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私をそっちのけで今後の話進める三人に少し寂しくなる。
私だって当事者なのに……
拗ねていると膝に置いていた手が温もりに包まれた。
「⁈」
驚いてカオンさんを見ると優しく目が笑った。
「エミの希望は?」
気付くとテーブルの上にはウエディング雑誌が広げられていた。定番のプリンセスラインやマーメイドラインなど色々なドレスが掲載されていた。
「え?え……と………」
女の子の憧れ。純白のウエディングドレス。本当に色々あって悩んでしまう。
「…レイモンはどんな衣装ですか?」
「ん?ああ、そうだな…こんな感じのドレスに上着を組み合わせる」
カオンさんがドレスの一つを指差しながら説明してくれる。
「ねえ、いっそその衣装で写真撮らない?」
「お母さん⁉︎」
この人は何を言い出すのだろう?
「無理だよ」
「どうして?」
「どうして…って………嵩張るし…」
ウエディングドレスなんて嵩張るもの持ってこれるのかな?着たままが一番手っ取り早いんだろうけどドレスで住宅街を歩く趣味も度胸も私にはない。
助けを求めてカオンさんを見ると口の端がニッと上がった。
「ドレスを着てこちらに来ればいい」
「嫌ーーーーーっ!」
間髪入れずに叫んだ私にカオンさんだけでなくお父さんとお母さんも驚いている。
「嫌。恥ずかしすぎる。近所の人に見られたら外歩けない」
「歩けなくても構わないだろう?エミはレイモンで暮らすんだから」
カオンさんがさらりととんでもない事を言った。
「で、でも、たまには里帰りしたいし…」
「するなとは言ってない」
うん。確かに言ってないね。私を自主的に帰らせないようにしようとしているだけ。
…カオンさんってこんな人だっけ?
こっそり溜め息を吐いた。
「お父さん、お母さん、二十年お世話になりました」
ケジメは大事と頭を下げればお母さんに笑い飛ばされた。
「次に会う時は花嫁姿が見られるわね」
「雪乃も呼んでいい?」
「そうね。雪乃ちゃんはあんたのお姉さん的存在だもんね」
いいわよと快諾してくれたお母さんに感謝してこの場で雪乃にはメールを送った。すぐに「絶対行く」と返信がきた。
「それは?」
カオンさんが不思議そうにスマホを見つめる。
「これはスマートフォンと言って携帯型の連絡道具です」
「…………」
「カオンさん?」
「それほど頻繁に連絡する必要があるのか?」
眉間にくっきりと皺を寄せたカオンさんに訊かれて考える。
スマホを使う時って…
「お喋りしたり」
「直に会って話せばいい」
「待ち合わせ場所の確認とか」
「事前にしっかり決めれば問題ない」
「…………」
「エミ。確かにそれは便利なんだろうとは思う。思うが過ぎればかえって不便になる」
「不便……」
確かにそうかもしれない。最近では犯罪に利用される事も少なくない。ストレスを抱える人も多い。モラルやマナーの悪さも取り沙汰されてる。
「……使う時はよく考える」
「それがいい」
カオンさんが優しく頷いてくれた。それだけで気分が浮上する。
「じゃあ、そろそろ帰るね」
そう言うとお父さんとお母さんがちょっと驚いた顔をした。
「何?」
「ううん…何でもないわ」
「元気でな。…カオンくん、咲の事、よろしく頼む」
少し寂しそうなお父さんとお母さんに私も少し寂しくなる。
「大事にします」
まっすぐに目を見て宣言するカオンさんにお父さんとお母さんも黙って頷く。もう一度頭を下げる。
「帰るか?」
「うん」
差し出された手に手を重ねる。半年ほど暮らした事があるとはいえ不安が全くないわけじゃない。だけど私は一人じゃない。カオンさんがいる。
重ねた手に力を込めると同じように握り返してくれる。
この人とならきっと大丈夫。
三ヶ月後。レイモンの婚礼衣装を着てカメラの前に立つ私とカオンさんがいた。
婚礼衣装はグルジアの衣装をイメージしました。




