第25話 子竜
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〜94日目〜
朝からミゾルトのところに顔を出した。
卵が手のひらサイズからボーリングの玉ほどに成長していてびっくり。
「順調ですよ。このまま何事もなく育ってほしいです」
ただ、とミゾルトは顔を伏せ、
「最近外に出ていないためか嫌がらせが家の方にもあって ⋯⋯ この子になにもなければいいんですけど」
「あいつらか」
5人組の少女を思い出す。
さりげなくイルさんに言っておくか。
そう思ったとき、ガシャンという音とともに大きめの石が投げ込まれてきた。
「危ない!」
卵に当たりそうになるのをミゾルトを身を呈して庇う。
額をかすり血が出ていた。
こんなことをするのは誰だ!?
外に飛び出ると、さっき思い出していた5人の少女が走り去っていく姿があった。
またあいつらか。
とりあえず家に戻り、
「大丈夫か。魔力操作のレベルが低いんで簡単な血止めぐらいにしかならないけど創生魔法『治癒』」
「暖かいです。ありがとうございます。それで石を投げたのは ⋯⋯ 」
「あの5人だと思う」
「やっぱりそうなんですね」
「あいつらに嫌がらせをされる心当たりってあるのか?」
「この足のせいですよ」
ミゾルトは語った。
自分の足は生まれつき悪かった。
それを村人たちは魔龍の呪いだと言った。
いつしか村に男の子が生まれなくなったのも、呪いを受けたミゾルトのせいだと言い始めた。
ヴァサエアは庇ってくれたが、心ない大人たちは呪い子だと言い張った。
5人の少女はそれを知り、ミゾルトを村から追い出そうとしているらしい。
「両親は?」
「父は早くに。母は100年ほど前に亡くなりました」
「そうだったのか」
って、100年前!?
「あの、ミゾルトさん。あなたいま何歳ですか?」
「きちんと数えていませんけど、多分200歳ほどかと」
めっちゃ年上女房だった!
〜95日目〜
ミゾルトに対する嫌がらせをイルさんに相談すると、すぐに5人組の少女に注意しに行ってくれた。
これでなくなるといいんだけど ⋯⋯
「ところで隼人。その、なんだ。ミゾルトとは仲がいいのか?」
「気になります?」
「そそそそんなことは ⋯⋯ あるかもしれん」
お、素直に認めたぞ。
「私はほら、ミゾルトのようにかわいくない。兵として日夜鍛えているせいか女特有の柔らかさもなくなっている。やはり男はミゾルトのような子が好みなんだろう」
「イルさんも十分にかわいいですよ」
「かかかかわいい!?」
そういう反応が特にね。
「だ、だが、その割には手を出してこないではないか」
「え、だって、覚悟が決まったらって」
「 ⋯⋯ もう決まっている」
「イルさん」
「さん付けはやめてくれ。あとは敬語もだ」
「わかった。俺の家に行こうか?」
「私の家がいい」
そこから先はご想像にお任せします。
ちなみに卵は2つ生まれました。
〜96日目〜
ヴァサエアさんに報告。
卵が生まれたことをたいそう喜んでくれた。
今回は忘れずにミゾルトとのことも話す。
「そうかい! もう2人に手を出すとは、異世界人はやることが早いね。この調子で他の子とも作るかい?」
「それはちょっと。あの2人以外には嫌われてるみたいだし」
ナンパしたときのこと思い出すと凹む。
「あんた、一般人に声をかけたろ。イルパーシブルみたいな兵士を口説いてみな。1人でワイバーンを倒したあんたに憧れる奴は多いから、ほいほいついてくるはずだよ」
『入れ食い状態じゃねえか!』
黙れ、隼丸!
『いいじゃねえか、相棒。ハーレム最高』
こういう会話のときだけイキイキして参加してくるよな。
『かっかかか。そういう刀だからな俺様は。けどま、今回は事情が違う』
どうした?
『微力ながら魔力交信を感じた。魔力の波動からしてマニエル嬢だ』
なんだって!?
『繋ぐか?』
ちょっと待ってくれ。
「すみません。用を思い出したんで今日はこの辺で」
ヴァサエアの家を飛び出し、隼丸に魔力交信というものを繋げてもらう。
『 ⋯⋯ し。もしもーし』
この声、間違いなくマニエルだ。
『隼人くん? よかった、ようやく繋がったわ。クフラ様から事情は聞いたけど、いきなりだったからみんな心配したわよ』
申し訳ない。
みんな変わりないか?
『こっちは大丈夫よ。睦月ちゃんもラミーちゃんも元気な男の子を産んだわ。それでね、名前をつけてほしいの』
睦月のほうは前から決めてある。
卯月だ。
ラミーは ⋯⋯ 白虎みたいに白い子か?
『ううん、トトラさんに似た子よ』
だったら黄虎だ。
『わかったわ。2人にきちんと伝えておくから。それから結婚式は延期にしといわ。中止じゃなくてよかったわよね?』
もちろん!
みんなに謝っておいてほしい。
『今回は仕方ないわよ。帰ってきたら盛大に行いま
急に通信が切れた。
どうしたんだ?
『すまね相棒。マニエル嬢の魔力を見失ってしまった』
元々微力って言ってたもんな。
声が聞けて嬉しかったよ。
ありがとう隼丸。
『よせやい』
照れたのか隼丸はもう喋らなかった。
しかし、黄虎はおじいちゃん似か。
卯月はお姉ちゃんお兄ちゃんと一緒できっと睦月似だろうな。
早く会いたいや。
〜97日目〜
早朝からイルに呼ばれて卵の様子をみていた。
イルが言うには向かって右の卵の様子がおかしいらしい。
残念ながら俺にはまったく同じようにしか見えないんだけど ⋯⋯ というか、胎動じゃないかこれは?
「気休め程度だけど。創生魔法『治癒』」
右の卵に回復魔法をかける。
「ありがとう、隼人。この子も喜んでる」
「そっか、なら良かったよ。でも、これは多分元気に育ってる証拠だから気にしなくていいと思うよ」
「そうなのか? それは朝早くから呼び出してすまなかったな。今日はこの子たちと一緒に過ごそうと思うんだが、隼人も一緒にどうだろうか?」
「お誘いは嬉しいけど、今から行くところがあるんだ」
実はイルの家に来る前にスキル選択画面が出た。
ミゾルトが産んだ卵がそろそろ孵るはずだ。
「それは残念だ」
「ごめんな」
謝ってからミゾルトの家に向かった。
「こんな朝早くからどうされたんですか、隼人様?」
「なんか生まれそうな予感がしたから」
「今日ですか?」
「うん、今日。それももうすぐだと思う」
ミゾルトの横に座り、彼女の手を取る。
「あれからまだ嫌がらせとかあったのか?」
「 ⋯⋯ 」
無言の答え。
つまりあったんだな。
イルに注意してもらっても無理だったか。
なにか違う方法を考えないと。
「あ」
ミゾルトが卵を指差す。
そこに目を向けるとかすかなヒビが。
「あっちにも!」
「こっちもだ」
中から押し出ようとしているのか、ところどころにヒビが入っていく。
そして──
殻の一部が崩れ落ち、
んぎゃ、ぎゃあー
赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
「隼人様、赤ちゃんを!」
「任せろ」
空いた穴からそっと赤ちゃんを抱き上げる。
卵はこんなにも大きいのに、赤ちゃんは普通サイズだ。
「ミゾルト、きみの赤ちゃんだよ」
赤ちゃんを手渡す。
「私の、赤ちゃ ⋯⋯ 」
喜び一転、ミゾルトの表情が驚愕に変わった。
どうしたんだ?
赤ちゃんになにかあったのか!?
「男の子です」
そういうことか。
「ああ、ミゾルトが欲しがってた元気な男の子だな。竜の顔をしてるからどっちに似てるとかはないけど」
「 ⋯⋯ 信じられません。ここ数百年、男の子は生まれてこな、こなかっヒック」
ミゾルトの目から溢れんばかりの涙が溢れ出した。
「な、のに呪わ、れたスン。私なんかの元に男の子が来てくれるだなんて ⋯⋯ 」
「そろそろ泣き止んで。赤ちゃんもお母さんの笑顔を望んでるよ」
「そう、ですよね!」
ミゾルトに笑顔が戻った。
「隼人様。この子に名前をつけてもらえませんか?」
「考えてた名前があるんだ。竜の子だから子竜はどうかな?」
「子竜。単純過ぎかと思いますけどいい名前ですね。これからきみは子竜くんだよ〜」
ミゾルトの腕の中で、子竜がきゃっきゃっと笑った。
元気に育てよ。
俺の新しい赤ちゃん!
夕方頃にステータス部分を更新します!
よかったらそちらも目を通してください。




