1_【第一話】純潔の水魔導師
魔導銃の使い手 第二部 純潔の水魔導師
魔導王国イオシスには、一つの通説があった。水の眷属についてのものである。麗しき青き髪と、藍の瞳をもつ、心優しく豊かなる眷属。されど、彼らにはやや困った性質があった。色恋沙汰に極度に揺らぎやすいのである。ゆえに水の眷属の男女は容姿端麗才気煥発なれど、なかなかに縁組がむつかしいとのことである。
しかし、ここに妙な性質を持った水の娘がおりまして。
名を、マーメルク=ジャヴァというのです。
1_【第一話】純潔の水魔導師
さてところはイオシス王国北方地帯。アルドレーダ山脈の南麓に広がる、水源都市ブラウガルド。国内をめぐる水のうち、良質な生活用水や魔導工学素材となる霊水の類の国内最大産地ということになります。
まあ当然と申しますか、何と言いますか。水に価値に目がくらんだ水盗賊なども、残念ながら世の中には存在をいたしますわけで。
国内最大内治安部隊、水魔導師団の常設駐留地でもあるわけです。
そんなブラウガルドで、水魔導師団長リューディオ=アートドラゴン公爵の指揮下にて、最大で第十分隊、一分隊当たり1000人の構成員を持つ彼の魔導師団は日々の訓練を重ね、国内治安を確たるものにしているというわけです。
その、第三分隊。分隊長ネムレム=アートドラゴンという、姓から察せることそのままの、公爵リューディオの妻である司令官もいるわけでして……。
「はいはいはーい、みんな頑張ってるねぇ! 妾は感心してしまうわ嬉しいねえ♪ うちの分隊の子たちはみんないい子だよ全く。遊びたい盛りの若い子だって多いのに、本当にみんなまじめにやってるじゃないかさ」
えっと、わたし、マーメルクといいます。フルネームは、マーメルク=ジャヴァです。現在の私は、水魔導段位四段をもつ、中級水魔導師で。それでも国内のハイエリート集団である、水魔導師団の団員たる栄誉を享受している、19歳の女です。
「はー、やっば!! ネムレム姐さまやっばいわー!! なんであんだけアクアバイパー連発して息上がらないのよ! 七段水魔導師、国内最高ヒーラーこと【白慈雨の癒し手】の異名もつひとってやぱバケモンだわ。ねー、マメちゃん? そう思えわなーい?」
さてっと、訓練が終わった後。私マーメルクは第三分隊女子寮で同室が割り当てられている、仲のいい同僚であるミアリーエンと。イカの燻製カジカジしながら、清酒の『尚遠し浄土』という、ちょい良いお酒をひっかけていて。外はもう暗くなって結構経っています。お晩です。
「そーねー、ミア。ネムレム様ねー。あの方、大変よね。見ててわかるわよ?」
「おっとん? なんでよ? 恵まれすぎじゃん、ネムレム様って。水魔導センスばっちり、頭いい、気も強いけど砕けてるし。なんつってもあの妖艶な美貌よ! うちらのトップのリューディオ公が、浮気の修羅なのに別れ話出たことないじゃんよ!!」
「まあ、あれっしょーねえ。リューディオ様って、変態グルグルさんって噂あっても。おデブ49歳で身長194㎝の怪物でも。ネムレム様にはヘンに惚れてるって聞くよー? その感情って浮気とは別次元なんじゃんの?」
「何をおっしゃるヴァージンゲイル! えちえちしたことないあんたにゃわからんわよマメッチ!!」
「ぬふー!! いいさぁ!! 興味はあるけど! ぐおおおお!! ってくる男子ちゃんに会ったことないんだもん!! なきゅー!! 私の初恋いつになるのかなぁ?」
「は? なぁにおおおお?! 第五分隊のクッカーシャ君が告った言ってたけどさ? あれちゃうの?」
「んにゃ、告られたよ」
「は? アレはイケメンやん? あんた何しとんねん? なんでつきあっとらへんや?」
「ちゃうかんじーさ。ちがうのよねー。アレ真の愛じゃないもーん!!」
「でたぁ!! マメッチ病!! トゥルーラヴシンドローム!! まあいわゆる、ハイミスに至る病ね!!」
「ぶぶーぅ! しっつれーいぃ!!」
「……とまあ、からかうのはこれくらいでさ」
「ん?」
「マメ、あんたまさかさ?」
「ぬう?」
「自分の値段釣りあげて、リューディオレディスの一人になろうなんて考えてない?」
「うわぁ!! ないないないないないない!! うわああああああああ!!」
「あはっ。その反応やっべ! うちの団長嫌いなん? マメはさ?」
「いや……。きもいだけ」
「あんた……むっごい」
さて、ブラウガルドの夜は更け。酔っ払い女子二人は寝たようです。明日はどっちだ!!
1話 END




