◆13 せっかくのイケメンが、台無しじゃね!?
ターニャ王女殿下の幼馴染レオナルド・フォン・スフォルトは、金髪で碧の瞳をした、ビックリするほどのイケメンだった。
だが、その振る舞いがなってない。
いつもオドオドした感じで、白鳥雛の好みではなかった。
そしてさらに、決定的なマイナスポイントが加算されようとしていた。
彼が引き連れてきた老従者によってケースが開けられた。
すると、中には、白いドレスを着た、一体の少女人形が寝かせられていた。
その姿を目にしたとたん、鼻息荒くレオナルドが立ち上がった。
「見てください! 美しいでしょう?
この人形、〈永遠の約束〉という名前なんですよ。
ほら、起きあがらせると、目がパッチリと開くのです!」
爛々(らんらん)と目を輝かせて、彼は少女人形を大事そうに抱え上げる。
とても嬉しそうに、イケメンが笑っている。
が、ワタシの方は、とても笑える状況ではなかった。
(おいおい、マジかよ。
異世界にも、フィギュアオタクがいるのかよ。
聞いてねえよ。まじ、ダセエ。
せっかくのイケメンが、台無しじゃね!?)
絶句するワタシに向かって、ターニャ姫は解説する。
まるでヤンチャな子には困ったものだわ、とノロケ(?)るお姉さんか母親のような表情を浮かべて。
「ごめんなさいね。
レオナルド様にとって、今のマイ・ブームですのよ。
人形の衣装や小物ーーさらには人形そのものを造ることが」
ちょっと前までは錠前造り、その前は生花、さらに前は手話の習得なんかが、彼のマイ・ブームだったらしい。
以降、お姫様とお貴族様の語らいが始まる。
「これでも彼、小さい頃はヤンチャで、師匠をつけて剣術や弓術の練習ばかりしていたのよ。
私なんか、よく棒切れで叩かれて泣かされたものだわ。
でも、私があまりに痛がって泣くものだから、私の実母が、この人形を人形師に造らせて、
『男性は、女性に優しくなくてはいけませんよ。
立派な紳士になるために、まずはこの娘を可愛がることを覚えなさいね』
と仰って、レオナルド様に差し上げたんです。
ね。おかげで、私は痛い思いをしなくて済むようになりました」
「それはもう言わないでくださいよ、姫様」
「飽きっぽいのが、玉に瑕ですわね」
「まあ、それもありますがーー飽きるだけじゃないんですよ。
新たな発見が楽しいんです。
私からみれば、どのジャンルにも通じる見方のようなものがございましてーーそれこそ、人形造りから錠前造り、さらには美術、剣術、弓術など、すべての芸能や武術にもーーその技を成り立たしめる細部にまで宿った哲理というか、法則というか、そういったものがありまして。
そこに触れる瞬間というか、体感する瞬間が、なんとも気持ち良くて、つい新しいモノに目が移ってしまって……」
ワタシは、レオナルドのセリフを聞き流しつつ、額に手を当てた。
(ああ、ダメだわ、このオトコ。
せっかくイケメンに生まれたのに、勿体なすぎる……)
小さな頃のヤンチャな性格を、今まで保てていれば良かったのに。
今ではすっかりオドオドして、こちらの顔色ばかり窺うような素振りをしている。
それに、あのハッキリしない物言い。
まさにコミュ障のオタクって感じ。
全然、男らしくない。
ガールズ・バーやってたとき、よくいたわ、こういうお客さん……。
(はあ〜〜)
ワタシはガールズ・バーで培った接客術で、無難に過ごそうと腹を決めた。
「ーーで、レオナルド様は、ワタシのような異世界人に会って、なにか得るところがございましたか」
愛想笑いを浮かべるワタシを見て、幾分、安堵した様子で、金髪の美男子は頭を捻る。
「そうですね。人形の次回作についての着想が得られました」
レオナルドは、人形を抱えたままニコニコしている。
待ってよ、その反応はないでしょ?
ヤバいでしょ、コイツ!?
と、ワタシは面と向かって、叱責したい気持ちに駆られた。
ここはワタシの容姿を褒めるなりなんなりして、お愛想を言うところでしょうに。
ワタシは数秒、目を閉じて考えた。
この男、まじダセエ。ダメだわ。
ワタシの本能が、そう告げている。
ワタシの男を見る目に、狂いはないのだから、その直感は正しい。
イケメンなだけで、なにか欠落している。
良い男に絶対不可欠な、ワイルドさもない。
顔がいいだけに、余計に悲しくなる。
残念すぎて、盛大に頬を膨らます。
それでも、接客術が活きたおかげで、なんとかこの場にいる美男美女二人には、ワタシの失望が伝わらなかったようであった。




