第14.5話:仕入れ構造の改革と、異世界流通の裏帳簿
内容の整合性を取るため前話の一部を訂正しました。
ギルドのアルド副ギルド長を訪ねる前夜。俺は宿の机で、仕入れと食材調達の「根本的な仕組み」をノートに書き出し、現状分析を行っていた。
「これまで通り市場で買い漁るだけでは、絶対に頭打ちになる。まずはこの世界における『食材の供給源』を整理し直さなきゃダメだ」
飲食店経営にとって、仕入れ値と供給の安定性は命。
この世界における「食材がどこから来るのか」という流通ルートは、地球のそれとは大きく異なっていた。
【異世界食材の調達方法・3つのルート】
1. 養殖・栽培ルート(安定・高単価)
対象: ルークねぎ、小麦、安価な家畜
仕組み: 街近郊の契約農家が栽培・飼育し、商業ギルド経由で市場に卸される。
課題: だが、砂肝やレバーといった内臓部位は、この世界では「まともな調理法がない、生臭い廃棄部位」扱い。
解体業者はわざわざ綺麗に洗浄・保管して出荷する手間を嫌い、そのほとんどを解体した時点でその場で廃棄処分にしている。そのため、俺が「もっと大量に仕入れたい」と思っても、市場(小売り)にはそもそも商品として並ばない。
2. 冒険者の討伐(魔物肉)ルート(不安定・安価〜高価値)
対象: オークのバラ肉、ワイルドボアなど
仕組み: 冒険者ギルドに登録された冒険者たちが、街の周辺で狩ってきた魔物の死骸をギルドが買い取り、解体ギルドが解体して流通させる。
課題: 獲物の捕獲量が「冒険者の気まぐれや季節」に完全に左右されるため、供給が極めて不安定。
【直近2日間の収支】
仕入れが追いつかず、売り切れ(機会損失)が多発したものの、ビールと砂肝のコンボは依然として驚異的な数字を叩き出していた。
売上:大銅貨54枚、銅貨20枚(約5万6,000円相当)
※砂肝とレバーが早い時間で完売してしまったため、前日より売上微減。
必要経費(仕入れ):
ホーンチキンモモ肉・オークバラ肉:大銅貨12枚(約1万2,000円)
麦酒追加2樽:大銅貨10枚(約1万円)
野菜、雑費:大銅貨3枚(約3,000円)
利益:約3万1,000円(利益率 約55%)
【現在の総資産】
現金手元:金貨1枚、大銅貨70枚、銅貨130枚(約28万3,000円相当)
※開業初期に比べて、キャッシュフローは完全に黄金期。資金面での不安は一切ない。
「……なるほどな。砂肝やレバーは『人気すぎて足りない』んじゃない。誰も食べないから、解体されたそばからゴミとして捨てられてるんだ」
ホーンチキン自体は、街の近郊で大量に養殖されている。肉自体の供給量は十分に足りているのだ。
しかし、内臓系は「まともな調理法がなく、下処理も面倒で生臭い廃棄部位」という扱い。解体ギルドの職人たちは、わざわざ手間をかけて洗浄・保存して出荷するくらいなら、その場で捨ててしまった方が早いと考えている。
だからこそ、市場にはそもそも商品として流通しておらず、俺が個人でかき集めようとしても物理的な限界(機会損失)が生まれていた。
「だったら、話は早い。取るべき戦略は2つだ」
1. 解体ギルドとの『廃棄部位の一括買い取り契約』
アルド副ギルド長を仲介にして、解体ギルドの上層部に直接掛け合う。
彼らにとってただの「ゴミ(廃棄物)」であり、処分にもコストや手間がかかっている砂肝とレバー。これを、「俺が毎日、適正な価格で全量買い取る。その代わり、解体時にきちんと洗浄し、痛まないように保管した状態で納品してくれ」という提案だ。
解体ギルドにとっては、捨てるはずのゴミが確実にお金(利益)に変わるのだから、断る理由がどこにもない。
2. 冒険者ギルドへの『オーク肉の指名依頼(直接仕入れ)』
供給が不安定なオークのバラ肉は、冒険者ギルドに「オーク肉を指定量納品する」という常設の指名依頼を出す。
これによって、特定の腕利き中堅冒険者たちと直接繋がり、市場を通さずに安定した仕入れルートを確保する。
「資金はある。公爵家の看板もある。そして、向こうにとっては『捨てるはずのものを買い取る』という、ノーリスクで利益しか出ない話だ……」
ただ頭を下げて売ってもらうのではない。お互いのボトルネックを解消し、双方に利益を生み出す「Win-Win」の構造を作る。これぞ前世で培った営業の基本だ。
「よし、提案書は完璧にまとまった」
俺はインクの乾いたノートをパタンと閉じ、明日からの交渉に胸を躍らせながら、心地よい達成感とともにベッドに潜り込んだ。
仕入れルートの構造改革――異世界の流通に、現代のビジネスロジックで風穴を開けてやる。
8話でアホすぎるミスをしていたので一部を削除しました。
再発防止に努めます。




