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レイト・デイズ  作者: 有栖
第二章『七不思議』
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第九話『横を泳ぐ少女』


「ハア…ハア…七瀬たん…七瀬たん…。」

「変態かっ!!」


怜斗は保健室の前で喘ぐ白羽の頭を叩く。

まあ、すり抜けるのだが。


「だってぇ…カワイイ…。」

「…とりあえず頭冷やせよ。次行くぞ、次っ!」

「はーい…。じゃあ…『横を泳ぐ少女』かな。」

「プールっぽいな。お前の頭冷やすのによさそうだ。」

「私の七瀬たんへの愛はっっ!!」

「はいはい、わかったらから内容よろしく。」

「うー…。えっとねえ…」


怜斗は、だいぶ白羽のあしらいかたを覚えてきたようだ。

***


ある夏の日、水泳部の練習後。

ひとりの生徒が居残りで練習をしていた。

エースと呼ばれていた彼女は、近づいてきた大会に向けての練習を黙々と行う。

彼女が、泳ぎながらふと横のコースを見ると、一瞬人影のようなものが見えた。気のせいだと思った彼女は、黙々と泳ぎ続ける。

だが、少したつとやはり隣のコースに人の気配を感じる。


「おかしいなあ…。」


不審に思いつつも、一息つくためにプールサイドに上がろうと淵に手をかける。


『ネェ、モットオヨゴウ?』


少女の動きがピタッととまる。

後ろから声が聞こえたのだ。


「…誰かいるの?」


恐る恐る問いかけてみるが、返事はない。


『ホラ、モットオヨゴウヨ。イイデショ?ネェ!』


頭のなかに直接響くようなその声に怯え、少女は急いでプールから上がろうとする。


だが、強い力で足を捕まれる。


『ナンデニゲルノ?』


そして、プールの方に体を引っ張られ、彼女を引きずり込むような力がかかる。


『イッショニオヨゴウヨ!』

「きゃああっ!!」


プールの中に引きずり込まれた少女が最期に見たのは、ニタッと笑う女の姿だった。


***


「どうやって最期に見たもの知ったんだろうな?」「シッ!そこにツッコんじゃダメだよ怜斗君!!きっと事情があるんだよ!」


大人の事情です。

さて、そんな話をしながらふたりはプールの前に到着する。


「閉まってるな」

「閉まってるねー…」


この日は部活も休みなため、当然である。


「チェーンだな…。さすがに俺でも開けれんかなあ。」

「うーん、どうしよう…。」


ふたりは腕を組みながら考える。


「どうしたの??」


すると、プールの中から知らない声が聞こえた。


『誰っ!?』


ふたりがプールの方を見ると、スクール水着というよりは、水の抵抗をより少なくするためのデザインの競泳水着を着用した、短髪のスポーツ系の少女が立っていた。


「わあ!!君たち私の声が聞こえるんだ!!」

「え、うん。一応」


彼女の不思議な言葉に白羽が首を傾げるものの、少女は喜色に満ちた顔で興奮をあらわにする。


「久しぶりだなあ!!人間の誰かと話すの!!」


その言葉で合点がいったように、怜斗が少女に問いかける。


「お前は、七不思議のひとりか?」

「うん、そうよ。私は、七不思議『横を泳ぐ少女』よ。名前は北島綾子(きたじまあやこ)。よろしくね!!」

「よろしくね!!あなたは地縛霊?概念体?」


綾子の自己紹介を聞き、白羽はすぐさま彼女にそう問いかける。七不思議との初対面での応答が板についてきたようだ。そんなことが板についても七不思議界隈でしか役に立たないのだが。


「私は地縛霊!私は、水泳部のエースで、全国大会の直前に死んじゃってさあ…。いやあ、私、自分が最強だって証明するのが夢だったんだけど…。それを叶えれなかったからその未練でね。今は、ここの水泳部の子の横を泳いで自分の実力を試してるのよ」

「綾子ちゃんは生徒を殺しちゃったこととかある?」

「えっ?将来有望なみんなを殺すわけないじゃん!」


綾子の迷いない言葉に怜斗と白羽は胸をなで下ろす。


「なるほどね、あんたもそう悪い奴じゃなさそうだな。」

「そうみたいだね。よかったあ…。教えてくれてありがとう。」

「あはは、全然いーよ」

「でも怜斗君、みんな地縛霊みたいだね」

「確かにな…。まだ概念体は一体も見てない…。」

「――ふたりは概念体の子を探してるの?」


白羽と怜斗の話を聞いていた綾子がそう問いかける。それに対してふたりが頷いて肯定すると、綾子が校庭のほうを指さして言う。


「なら、あそこにいるよ?」

『えっ!?』


綾子が指を向けた先では、ひとりの少年が黙々と走っていた。

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