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東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!  作者: 大濠泉
第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

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◆13 せっかくのイケメンが、台無しじゃね!?

 ターニャ王女殿下の幼馴染レオナルド・フォン・スフォルトは、金髪で(みどり)の瞳をした、ビックリするほどのイケメンだった。

 だが、その振る舞いがなってない。

 いつもオドオドした感じで、白鳥雛しらとりひなの好みではなかった。

 そしてさらに、決定的なマイナスポイントが加算されようとしていた。


 彼が引き連れてきた老従者によってケースが開けられた。

 すると、中には、白いドレスを着た、一体の少女人形が寝かせられていた。

 その姿を目にしたとたん、鼻息荒くレオナルドが立ち上がった。


「見てください! 美しいでしょう?

 この人形()、〈永遠(とわ)の約束〉という名前なんですよ。

 ほら、起きあがらせると、目がパッチリと開くのです!」


 爛々(らんらん)と目を輝かせて、彼は少女人形を大事そうに抱え上げる。

 とても嬉しそうに、イケメンが笑っている。


 が、ワタシの方は、とても笑える状況ではなかった。


(おいおい、マジかよ。

 異世界にも、フィギュアオタクがいるのかよ。

 聞いてねえよ。まじ、ダセエ。

 せっかくのイケメンが、台無しじゃね!?)


 絶句するワタシに向かって、ターニャ姫は解説する。

 まるでヤンチャな子には困ったものだわ、とノロケ(?)るお姉さんか母親のような表情を浮かべて。


「ごめんなさいね。

 レオナルド様にとって、今のマイ・ブームですのよ。

 人形の衣装や小物ーーさらには人形そのものを造ることが」


 ちょっと前までは錠前造り、その前は生花、さらに前は手話の習得なんかが、彼のマイ・ブームだったらしい。

 以降、お姫様とお貴族様の語らいが始まる。


「これでも彼、小さい頃はヤンチャで、師匠をつけて剣術や弓術の練習ばかりしていたのよ。

 私なんか、よく棒切れで叩かれて泣かされたものだわ。

 でも、私があまりに痛がって泣くものだから、私の実母(おかあさま)が、この人形()を人形師に造らせて、


『男性は、女性に優しくなくてはいけませんよ。

 立派な紳士になるために、まずはこの()を可愛がることを覚えなさいね』


 と(おっしゃ)って、レオナルド様に差し上げたんです。

 ね。おかげで、私は痛い思いをしなくて済むようになりました」


「それはもう言わないでくださいよ、姫様」


「飽きっぽいのが、玉に瑕ですわね」


「まあ、それもありますがーー飽きるだけじゃないんですよ。

 新たな発見が楽しいんです。

 私からみれば、どのジャンルにも通じる見方のようなものがございましてーーそれこそ、人形造りから錠前造り、さらには美術、剣術、弓術など、すべての芸能や武術にもーーその技を成り立たしめる細部にまで宿った哲理というか、法則というか、そういったものがありまして。

 そこに触れる瞬間というか、体感する瞬間が、なんとも気持ち良くて、つい新しいモノに目が移ってしまって……」


 ワタシは、レオナルドのセリフを聞き流しつつ、額に手を当てた。


(ああ、ダメだわ、このオトコ。

 せっかくイケメンに生まれたのに、勿体なすぎる……)


 小さな頃のヤンチャな性格を、今まで(たも)てていれば良かったのに。

 今ではすっかりオドオドして、こちらの顔色ばかり窺うような素振りをしている。

 それに、あのハッキリしない物言い。

 まさにコミュ障のオタクって感じ。

 全然、男らしくない。

 ガールズ・バーやってたとき、よくいたわ、こういうお客さん……。


(はあ〜〜)


 ワタシはガールズ・バーで(つちか)った接客術で、無難に過ごそうと腹を決めた。


「ーーで、レオナルド様は、ワタシのような異世界人に会って、なにか得るところがございましたか」


 愛想笑いを浮かべるワタシを見て、幾分、安堵した様子で、金髪の美男子は頭を(ひね)る。


「そうですね。人形の次回作についての着想が得られました」


 レオナルドは、人形を抱えたままニコニコしている。


 待ってよ、その反応はないでしょ?

 ヤバいでしょ、コイツ!?


 と、ワタシは面と向かって、叱責したい気持ちに駆られた。

 ここはワタシの容姿を褒めるなりなんなりして、お愛想を言うところでしょうに。


 ワタシは数秒、目を閉じて考えた。

 この男、まじダセエ。ダメだわ。

 ワタシの本能が、そう告げている。

 ワタシの男を見る目に、狂いはないのだから、その直感は正しい。

 イケメンなだけで、なにか欠落している。

 良い男に絶対不可欠な、ワイルドさもない。

 顔がいいだけに、余計に悲しくなる。

 残念すぎて、盛大に頬を膨らます。


 それでも、接客術が()きたおかげで、なんとかこの場にいる美男美女二人には、ワタシの失望が伝わらなかったようであった。

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