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契約の森 精霊の瞳を持つ者  作者: thruu
契約の森
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7.

 グリフの足音は聞こえなかった。けれど剣は石の床を引きずり、その剣先には火花が散った。背を低くして、飛ぶように走る。金属が擦れる神経質な音がサラに向かっていた。


 グリフがサラに切りかかろうと剣が床を離れる。最後の火花が散った後、剣は滑らかにあたりの空気を切った。それはまるで、鳥が羽の角度を変える時のように鮮やかだった。


ーーこれじゃあ、サラは避けることはできないはずだ。


 タカオはそう思っていた。けれどサラはそのグリフを目の端で見ながら、体を素早く動かす。次の瞬間にはサラの頑丈な尾で払いのけられ、グリフは倉庫の柱に叩きつけられていた。倉庫が揺れ、柱が鈍く反響して音を響かせる。


 タカオには何があったのか見えもしなかった。分かったことといえば、グリフが怪我をしたことくらいだった。


 サラはその漆黒の瞳をグリフへ向けて、ゆっくりと近づいて行く。グリフはサラの赤黒い炎を前にして、壁に叩きつけられた衝撃のせいで起き上がるのもやっとだ。


「グリフ……サラ……」


 どうすればサラを止められるのだろうか。どうすればグリフを助けられるのだろうか。タカオは恐怖で動けもせず、そんなことを考えるだけだった。


 サラは赤黒い炎を体中から放ちながら、グリフへ近づいて行く。正気を失ったサラに立ち向かうなんて命を投げ出すのと同じだった。けれど今、グリフはそのサラの前にいるのだ。


「タカオーーー!!」


そこへ突然、ジェフがタカオを呼ぶ声が響いた。


 声の方にタカオが目をやると、倉庫の入り口にいる男達の間をすり抜けて、ジェフが泣き顔で走って来た。

 何人かがジェフを止めようと手を伸ばしたが、遅かった。


 ジェフがどうして泣いているのかはタカオは分からないが、ジェフは脇目もふらずに向かっていた。そして、タカオはわけも分からずジェフを受け止めた。それと同時に、サラの関心はタカオとジェフになった。


 サラは体をグリフに向けたまま、目だけをタカオとジェフに向けて焦点を合わせている。


 ジェフは男達の間を抜けて、走り寄るまでこの状況が分からなかったようだ。サラに気が付いた時、ジェフは息を飲んでタカオにしがみついた。声など失ってしまったかのようにジェフは固く口を結んでいた。ジェフの抱く恐怖が、タカオにも伝わった。



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