#98 アリスの悲劇②[侵犯街道]
前回までのあらすじ
母へのプレゼント選び
ガーベラ「・・・じゃあ、アリスちゃんのお母さんの誕生日までライトリリーは保管しておくから、また取りにきなよ」
アリス「はい、それでは失礼します!」
アリス(・・・ガーベラさん、やっぱりいい人だなぁ。6000Gのお花をタダで売ってくれるなんて・・・これが、無償の愛!)
アリス「私もいつか、あんな優しくて格好いい大人になりたいなぁ・・・」
???「お嬢さん」
アリス「えっ、はい?」
???「ひとつ聞きたいのだが、この街に教会はあるかい?」
アリス「・・・え、あぁはい。西のほうに、ありますが」
???「そうか。ありがとう、お嬢さん」
アリス「はい、では失礼します・・・」
アリス(見たことのない男の人・・・ミースギナの外から来た人かな?)
???「あぁ、すまないお嬢さん」
アリス「?」
???「君の名前を聞かせてもらえないか?」
アリス「・・・どうしてですか?」
???「君は私に教会の場所を教えてくれた恩人だからさ。いつか君に恩返しする時、名前を知っていれば不自由しないだろう?」
アリス「まぁ、そうですね。アリスです。アリス・フォン・レフィルリガート・・・」
???「アリスか・・・うん、いい名だね」
アリス「はい、母がつけてくれた名前です」
???「そうか。君の母君は、きっと君と同じように優しいんだろうね・・・って」
???「すまない、人に名前を聞いておいて、自分の名前を名乗っていなかったよ」
マーシャ「私はマーシャ。グロステリア・マーシャだ」
アリス「マーシャさん、ですか・・・」
マーシャ「あぁ。それでは失礼するよ、アリス」
マーシャ「君の内なる神に、永久の幸福を―――」
アリスが謎の男・マーシャと出会ってから1週間が経ったある日、マーシャ信者を10数名ほど率いて、再びミースギナにやって来た。
そしてマーシャは、広場に集まった同じく10数名のミースギナの人々の前でこう言った
「私はグロステリア・マーシャ。『パイル教』という小さな教団の司祭です。我々がこのミースギナにやってきた理由としてはただ1つ。皆さんの幸福と大いなる安寧のためです。しかし私は、皆さんから何かを要求することは一切ありません。いわば、無償の愛。皆さんのために、私はここで祈りを捧げ続ける思いでございます―――」
パイル教団の司祭・マーシャの演説は、民衆の数に反するほどのの小さな拍手に包まれた。急にやって来た胡散臭い集団の小言を鵜呑みにするほど、ミースギナの人々は脳天気ではなかったのだ。
マーシャの演説を聞いた人々は彼に対し、少なからず『怪しい』というレッテルを貼った。にも関わらず、それからわずか数日でミースギナの住民は、マーシャを慕うようになり、パイル教の信者と成り果てることになる・・・
マーシャ教団の来訪から3日後の正午
アリスの家・自室
アリス「ゴホッ、ゴホッ・・・」
ミレイユ(アリスの母)「大丈夫、アリス?」
アリス「・・・元気ではありませんが、大丈夫です」
ミレイユ「そう、よかった。熱も3日前より下がっているようだし、もうすぐ治るかしらね」
アリス「はい。だからお母さんも、私の看病はもう大丈夫なので、お仕事に行ってきてください」
ミレイユ「でも・・・」
アリス「心配いりません。お父さんももうじきパチンコから帰ってくると思いますし。それにお母さん、最近ずっと私の看病ばかりで、ろくに外出もしていないじゃないですか。たまには外の空気を吸うのも大事ですよ」
ミレイユ(アリス・・・まったくこの子ったら、なんて良い子なのかしら!)
ミレイユ「・・・そうね、じゃあ行ってくるわ。くれぐれも、安静にしてるのよ」
アリス「はい、行ってらっしゃい」
ミレイユ「・・・っ!?」
アリス「ん、どうかしましたか?」
ミレイユ「う、ううん・・・なんでもないわ」
アリス「そうですか」
ミレイユ「・・・」
ミレイユ(最近、よく不安な思いが胸に刺さる・・・風邪をひいたアリスのことが心配・・・それもある。でもそれよりもっと、私を不安にさせる『何か』があるような・・・)
ジーク「・・・ただいま」
ミレイユ「あら、おかえりなさいあなた。今日は勝てたの?」
ジーク「勝てた・・・何がだよ?」
ミレイユ「いえ・・・なんでもないわ、ごめんなさい」
ミレイユ(このテンション低さ、きっと負けたんでしょうね)
ジーク「・・・」
ミレイユ「あぁ、今から私ちょっと仕事に行ってくるから、アリスのこと看ておいてほしいの。お願いね?」
ジーク「ああ」
ミレイユ「それじゃ・・・」
ミレイユ「・・・まったく、3日連続で負けてる。もう才能ないからやめたほうがいいんじゃないかしら、パチンコ」
ミレイユ「・・・」
ミレイユ(でも、パチンコに負けたにしては、ちょっと機嫌が悪すぎるような気もするし、暗すぎる気もする。たしかにあの人は、パチンコに行ってはよく負ける。でも帰ってきたら―――)
ジーク『ただいま~!!今日も負けちったぁぁぁ!!!!』
ミレイユ(―――って脳天気に報告してくる。でも今日は、そうじゃなかった。いや、今にして思えば、昨日も一昨日もそうじゃなかったのかもしれない・・・)
ミレイユ(いかんせん、最近のあの人には違和感がある。まるで、精気でも奪われたような・・・これが不安の正体?)
ミレイユ「・・・あ、ナタ-リアさん!」
ナタ-リア(リーリカの母)「・・・」
ミレイユ(あれ、気付いてない?)
ミレイユ「ナタ-リアさん!」
ナタ-リア「・・・っ。あら、ミレイユさんじゃない。最近見かけなかったけど、何してたの?」
ミレイユ「え、あぁ。娘のアリスが風邪で寝込んでしまって、ずっと看病してたんです」
ナタ-リア「ふ~ん・・・そう、お大事にね」
ミレイユ「は、はい。ありがとうございます。それでは・・・」
ナタ-リア「・・・」
ミレイユ(いつもは気さくな人なのに・・・今日はどこか冷たかったような気がする。機嫌が悪かったような・・・まるでさっきの夫のように―――)
マーシャ「こんにちは(ミレイユの肩を叩く)」
ミレイユ「・・・っ!?」
マーシャ「おっと、驚かせてしまったようだ。申し訳ない」
ミレイユ「い、いえ・・・。って、誰ですかあなた?」
マーシャ「やはり、お初にお目にかかるようで・・・初めまして、私はグロステリア・マーシャ。最近この街にやって来た、しがない司教です」
ミレイユ「最近やって来た・・・?」
マーシャ「えぇ、つい3日前です」
ミレイユ(3日前・・・まさか!)
マーシャ「ところで、君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」
ミレイユ「ご、ごめんなさい。失礼します・・・!」
マーシャ「待ちなさい(ミレイユの肩を掴む)」
ミレイユ「ぐっ!?」
マーシャ「私は名乗ったのだから、君も名乗らないと公平じゃない。この世界において、私も君も平等な存在。平等だからこそ、一方的な名乗りはこの世の理から外れる愚かな行為だ」
ミレイユ「は、離してください!」
マーシャ「いいや離さない。いいから私の目を見ろ。そして名を名乗れ・・・!!」
ミレイユ「・・・あなた、この街の人たちに何をしたの!?」
マーシャ(・・・)
マーシャ「何をって?」
ミレイユ「とぼけないで!なるほど、最近感じる不安の正体はあなただったのね・・・ナタ-リアさんに、私の夫に何をしたの!?」
マーシャ「黙れ(手套)」
ミレイユ「うっ・・・!(気絶)」
マーシャ「・・・」
マーシャ「まったく、厄介な女だ。しかし勘がいい。生かしておくのは危険だが、だからこそ活かさないわけにはいかないな・・・」
その日の夜、アリスのもとに母・ミレイユが戻ってくることはなかった。
勘のいいガキは嫌いだよ




