第463話 処遇
リザードマンたちは、助けを求めるような目で私を見てきている。
死を宣告されたら、そのまま受け入れてしまいそうなほど、ドラゴン姿のヤトさんに怯えきっていた。
リザードマンとドラゴンは何となく似ている感じがあるし、一種の龍人族のように思っている可能性がある。
もしかしたら、本能的に敵わない存在だと認めているのかもしれない。
「とりあえず……リザードマンたちには、巨人族の村へ来てもらいましょう。そこでどうするか決めたいと思います」
「佐藤さんがそう決めたのなら異論はねぇぜ! お前ら、村へ帰るぞ!」
「「「おおー!!!」」」
巨人族の方々の雄たけびを聞きながら、私たちは戦意を喪失しているリザードマンたちを連れ、巨人族の村へ戻ることにした。
本当ならこの場で処遇を決めた方がよかったんだろうけど、考えなしで動いたこともあって、まだ何も案が浮かんでいないんだよね。
「ヤトさんの姿に怯えているようですね。以前、ヤトさんが止めに入ろうとした時は話も通じず、いきなり襲いかかってきたと言っていましたが、本当ですか?」
「本当なのじゃ! わらわがわざわざ足を運んだのに、いきなり襲われたのじゃ!」
「それにしては、ヤトさんを心から恐れているように見えますけどね」
「わらわじゃなく、佐藤に怯えているのじゃ! 争いを止めた時はかっこよかったからの!」
「褒めてくださり、ありがとうございます」
今回は戦況的に劣勢だったこともあり、ヤトさんの助太刀で心が折れてしまったという可能性はある。
ただ、それにしても怯えすぎているからね。
もしかしたらだけど、仲裁に行った時は人型の状態だったんじゃないだろうか?
「ちなみにですが、前回争いを止めに行った時は、ドラゴンの姿だったんですか?」
「うぬ? ……覚えておらんが、多分ドラゴンの姿だったような?」
「人型の状態だったから、怯えずに襲いかかってきたんじゃないですかね?」
「まぁどちらでもいいのじゃ! こうして今回は無事に争いを止められたのじゃからな!」
わっはっはと大声で笑っているドラゴン姿のヤトさん。
だいぶ話が変わってくるような気もするけど、深掘りしても多分思い出せないだろう。
「まぁそうですね。あっ……そういえば、リザードマンの方々って言語を扱えるんですか?」
「喋れないと思うのじゃ! わらわが話しかけても、無視して攻撃してきたからな!」
「喋れないとなると、少し厄介ですね。確かめるために、ちょっと話しかけてみます」
私は最後方を歩くヤトさんから離れ、列の真ん中で捕まっているリザードマンに話しかけに行くことにした。
野蛮で話も通じないとは聞いていたけど、話が通じないだけで、言語自体は理解できるんじゃないかと密かに思っている。
場を収めようとした時、私の言葉を理解したタイミングで武器を捨てていたしね。
雰囲気を感じ取っただけの可能性もあるけど、言語は理解できるんじゃないかと思っている。
「すみません。ちょっといいですか?」
縛られているリザードマンのリーダーらしき人物に声をかけてみた。
黒いウロコで覆われた、龍人族をトカゲっぽくしたような見た目の方。
全身は傷だらけで、ところどころウロコも剥がれている痛々しい姿なんだけど、筋骨隆々な体つきなこともあって、逆にいかつく見える。
背中に一切傷がないのも、某海賊漫画の剣士のようでかっこいい。
「リザードマンは言葉を理解できるのでしょうか?」
「………………ああ。喋れる」
かなり間があったため、てっきり喋れないのかもしれないと思ったけど、がなり声で返事をしてくれたリザードマンのリーダー。
がなり声ではあるんだけど、声は思っていた以上に高い。
「言葉を理解できるだけでなく、喋れたんですね。はじめまして、私は佐藤と言います。あなたのお名前は何ですか?」
「俺はジャバル。サトー、助けてくれて感謝する」
「ジャバルさんですね。他の方々も喋れるんでしょうか?」
「言葉を理解できるものはいるが、喋れるものは少ない。俺たちは特殊な音で会話をする」
そう言うと、声帯を震わせ、モスキート音のようなものを発したジャバルさん。
リザードマンには、言葉は必要ないということか。
「そうなんですね。ジャバルさんは、なんで喋れるんですか?」
「……サトーは変なことを気にするな。俺の師匠が人間だったからだ。旅をしていた冒険者で、色々と教わった。その時に言葉も教えてもらった」
「ジャバルさんは人間とも交流があったんですか。……なら、手立てがあるかもしれません。色々と教えてくださり、ありがとうございました。また後でお話を聞かせてください」
光明を見いだした私は、ジャバルさんと別れてヤトさんのところへと戻ってきた。
リーダーであるジャバルさんが人間と交流があったのであれば、いくらでもやりようがあると思う。
私はてっきり、魔物に近い存在なのかと思っていたからね。
「おー! 佐藤、どうじゃったのじゃ?」
「リーダーの方は問題なく喋れましたよ。それに、人間とも交流があったみたいです」
「そうなのか? わらわがリザードマンの村に行った時は、人間の気配は一切感じなかったのじゃ!」
「もしかしたら、ジャバルさんだけが交流していた可能性はあります。とはいえ、リーダーの方が交流していた過去があるのは大きいです」
「何か思いついたという顔じゃな!」
「ヤトさんも、私の表情で分かるようになったんですか?」
「佐藤は分かりやすいからの!」
またしても、わっはっはという大きな声で笑ったヤトさん。
ヤトさんが笑うたびに、怯えた様子でこちらを振り向くリザードマンたちに申し訳ない気持ちになっていると、前方に巨人族の村が見えてきたのだった。





