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メテオクライシス  作者: 森野一葉
第二章 強さの責任
10/32

09

 実戦訓練の前に、五分間だけ作戦会議の時間をもらった。

 訓練場の芝生に腰を下ろしてから、作戦会議を始める前に迅は凛奈とレニに頭を下げた。

「……悪い。結局こうなっちまった」

「そんな……春日君のせいじゃないです」

「むしろ、あの先生に反抗できただけ凄いよ……」

 殺気を向けられた時のことを思い出したのか、凛奈は自分の肩を抱きすくめて身震いした。

 あの凄まじい殺気を思い出すと、迅も身体の芯が凍りつくような寒気を覚える。現役を退いたとはいえ、さすがは元剣鬼八衆といったところか。生徒に鬼先生などという愛称で呼ばれているのが、不思議に思えるくらいだ。

「そう言ってもらえると助かる。それじゃ、さっそく作戦を立てようと思うんだが……正直、俺達にはまともな連携なんてできないだろう」

「まだ一緒に訓練したこともないし、当然だよね」

 凛奈が渋い顔をしながらうなずくと、レニは不安そうに身を縮こまらせた。

「じゃ、じゃあ、どうすれば……?」

「とにかく、それぞれの役割に集中しよう。ヴァニロイドはこっちと同数。凛奈が遠くから牽制してる間に、俺が一体を引きつけて隙を作り、そこをレニが仕留める。これでいいか?」

「ま、他にやりようないよね……」

「位置的に凛奈が一番全体を見れるから、なるべく指示出しを頼む。レニは、俺が合図を出すまでは俺の前に出ないように。あと、陣形が崩れたり予想外のことが起きた場合は、二人とも自分の安全を再優先にすること。いいな?」

「りょーかい」

「は、はい」

 凛奈は適度にリラックスした声でうなずいてきたが、レニのほうは緊張の色が表情に出ていた。長剣を握る手も震えており、カタカタと音を立てている。

 迅は少しだけ迷ってから、彼女の緊張を和らげるために口を開いた。

「実践訓練と言っても、しょせんはただの訓練だ。そう硬くなる必要はないさ。ケガしないようにだけ注意して、ヒット&アウェイを心がけて、なるべく速く近づいて速く下がること。それだけできれば上出来だよ」

「で、でも……きっと、わたしが頑張らなきゃいけないんですよね……」

「それは……」

 どういう意味だ、と問いかけようとして――

「時間だ」

 細川教諭の声で、迅は問いかけた言葉を飲み込んだ。芝生から腰を上げ、レニと凛奈の顔を確認してから、あくまで軽い調子で告げる。

「さて、行ってくるか」

「は、はい」

「あいよー」

 各々の返事を聞いてから、迅は細川の元へ歩き出した。その後ろを、二人もついてくる。

 迅達三人の顔つきを見て、細川は少しだけ目に感心の色を宿した。

「打ち合わせは間に合ったようだな」

「おかげさまで」

 皮肉のつもりはなかったのだが、先刻のやりとりのせいで、思わず声に険がこもってしまう。

 だが、細川はまったく気にした様子もなく、迅に言葉をかける。

「なら、思う存分暴れてくることだ。期待しているぞ、春日」

「……俺に、ですか?」

「期待してないやつに、Sランクの剣覚を預けると思うか?」

 細川の言ってることはもっともらしくはあったが、迅にはいまいち信用できなかった。

「……まぁ、EランクはEランクなりに足掻いてみますよ」

「楽しみにしておこう」

 細川の声を背に受けながら、白線の引かれた訓練エリア内に入る。

 状況は平地での遭遇戦。エリアの向こう側には、三体のヴァニロイドがこちらと同じように陣形を組んでいる。

「あれが、ヴァニル……」

 レニの小さな呟きが、風に乗って耳に入る。

 だが、迅にはそれに答える余裕はなかった。

(久しぶりだな……)

 自然と口の端が吊り上がるのを、迅は止められなかった。

 黒銀色の外皮。短い後肢で直立し、丸太ほどもある長太い前肢の先には鋭い爪。全長はそれぞれ二メートル半ほどか。ずんぐりとしたシルエットの頭にあたる部分には、隻眼のような赤い核がぎょろりと光る。

 異形の怪物を睨み据えながら、迅は再会の歓喜に震えていた。

(ようやく、殺し合えるな)

 無論、あれがただの機械で、本物のヴァニルでないことはわかっている。

 それでも、迅は自分の興奮を抑えることができなかった。

 爆発的な感情の奔流に衝き動かされ、自然と言葉が溢れてくる。

「……殺してやる」

「えっ?」

 呟きが聞こえてしまったのか、レニが疑問の声を上げる。

 それを無視して、迅は腰の野太刀に手をかけた。主の様子がおかしいことに気づいたのか、野太刀の姿のまま風花が声を投げてくる。

『迅、大丈夫ですか?』

「大丈夫。やってやるさ」

『……無茶なことは、しないでくださいね』

 相棒の心配そうな声に、迅は答えなかった。

 細川の声が、どこか遠くから響いてくる。

「準備はいいな? では――始め!」

 訓練開始の合図とともに。

 迅は地面を蹴って、ヴァニロイドの群れに駆け出した。

「ちょっと、迅! 一人で突出しないで!」

 背後から凛奈の声が聞こえたような気がしたが、前進する足は止まらない。

 その動きに気づいたヴァニロイド達が、一斉に迅に殺到する。長い前肢を使って四足で疾駆する姿は、かなり異様だ。

 前進するヴァニロイドの内、二体の身体に交互に弾丸が飛来する。着弾と同時に爆発するそれは、凛奈の援護射撃だろう。

 凛奈の剣精霊、紅葉の能力は『爆発』。銃剣の砲身内で起こした爆発によって精霊鋼の弾丸を飛ばし、着弾と同時に精霊鋼との接地面を爆発させる。一撃でヴァニロイドの外皮を貫く威力はないが、足止めとしては十分な威力だ。

 弾丸を受けているヴァニロイド二体が取り残され、残った一体が迅に向かって突出する。あと十メートルで接敵というタイミングで――ヴァニロイドが前肢を地面を叩きつけ、突進の勢いを殺さずに空中に跳ね上がる。

「きゃっ!?」

 後方から聞こえてきたレニの悲鳴に、足を止めて振り返る。

 見ると、迅の後を追ってきていたレニが、跳躍するヴァニロイドの姿に腰を抜かしているところだった。

 このままだと、ヴァニロイドは迅を飛び越えてレニに激突する。

「させるかっ……!」

 吐き捨て、迅は野太刀を持つ手に力を込める。

 迅の剣精霊、風花の能力は『大気支配』。野太刀から暴風が巻き起こり、それに乗って迅は跳躍する。

 跳躍した先は、ちょうどヴァニロイドの軌道上。凄まじい勢いで飛来するヴァニロイドを、迅は真正面から迎え打つ。

 ヴァニロイドが突き出してきた前肢と、野太刀が激突する。威力は圧倒的に向こうが上だ。勢いに押されて、迅の身体が吹き飛ばされそうになる。

「……くっ!」

 迅はとっさに暴風を背負うことで、かろうじて敵に食らいついた。勢いを完全に殺されたヴァニロイドが、その場で落下を始める。

 暴風を纏いながら、迅は墜落する敵を追う。野太刀を上段に構え、頭部の核を狙って斬り下ろす。

 斬撃は核に届く前に、敵の前肢に阻まれた。やはり威力が足らないらしく、外皮には傷一つついてない。もう一方の前肢が襲ってくる前に、迅は風に乗って離脱する。

 敵が着地する瞬間、迅はその足元に剣風を飛ばす。鋭い風は地面を崩し、着地と同時に足場を崩されたヴァニロイドが仰向けに倒れる。

 その様子を見届ける前に、迅は声を張り上げた。

「レニ!」

「は、はい!」

 声に応じて、レニが倒れたヴァニロイドに迫る。

 まだ表情には怯えの色が残っているし、長剣を構える姿も覚束ない。

 それでも、ヴァニロイドへ駆け寄る足に迷いはなかった。起き上がろうとするヴァニロイドの後肢に、長剣を突き立てる。

 剣の威力は外皮に浅く傷をつける程度のものだったが、それだけでヴァニロイドの動きは完全に停止した。外皮に仕込まれたセンサーが、レニの剣精霊の『元素分解』の能力を感知し、自動停止したのだ。

 レニは停止したヴァニロイドを様子を慎重にうかがい、間違いなく停止しているのを確認すると、ようやくほっとしたように胸を撫で下ろした。

 それを横目で確認してから、迅は残りのヴァニロイドに視線を戻そうとし――

 黒銀のなにかが、視界を埋め尽くした。

 凄まじい衝撃が全身を貫き、地面を転がる。腹部を鈍い痛み苛み始め、ようやく自分がヴァニロイドに殴られたのだと気づく。

「くそっ……!」

 自分の油断に悪態をつき、腹部の痛みに耐えながら、迅は野太刀を杖にして立ち上がった。

 軽く身体をひねろうとすると、脇腹に激痛が走る。もしかすると、肋骨までやられているかもしれない。

 ――戦闘の続行は厳しいかもしれない。

 一瞬だけ甘い思考がよぎるが、迅はそれを即座に振り払った。

(本物のヴァニルを前にした時、同じことを言うつもりか?)

 これが訓練だということはわかっている。だが訓練だからこそ、本気でやらなければ意味がない。

 凛奈を見る。前線が崩れてしまったため、彼女は一人でヴァニロイドと交戦していた。相手の繰り出す攻撃を交わしながら、至近から弾丸を撃ち込み、銃剣を突き立ててかろうじて外皮に傷をつけている。

 レニを見る。彼女はヴァニロイドに追いかけられ、必死に逃げ回っているところだった。Sランクの身体能力だけはあって、容易には接近を許していないようだが、体力のほうがそろそろ限界のようだ。息切れも激しく、明らかに逃げるペースも落ちている。

 迅は一瞬だけ逡巡してから、レニのほうに走り出した。

 地面を踏みしめる度に、激痛に頭が真っ白になる。それでも、迅は戦うのをやめるわけにはいかなかった。

(今の最善は、この訓練をレニの次に繋げることだ)

 もし、ここでレニが大怪我をして、ヴァニルとの戦闘にトラウマを持ってしまったら最悪だ。

 レニ個人やチームの問題だけでなく、Sランクの成長を大きく妨げることで、それこそ岳が言ったように、世界にとって重大な損失となる。

 痛みなどを言い訳に、戦いを放棄できるわけがなかった。

 体力が尽きたのか、レニが地面に膝をつく。その瞬間、彼女の背後から高速でヴァニロイドが肉薄する。

 迅は暴風を背負って大きく跳躍し、なんとか両者の間に割って入った。

 ヴァニロイドの前肢が突き出され、野太刀でそれを受ける。身体が浮きそうになるのを暴風を背負って繋ぎ止め、地面にしがみつく。

 敵の攻撃は止まらない。前肢を突き出し、薙ぎ払い、体ごとぶつかってくるのを、なんとか野太刀と風花の力を借りてさばく。攻撃を受ける度に脇腹に激痛が走るが、歯を食いしばって耐える。

 だが、このまま守るだけではジリ貧だろう。

 背後の気配を探るが、レニの荒い呼吸音が聞こえるだけだ。恐らく、体力が尽きてしまって戦闘は期待できないだろう。

 敵の攻撃を受けながら、迅は大きく息を吸い込んだ。

 大振りの一撃が繰り出される瞬間――迅は大きく踏み込み、薙ぎ払われる前肢の下をくぐり抜けるように前に出る。

 敵の前面にぴったりと張り付き、至近から頭部の核へ刺突を繰り出す。

 刺突は核に当たったが、威力が弱いため砕くには至らない。それに舌打ちをしつつ、迅は地面すれすれまで身体を落として、敵から離れる。

 ちょうど同じタイミングで、ヴァニロイドは体表面に張り付いた異物を倒そうと、自分の胸に拳を叩きつけた。離脱するのがあとわずかでも遅れていたら、後頭部を打たれて気を失っていただろう。

 敵と再度対峙しながら、迅は苦い思いを噛みしめる。

(やっぱり俺じゃ、ヴァニルは倒せないのか……?)

 暗い気持ちが脳裏をよぎるが、迅はすぐにそれをねじ伏せた。

 倒せる、倒せないじゃない。

 ――倒す。倒すまで挑み続ける。それ以外に、自分の道はない。

 決心を改め、野太刀を握り直す。イチかバチかの賭けになるだろうが、敗北を認めるよりはマシだ。

 迅は野太刀を肩に担ぐように構え、相手の動きを待つ。

 先ほどの攻撃で、迅に核を砕くだけの攻撃はできないと判断したのか、ヴァニロイドはやや大振りに前肢を振りかぶる。

 それが身体に叩きつけられる寸前――

 迅は飛翔した。

 地面を蹴った勢いで風に乗り、上空高く舞い上がる。ヴァニロイドが米粒に見える高さまで跳ね上がったところで、風の流れを反転させて落下する。

 自由落下による加速と、風花の能力による暴風に後押しされ、迅は野太刀を構えたまま敵に向かって凄まじい速度で落下する。

 さすがに危険と判断したのか、ヴァニロイドは核をかばいながら逃げようとするが、遅い。

 激突の瞬間、迅は肩に担いだ野太刀を全力で振り下ろした。その勢いのまま回転し、暴風で急停止をかけながら地面に着地する。脇腹の激痛と、落下の衝撃とで全身がバラバラになったような痛みが襲うが、かろうじて意識を保ってヴァニロイドを振り返る。

 斬撃は前肢の合間を縫って、敵の核を正確に切り裂いていた。機能停止と自己判断を下し、ヴァニロイドが完全に動きを停止する。

「あと一体……っ!」

 全身の痛みを跳ね除けて立ち上がろうとして――訓練終了のアラームが鳴る。

 見れば、凛奈の放った銃弾が、最後のヴァニロイドの核を撃ち砕いたところだった。敵にやられたのか、ジャージがところどころ破けているようだが、目立った外傷はない。息を荒げながら一息つくと、こちらに駆け寄ってくる。

「迅! あんた、さすがに無茶しすぎ!」

「……どこがだ?」

「どこもかしこもよっ! ケガしてるのに、あんなめちゃくちゃな攻撃……よく生きてたもんだわ」

 怒りながらも、凛奈は心配そうに迅のケガの具合を確かめる。改めて状態の酷さを確認して、露骨に顔をしかめた。

「ひどいもんね……でもまぁ、迅はこのくらいケガしてるくらいでちょうどいいかもね」

「結構痛いんだぞ、これ」

「痛い目見ないとまた無茶するでしょうが、あんたは」

 凛奈は子どもを叱るように迅の額を指で弾くと、まだふらつく足取りで立ち上がった。具合を診るために、倒れているレニのほうに歩み寄る。

「レニは大丈夫? ケガとかしてない?」

「は、はい……で、でも、ごめん、なさい……わたし、全然、役に立てなくて……」

 呼吸を荒げながら謝罪するレニに、凛奈は苦笑しながら髪を撫でた。

「そんなこと気にしないの。それに、ちゃんと一匹倒したんだから、胸張っていいと思うよ」

「でも、あれは春日君が……」

「迅はそういう役割なんだから、気に病まないの。レニみたいな剣兵は、敵を確実に仕留めるのが仕事なんだから」

「は、はい……」

 レニと凛奈の会話を聞くともなしに聞きながら、迅はゆっくりとその場に寝転がった。痛みはひどいが、少しだけ晴れやかな気分だ。

(俺の剣は、ヴァニルに通じる)

 確かに博打同然の一撃だったが、それがわかっただけでも大きな意義がある。

 ぼろぼろなのに笑っている迅の表情を見て、凛奈は半眼で睨む。

「……もしかしてと思うけど、俺一人でヴァニルを倒せたー、とか思ってる?」

「まぁな」

「まぁな、じゃないわよ。言っとくけど、今の戦いは――」

「ひどい戦いだったな」

 凛奈の言葉を継ぐように言ったのは、細川の声だった。

 迅は体力を振り絞って上体を起こし、声のほうに向き直った。細川は迅の傍に立ち、嘲弄するような笑みを浮かべている。

 それがなんとなく癪に障って、迅は反論することにした。

「……ランクの低さも、連携訓練をしてないことも、ご存知のはずだと思ってましたが?」

「いや、さっきのはそういう次元じゃなかっただろう」

「どういう意味ですか?」

「わかってないのか?」

 問いに問いで返され、迅は返答に窮する。その様子を見て、細川は嘆息をついてから続ける。

「ならはっきり言おう。さっきの戦い、お前の動きは最悪だったぞ、春日」

 歴戦の剣士の容赦無い一言に、胸に湧いていた自信があっさりと打ち砕かれた。

 迅がショックで言葉を失っている内に、細川は続ける。

「クルーガーの体力が足りないのを知っていながら、弓兵のフォローに戻れないほど前線まで突出。全体がまるで見えておらず、真っ先に敵の攻撃を受けて負傷。戦線が崩れたにも関わらず、後退して体勢を立て直すでもなく戦闘を続行……司令塔として誇れる仕事を、なにかひとつでもしたか?」

「そ、れは……」

 立て続けに事実を突きつけられ、反論の言葉を完全に失う。

 無言でうなだれていると、細川は苦笑を漏らしてからフォローしてくる。

「まぁ、自覚できたのならいい。次はちゃんとすることだ」

「……はい」

 迅の答えを確認してから、細川は満足気にうなずいた。「担架を呼んでくる」とだけ言い残して、携帯端末を操作しながら去っていく。

 その後ろ姿をしばらく眺めてから、迅は凛奈とレニに向き直り、頭を下げた。

「二人とも、すまない」

「ちょ、ちょっと、やめてよ! ケガ人なんだから、とにかく今は寝てなさいって」

「そ、そうですよ。ケガが悪化しちゃいますっ」

「いや、けじめはつけさせてくれ。細川先生の言った通りだ。俺がもっとちゃんとしてれば、二人を危険に晒すこともなかった」

「それはわかったから、もう大人しくしてなさいって」

「……本当に、すまない」

 凛奈に押し留められ、迅は再び仰向けに寝転がった。勲章のようにすら感じていた傷の痛みが、今はどこか戒めのように感じられる。

 一転して沈んだ気分になってしまった迅を気遣ってか、二人が声をかけてくる。

「……まぁ、あのケガで諦めずに戦ったのは、素直にすごいと思うよ」

「そ、そうです。また、守ってもらっちゃいましたし……」

 それに答えず、迅はぼうっと空を見上げる。

 訓練を積んで、強くなったつもりだった。

 だが、実際にはヴァニルを斬ることばかり考えていて、周りのことをちゃんと考えることができていなかった。

(Eランクの上に、まともにチームプレイもできないなんて、ホントどん底なんだな。俺は……)

 医務室からの担架が運ばれてくるまで、迅は暗い気持ちで空を見上げていた。

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