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レイト・デイズ  作者: 有栖
新章『そして始まるニューデイズ』
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最終話『プロローグ ――そして始まるニューデイズ』

「ここが黄泉の街かあ…。]

「案外普通だな…。」


黄泉に着き、諸々の手続き(住民票登録など)を済ませたふたりはスサノオに呼ばれ、彼の城に向かっていた。


ふたりの周りに広がるのはたくさんの高層マンション。

少し見回すとコンビニやスーパーマーケットらしきものもある。


「コンビニ、スーパーマーケット、ゲームセンター…。」

「あっちにはカラオケもあるぞ…。」

「もうちょっと薄暗くてジメジメしてる荒れ地みたいな所だと思ってた…。」


そんな白羽の予想とは裏腹に、目に入るもののほとんどが生きている時に見ていたものと同じだ。

強いて言えば空が少し薄暗いくらいか。


ゆっくり周りを見ながら進む白羽達を、老人ふたりが追い抜いていく。

会話を聞くと、どうやら親子なんだと思うが、ふたりとも老人なため傍から見たらどっちが父親かわからない。

さすがは黄泉である。


-10分後-


「うわあ…大きい…。」


「スサノオはこんなとこに住んでるのか…?」

ふたりは、城を見上げる。

いや、城と言うよりは高層マンションだ。

現代的かつ前衛的なデザインの、どこか幻想的な建物である。


「いや、もうちょっと禍禍しいとこに住めよっ!黄泉の主だろっ!!」


怜斗がビルのどこかにいるであろうスサノオにツッコむ。

だが怜斗よ、それは偏見だ。


「あ、白羽お姉ちゃんと怜斗お兄ちゃんだ!!」


ふたりがポカーンとビルを見上げていると、入口からアイが出てきて声をかけてくる。


「アイちゃん!!」

「よかった、ここまで来れて!黄泉は広いから迷ってると思ったんだよ?」

「ううん、大丈夫だったよ。でも黄泉って凄いね。ビルとかマンションが一杯!」


「そうなの。黄泉は時代に合わせて建物を建て直したりするんだよね。あ、スサノオお兄ちゃんが呼んでるから行こう?」


そう言ってアイは怜斗と白羽の手を握る。


「スサノオお兄ちゃんはここの最上階にいるの。普通に行くのめんどくさいから私が連れてくね?えいっ!!」


『うわっ!?』


アイの『えいっ』を聞いた瞬間、気がついたら広間にいた。


「うわあ、私瞬間移動初体験……。」

「やっぱアイ凄いな!」

「えへへー、ありがとう!!」


アイの瞬間移動に対して各々の反応をしていると、広間の奥からスサノオの声が。


「おい、アイ…。」


彼は大きな机で雑務のようなものをこなしつつ、


「ここで瞬間移動を使うなよ…。誰かに刺さったらどうするんだ…。」

「えへへ、ごめんね!!」


スサノオの注意に、アイは『テヘッ』と笑う。

多分、気にせずにまた使うのだろう。


「まあいい。白羽、怜斗、手続きお疲れさん。お前達には明日から正式に取締官として働いてもらう。」

「ところで、取締官って何をすればいいの?」


白羽が疑問を投げかける。

こいつ、それを知らずに死んだのか。


「お前達には伏吹市近辺の任務の請け負いと見回りを当面頼む。とはいえ、あの辺りにあった任務はあの掃除機が最後だったからしばらくは見回りを頼む。」

「見回りって例えばどんな事をすればいいんだ?」


スサノオの説明に、今度は怜斗が問いかける。


「いや、別に決まりはない。ただ怪しい行動をとる霊や概念体を探してくれればそれだけでいい。あとは自由。霊と話すもブラブラするも自由だ。」

「意外とルーズなんだな…。」

「ま、気楽にやってくれ。アイはいきすぎだがな…。定期連絡さえして招集に応じてくれれば大丈夫だ。今日はそれを伝えたかった。もういいぞ。」


ここまでの説明を聞き、白羽と怜斗はこれが罰なのか正直わからなくなってきた。


「よし、アイ。」

「なあに?」

「ふたりを宿舎に案内しろ。」

「わかった!!」


出てきた宿舎という言葉に、白羽と怜斗が首を傾げる。


「うん、移動しながら説明するね?じゃあね、スサノオおにーちゃん!」

『さよならー。』

「おう、またな。」


スサノオに挨拶をして、スサノオの部屋を出る。


「このビルは色々なものを兼ねてるの。任務を受ける場所、会議場、訓練場、そして取締官の宿舎。」

「取締官はみんなここで暮らしてるの?」

「うん、アイも桃華ちゃんもここで暮らしてるの。宿舎は15階から20階までだよ。まあアイはほとんどいないんだけどね。」


そう言いながら笑うアイ。それはスサノオが困り果てるわけだ。

ちなみに、ビルは35階建てである。


「白羽お姉ちゃんと怜斗お兄ちゃんの部屋は…。あ、アイの部屋の近くだね!17階だよ!」

「え、そこまで浮いて下りなきゃいけないのか?」


怜斗は、一旦窓から外に出て浮きながら下りるという想像をした。

だが、その疑問をアイは笑顔で否定する。


「エレベーターがあるから大丈夫だよ!!」


エレベーターの到着を知らせる聞き慣れた音が鳴った。

そして、エレベーターで17階まで下りる。


「ここが白羽お姉ちゃんの部屋。隣が怜斗お兄ちゃんの部屋だよ!!」

「あ…怜斗君隣なんだ…。」

「え?白羽お姉ちゃんは、もしかして斗お兄ちゃんと一緒の部屋がよかった?」


アイがニヤニヤそう言うと、白羽の顔がボッと火を噴いた。


「あ、ああ、アイちゃんっ!!そ、そんなんじゃないよおっ!!れ…怜斗君と一緒なんて…」


「え、嫌なのか……。」


白羽の言葉に、怜斗がガッカリした表情を見せる。


「い…ぃやじゃないけど…。けど…。」


白羽が真っ赤になりながら語尾をすぼめる。


「ま、まだはやぃ…。」

「あははっ!白羽お姉ちゃんかーわいい!!」

「な…なっ…。」


白羽の顔はこれ以上ないほど真っ赤であり、それを見た怜斗も赤くなる。


「部屋は自由に模様替えとかしていいから、好きなように使ってね!」


アイがそう言うと、エレベーターの方から桃華の声がした。


「アイさーん!せっかく黄泉にいるのですから少し訓練に付き合って下さいましーっ!!」

「わかったーっ!!」


その声に応えて、アイはエレベーターの方に向かう。


「ちょっと桃華ちゃんの訓練に付き合ってくる。じゃあふたりともまたね!!」


アイは手を振りながらパタパタとエレベーターの方に走って行く。

そして残った白羽と怜斗。


「あー、どうしようか、怜斗君。」

「とりあえず、部屋を見るか…。」

「うん、じゃあまた後でね。」

「おう。」


別れて部屋に入る。

もちろんのこと、もう4mの壁はない。


「広い…。」


部屋に入った白羽はそんな感想を抱く。

テレビもあるし風呂もキッチンもある。


「生きてるのとあんまり変わらないなあ…。ちょっといろんな感覚が薄いだけかな…。」


フワフワと浮きながら動き回り、ベッドにボフッと着地する。

ちなみに、黄泉の物は霊達でも触れるようにできている。


「霊は寝ないのにベッドあるんだ…。あれ、寝るのかな?」


霊は寝る必要性はないが、人間であった時の癖から寝る者も多く、どっちでもいいのだ。ちなみに怜斗は寝ていなかった。どうせ白羽の寝顔を見たかったのだろう。


「あー…。なんかひとりって変な感じ…。もうひとりじゃなかった時、思い出せないなあ…。」


そう、怜斗に憑かれて以来、彼女にとっては久しぶりのひとりの時間だ。


「私、ちょっと寂しいのかな…。」


独り言を呟くが、返事はない。


「寂しいな…。」


その言葉が漏れた時、白羽の部屋のドアがノックされる。

もしかして怜斗君かなと期待したような眼差しでドアの方を見る。


「はーい?」

「あ、俺…だけど。」


怜斗の声だ。白羽は嬉しくなって少し遊ぶことにした。


「お金はありませんよー。」

「詐欺じゃねえよっ!!」

「そのツッコミは…怜斗君…?」

「いや、ツッコミで気づくなよ。」

「入っていいよー。」


一連のやりとりに満足した白羽が許可を出し、ガチャッとドアが開く。


「おじゃましまーす…。」


怜斗が恐る恐る入ってくる。


「うわあ…。これが白羽の部屋かあ…。って俺のと同じだわっ!!」


ひとりで、ふられてもいないのにセルフボケツッコミをする。


「そりゃあ、さっき入ったばっかだしねー。怜斗君、こっちこっち。」


白羽は、ベットにゴロンと寝ながらチョイチョイと怜斗を手招きする。

怜斗は、無防備な白羽の様子にどうすればいいのかわからず、そちらに行くか少し迷ったような表情をする。


「俺…どうすれば…。」

「ここ座っていいよー。」


白羽は、自分が寝ているベッドをポンポンと叩く。


「お、おう…。失礼しまーす。」


怜斗が緊張したような面持で腰を下ろし、震える声で呟く。


「俺…まだ少し考えてるんだ。」

「何をー?」


険しいな表情の怜斗と、かなりリラックスしている白羽。

そんな対照的な状況で怜斗は呟く。


「白羽を死なせてよかったのかって…」


その言葉を白羽は無言で聞く。


「やっぱり俺だけ消えてお前を生き残らせればよかったんじゃないかって…」

「怜斗君――」


白羽が一瞬間を置いて言う。


「怒るよ?」

「ごめんなさい。」


怒ると怖い白羽である。そのことはもう怜斗の脳裏に嫌と言うほど叩き込まれていた。


白羽は『はあ…。』と大きくため息をつくと、


「ゴロゴロー。」


わざわざ擬音を口にしながら広いベッドの上を転がり、座っている怜斗の横に行く。


「ねえ、怜斗君。」

「何だ…?」


白羽は、そっと怜斗の手に自分の手を添えて語りかける。


「不思議だよね、ほんの数時間前まで触ることもできなかったのに、今はこうやって触ることができる。ちょっと冷たいけどね。」


自分のことを見上げながらえへへと笑う白羽に、怜斗は目を奪われる。


「白羽…。」

「手が届かなかった怜斗君に触れて、温もりはないけど怜斗君の温度を感じながら話すことができる。」


白羽は、心底嬉しそうな声音と表情で言葉を紡ぐ。


「私は幸せだよ?怜斗君。だから、怜斗君は何も悪くないんだよ。私の死は終わりなんかじゃなかったんだ――」


「“新しい日々”の、始まりだったんだよ」


(レイト・デイズ-了-)

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