第30話 新たな街
ブックマーク50件達成!
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〜111日目〜
山のふもとにある町「ベズエラ」。
壱の国のはずれにあるため、国境橋を渡って参の国と交流するほうが多い町らしい。
ここで大事なのは、ベズエラが参の国の近くにあるということ。
それはつまり俺が帰りたい陸の国のちょうど裏側に位置しているという意味だ。
すぐに帰れないじゃん!
問題はそれだけじゃない。
竜人族から連れてきた100名余りの人間を移住させたいとの申し出も拒否られた。
小さな町なので住ます土地もないし、余ってる仕事もないから、と言われた。
元々漁業が盛んな町だったらしいが、最近は海の主を怒らせてしまったせいで不漁が続いているらしい。
んー、これはもしやクフラの神様が仕組んだフラグですか?
竜人族の問題解決→海の主退治? →その他諸々の問題を解決しながら国へ帰る。
そんな予想が脳裏をよぎる。
冗談じゃない。
こっちはやる気まったくなしだ。
正直なところ人間たちを町まで連れてきたところで、ヴァサエアさんから託された俺の役目は終わっている。
このまま静かにフェードアウトさせてもらおう。
そう思ったのに──
「あなた方はとても幸運ですわ! なぜならここに魔龍ガーズドルドを倒した勇者がいらっしゃるんだもの!」
カブリラの馬鹿たれが口走りやがった。
全員の注目が集まる。
羨望の目で見るんじゃない。
俺はやらんぞ。
「お願いいたします勇者様」
どんなに頭を下げられてもやらないものはやらない!
第一に勇者は俺じゃなくて桜雪の役目だ。
「もしも海の主を倒していただけた場合は、みなさんの移住を許可するだけではなく、当面の生活まで面倒みさせてもらいます」
移住するのは俺以外なんで関係ありません。
「お任せください」
って、カブリラまたお前か!
勝手に答えるんじゃない!
「おおおお! ありがとうございます!」
いや、やらないから。
「これで寝たきりの親父に薬を買ってやれる」
や、やらないから。
「うちの子に栄養あるものを食べさせてあげれるのね」
⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯
「餓死しなくてすみます」
⋯⋯ ⋯⋯ ⋯⋯
⋯⋯ ⋯⋯
⋯⋯ わかった。
わかりました!
やりますやればいいんですよね!
とほほほほ。
〜112日目〜
朝から情報集め。
夜にはあてがわれた宿屋の部屋に戻り、得た情報をまとめてみた。
わかったことは。
海の主は大きなクラゲ型モンスター。
何本も伸びる触手には強力な毒が備わっており、感染するとたちまち命を落とすことに。
スキル異常無効を持つ俺には関係ないんだけど。
それよりも厄介なことは棲息地が海の中ってこと。
地球なら酸素ボンベがあるけどこっちにはないんで、自然的に素潜り状態で海の主と戦えってことになる。
呼吸を止めてられる時間は5分にも満たないし、海の中では刀も振りにくいだろうし。
いくら隼丸が協力してくれても
『錆びるから今回はやんねーぞ』
頼む前に拒否られた。
メインは魔法になりそうだ。
正直、自信がない。
せめて陸に上がってくれれば話は別なんだけど。
「なら釣るのはどうでしょうか?」
提案者はカブリラ。
「そんなでかいのどうやって釣り上げるんだよ? ていうか、お前なに勝手に引き受けてるんだよ! おかげで帰るのがまた遅くなったじゃないか!」
「ちっちっち。隼人さんはのちにあたしに感謝するはずです」
「なんで俺がお前に感謝しなくちゃならないわけ?」
「あたし、ミゾルトの一件でわかったんです。人を陥れようとするから自分も痛い目にあうんだって。だったら逆にすればいいことが起きるに違いないと!」
「なら自分でやれよ!」
「嫌ですよ、そんな危ないこと。あたしはあくまでも自分に危害が及ばない安全地帯にいながら恩恵を受けるんです」
言ってテーブルの上に置かれてあった果物を1つ摘んだ。
「あ、美味し。隼人さんも1つ食べますか?」
「その果物どうしたんだ?」
「ベズエラの住人に用意させたんですよ。隼人さんが甘くて美味しい果物を欲してると言ったらすぐ用意してくれましたよ」
「人の名前を勝手に使うな!」
こいつ最悪な奴だ。
性格が腐り切ってる。
「そもそも、なんで俺とお前が同じ部屋なんだ!?」
「そんなのあたしが隼人さんの助手だからに決まってますよ」
「いやいや初耳だから! 勝手に決めないでくれる?」
「こう見えて、あたし仕事はきちんとするんですよ」
トラブルメーカーとしか思えない。
「あ、なんですか、その目は? さてはあたしのナイスバディを見て欲情しましたか?」
『スキルを選択してください』
お、そろそろ最初の4つが孵る頃合いか。
どれにしようかな?
「気持ちはわかりますけどね。ちょっと見てみますか? 寄せてあげましょうか?」
よく考えると30人に渡せるほどスキル持ってなかった。
できるだけ公平にいきたいし、今回はみんなスキルなしにしとくか。
「反応なし? もしや胸派じゃなくて尻派でしたか? しょうがないですね。大サービスでめくってもいいんですよ」
名前はどうしよう。
一人一人考えるのはさすがにきついよな。
それぞれの母親に決めてもらうのが1番なんだけど、みんな俺につけてほしいって言ってたし。
「おーい、聞いてますか? そちらは起きてませんかー?」
申し訳ないけど、生まれた順に一竜、二竜、三竜とつけていってもらうか。
「 ⋯⋯ 起きてませんね。もしかして中身にしか興味がないとか? まさか脱げと言うことで
「さっきからうるさーい!」
よく喋る奴だな。
「少しは黙ってられないのか?」
「 ⋯⋯ 」
「ん?」
「はい! 少し黙りました」
「 ⋯⋯ お前、俺をバカにしてるだろ」
「いやーん、怒っちゃいました? すみませーん。外で頭を冷やしてきます!」
風のように部屋を飛び出していった。
ったく。
竜人の村にいたときはもっと陰険で嫌な奴のイメージだったのに、今はどっちかというと明るくて能天気バカって感じだな。
どっちが本当のカブリラなんだろうか?
ま、どっちでもいいけど。
〜113日目〜
今日も朝から海の主対策に頭を悩ませていた。
途中で12個の卵分のスキル選択画面が出てきた。
昨日と同じくスキルなしにするんでみんなキャンセル。
それが終わってからは再び海の主対策に集中した。
〜114日目〜
目が覚めるとスキル画面が出ていた。
寝るのが遅かったため、画面が出ても気付かず熟睡してたらしい。
8回キャンセルしてから、今日はもう一度情報収集に出かけた。
〜115日目〜
海を眺める。
海の主が怒っているとは思えないほど穏やかだ。
試しに舟を出してみようかな。
木で出来た手漕ぎ小舟に乗り込む。
ここで一大事。
俺は究極的に船酔いすることが判明。
異常無効で防げないのかよ!
こら、カブリラ!
揺すって遊ぶんじゃない。
酔うだろうが。
気持ち悪い。
⋯⋯ 小舟に乗って数分。
吐きすぎてグロッキーになってしまった。
そんな状態でも見張り3人娘の子供たち分のスキル選択画面は待ってくれない。
3回キャンセルを押してから力尽きた。
〜116日目〜
どうしてもいい方法が見つからない。
途方にくれていると、町長さんが有力な情報をくれた。
ベズエラの近所に魚人族の小さな集落があり、もしも力を借りれれば酸素と船酔いに関してはどうにかなるかもしれないらしい。
さっそく明日訪ねてみることにした。
カブリラはどこだ?
明日の準備をさせようと思ったのに。
宿屋中をくまなく探し、ようやく見つけたのは屋根の上。
普段からは想像できない三角座りして顔を膝に埋めている姿があった。
そういやあいつ、竜人の村を出てから俺以外と喋ってるところ見たことないな。
声をかけにくい雰囲気だったので、見なかったことにして部屋に戻った。
ラスト3個分のキャンセルを選択してから、カブリラが部屋に戻ってくる前に眠りについた。




