10.
疑問はあまりにも多くて、タカオは何から手をつけていいのかすら分からなかった。森を守るべき精霊が町を攻撃した理由は分からない。それに並行してあった精霊殺しの噂。
精霊に攻撃された町の者のために建てられた移住施設。精霊に攻撃された理由を、知っている者がいてもおかしくない。それとも、これから会う水の精霊に聞いてみるか。
タカオはそこまで考えると、馬鹿らしくなって考えるのを止めた。水の精霊に会ったら、まずは自分の命を守るほうが大切だからだ。そしてまた、タカオは新たな疑問にぶつかった。
何故、グリフは町へは寄らず、水の精霊に会いに行くと突然言ったのだろうか。何を急いでいるのだろうか、と。
「森の歴史はコダに聞けばもっと分かる。俺はもうずっと、森へは関わっていないんだ」
グリフはそう言って立ち上がると、ジェフは苦い顔をして呟いていた。
「コダかぁ……」
やはり、グレイス・コダはジェフにとって、苦手な存在らしい。
「ここが目的地だ」
グリフが指をさした場所には、光に透けて浮き上がった文字が書かれていた。その近くにはタカオ達のいる一本道が描かれているが、その目的地に続く道は記されていなかった。
「ここが精霊がいるはずの場所だが……道がない」
グリフは辺りを見渡しながら、ぶつぶつと1人で呟いていた。隣ではジェフが空腹の為に元気を失っていた。タカオはさすがに可哀想になり、グリフが道を探している間、何か食べるものを探す事にした。
タカオが立ち上がろうと地面に手をついた時、地面が湿っている事に気がついた。不思議に思って反対の手の方も触ってみるが、地面は乾いていた。
タカオがもう一度湿った地面を見ると、今度は一筋の水が流れていた。流れてきた水はタカオが置いた手の辺りで、まるで吸収されるようにそこで消えた。
どこから流れてきているのだろうとタカオは思うと、その水の流れを追い森の中へ入って行った。水は森の急斜面をゆっくりと蛇行するように流れていた。もしかしたらウェンディーネが呼んでいるのだろうか。
タカオはそう思いながら時々後ろを気にしながら急斜面を上がって行く。誰もタカオが森に入った事には気がついていないようだった。
しばらく水の流れを追うと、大きな木に辿り着いた。木には桃のような果実が実り、瑞々しい甘い香りが辺りを漂っていた。けれど、桃の木にしては恐ろしいほど大きな木だった。
「これならジェフも喜ぶな」
タカオはそう呟いたけれど、その実までは手は届きそうになかった。仕方なく、その辺りにあった大きめの石を掴むと、枝ごと落とそうと思った。
石を持つ手に力を入れ、投げようと振りかぶると、木は静かに動きを止めた。まるで身構えるように、ぴたりと枝の先、葉の先端を止めた。
タカオはそれに気がつくと、石を持った手を戻し、しばらく木を見つめていた。木はしばらくの間、動きを止めていたけれど、タカオが石を地面に戻すと再び風にあわせて葉や枝を揺らした。




