◆8 これがナノマシンの働きか。凄いもんだ……!
「うわっ! なんだよ、これ!?
ふざけんな! 俺様の腕が。痛てーよ!」
東京から派遣された、俺様、勇者マサムネは、魔物相手に初戦闘を繰り広げていた。
雷撃魔法を使うなどして、順調に魔物を狩り続けてきた。
が、油断した隙に、初めて大怪我をしてしまった。
魔物に右腕の肉が食いちぎられ、もげてしまったのである。
「出血多量で死ぬよ、マジで!」
俺は眉間に皺を寄せながら、怪我している自分の腕を見つめた。
ドクドクと流れる赤い血と、露出した骨の白さが、気味悪かった。
目眩がする。
薬はないのか!?
パニクって、色々と思い巡らせたときだった。
俺は自分の身体の感覚に、ようやく気が付いた。
(ーーあれ? 痛くない?)
たしかに、電撃のように激痛の感覚が、右肩のあたりから迸った。
が、それも、ほんの一瞬だった。
今は、痛くもなんともない。
腕の上下が、なんとか皮一枚で繋がってるだけの有様なのに。
目の前には、勝ち誇った顔をした魔物がいた。
俺様は不愉快だった。盛大に舌打ちする。
(ちッ! ケダモノのくせに、生意気なヤツだ。
俺様の血で真っ赤に染まった牙を、剥き出しにしてやがる)
目の前のヤツは、ひときわ大き身体をしていた。
角も青白く光ってるから、親玉かなにかだろう。
ヤツが一吼えすると、周囲からいっせいに、何頭もの魔物が飛びかかってきた。
うん。
さぞ、勝利を確信していることだろうな。
だが、悪ィ。
これほどの大怪我をしていても、じつは俺様は、まったく痛いと感じていなかった。
血飛沫があがったのも、最初だけ。
今は、血すら出ていない。
不死身の俺様、カッコイイじゃん!
俺は魔力を込め、全身を青白く輝かせた。
「俺様は、痛くも痒くもないんだよ!」
焦った反動もあって、かえって気分が高揚した。
強気になった俺は、魔力全開モードで、次から次へと、群がる魔物を狩っていった。
両手から雷撃を発射しつつ、舞を舞うようにして、魔物を翻弄する。
そして、目の前のボスに、電撃を喰らわした。
ギャン!
一鳴きして、ボスらしき大型魔物が、焼け焦げになった。
両目を見開き、口から舌を出したまま。
人間でいうと、信じられねえ、とでもいった驚愕の表情を残して、成仏した。
俺に襲いかかったヤツらが、血塗れになって動けなくなるまで、五分とかからなかった。
大将格の魔物が、殺られたからなのだろう。
怯んだ魔物どもは、いっせいに踵を返し、方々へと散っていった。
残るは血溜まりに横たわる、十数頭の死骸ばかり。
どうやら、戦闘は終わったようだ。
俺は改めて、自らの右腕に目を向ける。
見ると、今では、普通の腕の状態に再生していた。
痛みを感じなくなったばかりか、途中で出血も止まっていたと思う。
なんとも、恐るべき回復力!
(これがナノマシンの働きか。凄いもんだ……!)




