第476話 お神輿レース
特製かき氷を食べ終わったタイミングで、何やら外が騒がしくなってきた。
行列も解消されたし、騒がしくなることはないと思うんだけど……。
不思議に思いながら、別荘から外を見てみると、可愛らしい大きなライムの姿が見えた。
どうやらお神輿が始まったことで、外がざわつき始めていたようだ。
「佐藤さん、何の盛り上がりでしたか?」
「どうやらお神輿が来たみたいです。私たちも行ってみますか?」
「ちょうどかき氷も食べ終わったところですし、行ってみましょう!」
「でしたら、お店は私に任せてください。佐藤様のいない間、この場を守ってみせます」
執事がするようなお辞儀をしながら、そう言ってくれたヴェレスさん。
お神輿に集中するから問題なく回せるだろうし、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。
「ありがとうございます。帰ってきたら、また特製かき氷を作ってあげますね」
「ほ、本当ですか!? ありがたき幸せです! 一生の忠誠を誓わせていただきます!」
めちゃくちゃ重いセリフを言っているヴェレスさんをスルーしつつ、私たちはお神輿のところへと急いだ。
今日は三台のお神輿が担がれてやってきており、子どもたちは目をキラキラさせながら興奮した様子を見せてくれている。
「ライムだけでなく、マッシュもモージも可愛いですね!」
「ですね。上下に揺れているのも生きているみたいで、すごくいいです」
みんなの注目を浴びる中、三台のお神輿はゆっくりと広場を回った。
これだけでお祭りの盛り上がりに一役買ってくれているんだけど、本番はここから始まる。
「これからお神輿レースが始まるよ。さあ、どのお神輿が一番最初にゴールするか予想してくれ」
運営本部からやってきたサムさんが、拡声器を使ってそんな説明をしだした。
レースの概要は知らなかったけど、どうやら四人一組でレースを行うらしい。
お神輿を担いで走るのは、昨日も協力してくれた強面集団であり、遊びだとしても負けたくないという気持ちが伝わってくる。
そして、予想の仕方は簡単で、勝つと思うお神輿の後ろに並ぶだけ。
ちゃんと紐で区切られており、不正ができないようにもなっている。
有料にしたこともあり、ちゃんとした賞品が出るってサムさんも言ってたもんな。
「佐藤さん、私たちも予想しましょう」
「いいですね。無難に速そうなのは……モージのお神輿ですかね? アールジャックさんにフリートさんがいますよ」
「私はマッシュのお神輿が速いと思いました。ドレイクさんとワルフさんは強力だと思います」
確かに、龍人族と獣人族の中でもフィジカルエリートの二人がいるのか。
触れられていないライムのお神輿にも、ドニーさんとルーアさんがいる。
これはちゃんとバランスが考えられている気がしてきた。
悩んだ末、結局私はモージのお神輿の後ろに並び、シーラさんはマッシュのお神輿の後ろに並んだ。
そして、ポーシャさんとロイスさんは、ルーアさんを応援しているのか、ライムのお神輿の後ろに並んだ。
私たちの予想も終えたところで、どうやらレースがスタートするみたい。
「それではお神輿レースを開始する。参加者のみんなに伝えておくが、お神輿を落としたらペナルティがあるから気をつけてくれ。それでは――スタート」
サムさんのスタートの合図と共に、お神輿が駆け出した。
先ほどまでの可愛い感じはなく、激しく揺られながら走るお神輿に、何故か見ている方も熱くなってくる。
予想したこともあってか、自然と応援の声も出てしまっているからね。
他のお客さんも声を出して応援してくれており、予想以上の大盛り上がりを見せている。
「今のところのトップはモージ神輿。その真後ろにつけているのがマッシュ神輿だ」
サムさんが実況もしてくれており、かなりのデッドヒートが繰り広げられている様子。
ライム神輿だけは少し離されており、優勝争いからは脱落してしまったかもしれない。
「順位は変わらぬまま、最後の泥エリアに突入。ここでマッシュ神輿がトップのモージ神輿を捉えたぞ。このまま一着でゴー……おっと、物凄い勢いで追い込んできたのはライム神輿! これは大まくりで差し切ったか?」
どちらが勝ったのか分からないのか、サムさんの実況が止まってしまった。
判断はゴール地点で見ていたロッゾさんに託されており――そして、白い旗が振り上げられた。
「泥エリアで力を残していたライム神輿が捉えたようだ。優勝はライム神輿!」
「「「おおー!!!」」」
どちらが勝ったのかが分かるまでは静寂が流れており、ライム神輿の勝利が宣言された瞬間、拍手喝采の歓声が上がった。
模擬戦大会の決勝戦並みに盛り上がっており、さすがにここまでの盛り上がりは予想していなかった。
レース形式にしたのは正解だったし、お神輿を可愛くポップにしたのも正解だった。
そして何より、遊びにもかかわらず、本気で走ってくれた皆に感謝しかない。





