋯⋯ 」
返答はなし。
通じないか?
いや、
「 ⋯⋯ ナゼ、 ニンゲン、コトバ?」
言葉が通じることに戸惑っていただけだった。
「そういうスキルを持ってるんだ。それよりも聞きたいことがある。どうして人間を襲うんだ?」
「コドモ、イナイ」
「子供がいなくなった?」
「ヒメ、アソブ。イナイ」
ヒメ?
姫か!
「もしかして魚人族の姫と一緒にいたのか?」
「イッショ。キエタ」
魚人狩りをしている人間に姫が捕まって、そのさいに一緒に連れていかれたということか。
「ニンゲン、ツカマエタ。アシ、キッテ、ミゲタ。モウ、コナイ」
「姫をさらった人間を捕まえたけど、足を切って逃げていった。それからそいつは海に出てこなくなった。ってことか?」
足をなくした人間は知っている。
クズリ。
名前と同じクズだ。
「コドモ、ヒメ、シンパイ」
「事情はわかった。俺がなんとかするから、それまでは暴れずに待っていてくれ」
「シンヨウ、ナイ」
「だよな。けど、信じてもらうしかない」
「 ⋯⋯ ニンゲン、タスケル、ナゼ?」
「子供がいなくなる気持ち、よくわかるからだよ」
あそこのバカな奴のせいでな。
「人間とモンスターの垣根は外して、1人の親としてお前を助けたい。それじゃダメかな?」
右手を伸ばした。
「ナン、ダ?」
「俺を信じて待ってくれるなら、この手を握ってくれ」
「ドク」
「お前の毒なんか俺には効かない」
「 ⋯⋯ ワカタ」
触手の一本が俺の右手に巻き付いた。
「トウカ、マツ」
「十分だ」
海の主と別れ、その足でクズの家に乗り込む。
今度はノックも挨拶もなしだ。
扉を蹴破り、奴が寝ているベッドに飛び乗った。
「な、なんだなんだ!?」
「答えろ」
胸倉を掴みあげ、
「魚人族の姫をどこにやった?」
「お前、昨日の! いきなりなにし
「創生魔法『ポイズン』」
「がぁ!」
思いつきでやってみたけどうまくできたみたいだ。
「弱いけど毒を流し込んだ。死にたくなかったら素直に白状しろ」
「ひ、ひらねえ」
「しらばっくれるともっと苦しい目にあうぞ」
「捕りすぎてどいつのことかわかんねえんだよ! それに俺じゃねえかもよ? 街の住人なら誰もがやってることだ。そもそも町長が買い取るからどんどん釣ってこいって言い出したんだ! 全部あいつが悪いんだ!」
「そうか」
乱暴にクズを離し、一応解毒しとく。
家の外に出てから。
「 ⋯⋯ カブリラ。首謀者はやっぱり町長だったけど、町ぐるみで行われてたっぽい。こんな最低な街潰してしまいたいんだけど、どう思う?」
「潰すとか物騒なことを言わないでください。人口300名にも満たない小さな町ですから、生活するために嫌々してた人もいると思いますよ。ここはあたしに任せてください。人の嫌がることをするのは得意ですから」
「そうだったな。頼む」
「それではそこらへんに飛んでるワイバーンをたくさん使役してください。できるならドラゴンも1匹ぐらいほしいところですけど、今から山に行く時間はないですし」
「ドラゴンに変化はできるぞ」
試しにやってみる。
イメージは最初に使役したでっかいドラゴン。
スキル龍変化!
「──どうだ?」
「 ⋯⋯ 隼人さんってもはやなんでもありって感じですね」
どうやらイメージ通りに変化できたようだ。
元に戻る。
「あとはここに連れてきた人間を使います。代表者を宿屋に呼ぶので隼人さんはこう説明してください」
かくして。
日が変わると同時にカブリラ立案の計画が実行されることになった。
〜121日目〜
「ドラゴンだ!」
街の中に響く悲鳴。
逃げ惑う人々。
その全てが全員竜人族から連れてきた人間だ。
彼らの役割はドラゴン来襲を伝えることと恐怖を伝染させること。
そして、町長の家方向に誘導することの3つだ。
「ドラゴンが出たぞ!」
空を駆るはドラゴンに変化した俺とワイバーンの群れ。
吠えてみる。
効果覿面。
街の住人たちがようやく事態に気づき、着の身着のまま這い出してきた。
「こっちはダメだ!」
「あっちだ。あっちの方に逃げるんだ」
「早くしろ!」
「ドラゴンに喰われてもいいのか!」
「そっちじゃない! こっちに来るんだ」
演技をしている人間につられて街の住民たちが町長の家がある方向に移動していく。
地上でカブリラが合図を送ってきた。
住人のほぼ全員が町長の家付近に集まったことを意味する。
ゆっくりと地面に降りていく。
住人たちの顔が恐怖に歪んでいた。
カブリラの台本通りにセリフを述べる。
「我は龍王」
できるだけ低く、威厳ある声を出すように。
「魚人族の頼みによりここへ来た。意味はわかるな?」
ざわざわざわざわ。
住人たちがどよめき、自然と町長へと視線が集まっていった。
「町長だ!」
誰かが叫んだ。
「あの男がやろうって言い出したんだ!」
皮切りに次々と町長を批難する声があがる。
そのうちに男たちが町長を捕まえ、ドラゴンに化けた俺の前に突き出してきた。
「こいつが悪いんだ。こいつを好きなようにすればいい!」
「そうだそうだ!」
⋯⋯ 町長も町長なら住人も住人だ。
こんな街、やっぱり潰してやろうか。
顔に出ていたのだろうか?
住人たちに見えないところでカブリラに蹴られた。
わかってるよ。
お前の計画は壊さないさ。
「ならば貴様に問う。魚人族の姫をどこにやった?」
「ど、どいつのことを言ってるのかわかりませんけど、捕れたら商会に出荷することになってます」
人を出荷する。
言い方が気に入らないが今は我慢だ。
「なんという商会だ?」
「ミツトモ商会の参の国支部です」
ワインを独占してる商会だ。
人身売買にも手を染めていたのか!
「我は参の国に向かう」
町長含め住人たちが安堵の表情をするが、許されるとでも思っているんだろうか?
「我が代行者カブリラよ」
「ここに」
「こやつらの沙汰は貴様に託す。なにをしようとも構わんが殺すことだけは許さん」
「かしこまりました」
「よく聞け人間ども! これより先、魚人族をさらおうとする者がいれば、次こそ命がないと思え!」
言って俺は空をに去っていった。
あとはカブリラに任せておけば大丈夫だろう。
〜122日目〜
カブリラが町長と住人たちに課した罰は新たな町を作ることだった。
簡単に言えば、追放。
この町は竜人族から連れてきた人間たちに明け渡して、お前たちは違うところで暮らせってことだ。
龍王(俺)が後ろに控えているため、誰もカブリラに逆らえず先住民たちはしぶしぶと出ていった。
これでヴァサエアさんに託されたお願いがクリアできた。
「まだですよ。このままだと仕事がありません。なにか見つけてあげないと」
「それもそうか。漁業でもいいけど、ここから追い出した住民たちもするだろうしな」
なんかないかな、と試しに360度一周回ってみた。
海があるけど無理。
平地はまずは開拓しないと。
すぐに農作業には取りかかれない。
残りは山か。
「山、か!」
閃いた。
隼丸に呼びかける。
『いい感じに寝てたのに。なんでえ相棒?』
マニエルと魔力交信したいんだけど繋げられるか?
『相棒の創生魔法で発生する魔力をマニエル嬢に届ければいいんだよな? 俺様ならできると思うぜ』
なんて頼りになる相棒だ!
「創生魔法 ⋯⋯ なんてつけよう? 交信だから『テレフォン』」
『相棒から魔力が出てきたから、これをマニエル嬢にぶち込めばいいわけだろ。ほぐしてないから痛いかもな、かっかかか』
下ネタはいいから早く。
『へいへい──お、見つけた』
もう!?
『俺様だからな。マニエル嬢も受け入れる準備できたみたいだ。さ、1つになるぜ。』
なんか卑猥なんだよな、こいつ。
ま、今はマニエルと話すほうが大事だ。
「マニエル、聞こえるか?」
『隼人くん! 聞こえてるよ。まだ帰ってこれないの? みんな首を長くして待ってるんだけど」
「俺も早く帰りたいよ。そっちはかわりないか?」
『桜雪ちゃんとさくらちゃんが隼人くんを連れ戻してくるって出ていっちゃったぐらいかな』
どうりでさくらのレベルの上がり方が半端ないわけか。
『それで用件は?』
「壱の国のはずれ。参の国の国境橋がかかってる付近にベズエラっていう町があるんだけど、ここに大工仕事ができる獣人2、3人とイーグルを呼んでほしい」
『いいけど、なんで?』
「獣人には大工仕事を。イーグルには採掘を住民に教えてもらいたいんだ」
山には木もあれば鉱脈もあるはず。
これでイーグルも心置き無く掘りまくれるし、住民たちも仕事にありつけるはず。
『なるほどね。じゃ、鉱石を加工できる獣人も一緒させるね』
「それは助かるよ。俺は今から参の国に行かなくちゃならないんでよろしく頼む」
『気をつけてね。行ってらっしゃい』
通信が切れた。
あー、早く家に帰りたい。
さっさと魚人族問題を解決して、今度こそ帰るぞ!




