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『……エミ。待っててくれ』
『はい…待ってます……』
そう約束を交わしてからカオンさんは少し変わった。日に何度もキスをする。抱きしめる。時間も場所も関係なく何度も何度も。
カオンさんてこんな人だっけ?
ワイルド系だけど爽やかイケメンだったはず。森で告白されるまでそんな素振りもなくて。おかげで好きと言われてもすぐには信じられなかった。
「……ミ………エミ」
考え込んでいた私は強く名前を呼ばれてハッとする。
「え?カオ…ん……」
慌てて顔を上げた途端、キスされる。触れて離れてまた触れて。唇だけでなく瞼や頬、額にも何度もキスを繰り返す。
「何を考えていた?」
キスの合間に訊かれる。
「…別に…何も……」
「嘘つきだな」
耳元を掠めるカオンさんの声。くすぐったさに身を捩って逃げても唇が追いかけてくる。カプッと耳を食まれたと思ったら今度は首筋を這う。
「…っあ……ん………」
自分でも聞いたことがない声が出て、カオンさんの喉がコクリと鳴った。
「…エミ……抱きたい………」
直接言葉を吹き込むように囁かれる。その少し低い声に背中がゾクゾクする。
「……いいか?」
訊かれて反射的に首を横に振る。
「エミ」
機嫌をとるようにちゅっちゅっちゅっ…とまた何度もあちこちにキスされて。大きな手が背中から腰をゆっくりと何度も撫でるからゾクゾクが止まらなくなる。
「エミ」
「だめ」
声が震える。
「どうしても?」
「…だめ」
だって……
「怖いのか?」
言い当てられて目を伏せる。
「できる限り優しくする」
首を横に振る。
「……だめ…」
「…そう、か………」
悪かったと謝るカオンさんに首を振る。
カオンさん辛いよね…
さっきから硬くて熱いモノが当たってる。十八にもなればそれが何か、何を意味するかぐらいはわかる。経験なくても情報は入るし。
昔、親類が集まった時に酔った叔父さん達が従兄弟のお兄ちゃんと話してた。「すごく辛い」「生殺しとはこの事だ」って。後で叔母さんと従姉妹のお姉ちゃんに小さい子の前でする話じゃないと酔いが覚めるぐらい説教されたらしい。その叔母さんとお姉ちゃんも私が中学生になってからはあまり隠すことなく話題にしてたけど。
「カオンさん…当たってる……」
何が、とは言えない。
「………健康な男だからな」
えーと…この場合、どう返すのが正解なんでしょう?
「………」
困っているとカオンさんが苦笑する。
「そのうち治まる」
「……本当に?」
「治まらない時は…まあ、あれだ……」
視線を反らし言葉を濁したカオンさんに私もなんとなく察する。
「あ、えーと…はい」
「…わかればいい」
ぽんぽんと頭を撫でてくれた。ちゃんと私の決心がつくまで待ってくれるその優しさが嬉しい。カオンさんを好きになって本当に良かったと思う。
「カオンさん」
「ん?」
「好き」
「…っ!…だから……煽るな」
我慢してるのに…と呟くカオンさんの顔が赤い。
照れてる!可愛い。可愛い。可愛い。
にまにま笑っているとカオンさんの切れ長の目がスッと細くなった。
「…ずいぶん余裕がありそうだな」
「え?」
カオンさんがニヤリと笑った。と思った時にはソファに押し倒されていた。
「…ぅん……」
いきなりのディープキス。慣れないキスに息苦しくなった時、唇が離れた。
「…は、ぁ………ん…」
酸素を取り込んで一息ついたらまた塞がれた。そのまま角度を変えて何度も貪られているうちに意識がぼうっとしてくる。
何も…考えられない。
「…エミ」
「……っ!」
ぬるりとした感触に目を向けるといつの間にか肌けられて露わになった胸にカオンさんが顔を埋めていた。
「え?」
声が聞こえたのかカオンさんが少しだけ顔を上げた。何か言いたそうにブルーグレイの目が私を見つめている。
なんだろう?
不思議に思っているとカオンさんがフッと笑った。
「?」
視線はそのままにカオンさんが胸の真ん中に唇を寄せて。痛いぐらい強く吸われる。
痛みに眉を顰めるとブルーグレイの目が満足そうに細められた。ぺろりと一舐めしてカオンさんが離れる。胸を見るとくっきりと赤い跡がついていた。
「綺麗についたな」
長い指が跡をなぞる。
「な、な、な………」
「こっちにもつけるか」
するりと内腿を撫でられた。
「だめ〜〜〜」
「本当にエミは可愛い」
本気ではなかったみたい。カオンさんは起き上がると私も起こして肌けた服を直してくれた。二人してソファに座り直す。
「…エミもつけてみるか?」
「へ?」
「俺に跡つけてみるか?胸、肩、首…どこでもいいぞ」
そう言うと躊躇うことなく着ていたシャツを脱いだ。さすが細マッチョ。無駄な肉はない。胸も腕も必要な筋肉で過不足なく覆われている。
「……きれい」
「男に綺麗はないだろう?」
「だって…綺麗」
言うなれば野生動物が持つ美しさ。
「そうか?」
「うん」
「そういう事にしておくか。で?どうするんだ?つける?つけない?」
「……………………つける」
たっぷり悩んだ末の答えにカオンさんが笑って腕を広げる。どこにしようか少し悩んで首に唇を寄せた。カオンさんにされたように強く吸ってみる。
「………」
「ついたか?」
「…あんまり」
よく見ないとわからないぐらい薄っすらとしかついてない。
「俺は地黒だからわかり難いんだろう」
「そうなの?」
「多分」
なんか納得できません!
この二人、何してるんでしょう。




