#42 発見、アウトローな地下事情!
聖都グロリア 地下闘技場
???「ここは・・・地下闘技場だよ・・・」
ユイ「誰だこのモブくせぇ男は、マリアの知り合いか?」
マリア「存じ上げませんわこんなモブ。さしずめ、隙あらば登場しようとする自己顕示欲の塊といったところですわね」
???「・・・そこまで言わなくても。たしかに隙あらば出てきた感はあるけど、俺は君たちにここを案内してあげようとしている心優しい青年なんだぞ」
ユイ「そうか、じゃあ教えてみろ。有益な情報じゃなかったらお前の四肢はないと思え」
???「リスク重すぎない!?」
マリア「世の中はリスクで満ちあふれていますのよ」
???「はいはい、分かったよ。ま、無益な情報ではないと思うから大丈夫だと思うけど・・・」
???「あ、自己紹介がまだだったね。俺の名前はモブリット・レイナー、モブって呼んでくれ!」
ユイ「結局モブなんじゃねぇか」
マリア「今後ただのモブが出てくるたびにこっちのモブがいちいち連想されてなんだか腹立たしいですわね」
モブ「大丈夫、案内が終わったら二度と出てこないから忘れてしまっても構わないよ!」
ユイ「すごい元気に悲しいこと言うなぁお前」
モブ「この地下闘技場、通称『アンダーワールド』は強者たちが集う決闘の場だ。聖都の外からやってくる者も多く存在する!毎日トーナメント形式で試合が展開されていき、優勝者には多大な賞金が贈呈されるんだ!」
ユイ「そのトーナメントに参加するやつは、要するに金目的ってことか?」
モブ「ほぼ正解だね、だが金だけじゃない。優勝者には賞金と、もう1つ『挑戦権』が与えられるんだ」
マリア「挑戦権・・・、一体なんの?」
モブ「チャンピオンに挑戦する権利だ」
モブ「チャンピオンとの試合はいわばエキシビションマッチ、最悪挑戦しなくてもいいんだが、その場合は獲得できる賞金が10分の1にまで減少してしまう。だから、挑戦権を放棄するヤツなんてほとんどいない」
モブ「で、このチャンピオンに勝利した場合、その者がチャンピオンを継承することになる」
モブ「チャンピオンを継承するとはすなわち、チャンピオンの持つ全ての権利を継承することなり!財産権や所有権・・・新たなチャンピオンは前チャンピオンの全てを剥奪するのだ!!」
ユイ「・・・なるほど、話が見えてきた」
モブ「挑戦者たちは皆、手に入れるために戦うんだ。名誉ある最強の称号と、多大なる財産のために!!!」
ユイ「・・・いまのチャンピオン、どんなヤツだ?」
モブ「よくぞ聞いてくれました、累計6人目となるチャンピオンなんだが、現在までで5度防衛しているなかなかの強者だ!名をシャドウ、人はみな彼のことを『日陰者シャドウ』と呼ぶ!」
マリア「・・・」
マリア「・・・ユイさん、今のところ聖都の不穏な現象となんら関係がないような気がするのですが。民が行方不明になっていってるとおっしゃっていましたが、別にこんなところで行方不明になんて・・・」
ユイ「・・・お前なにも知らないんだな、さすがは汚れ知らずの温室お嬢様といったところだな」
マリア「っ、どういうことですの?」
ユイ「モブ、そのチャンピオン・・・シャドウっていったか、そいつは今まで何人殺してきた?」
マリア「えっ、殺す・・・?」
モブ「トーナメント含め、ヤツは戦った相手を躊躇無く全員殺している」
マリア「・・・こ、殺すなんて失格ではありませんの?」
モブ「なに言ってんだお嬢さん、そりゃあ地上にある普通の闘技場のルール。ここは地下闘技場なんだぜ。『治外法権』って知ってるかい?ここでは地上の法律は通じねぇよ、非合法の巣窟さ」
モブ「勝つためなら殺しも許される。だからこそ、挑戦者は闘争本能をむき出しにして戦う。その姿をみて、観客は狂気に沸く。だからこそ金が動く。それがここ、アンダーワールドなのさ」
マリア「・・・」
ユイ「殺すことのペナルティは?」
モブ「ない。ただし試合上はな。殺された選手の仲間が、殺した選手をリング外で逆恨みで殺すことも珍しくはない。わざわざそんな恨みを買う必要もないから、普通の選手は相手を殺すことに積極的じゃないんだが」
モブ「そのシャドウは違ったんだ。あいつはあまりにも強すぎるんだ。逆恨みでシャドウを殺そうとした奴らは返り討ちにあって殺された。不意打ちすらきかなかったらしい。だからこそシャドウは、お構いなく相手を殺せるんだ」
ユイ「・・・分かったかマリア、殺人すら許されるこの領域において、行方不明者が続出するのは特段不思議じゃない。そして現チャンピオンのシャドウ、そいつは恐らく凶魔だ。普通の人間なら、わざわざ恨みを買って殺されるリスクなんて負おうとしないし、なにより躊躇無く殺すってところにピンときた」
マリア「・・・そのシャドウってやつは、どこにいますの?」
モブ「それが、わからないんだ。いつも試合前に突然現れるから・・・」
ユイ「できるだけ人目につかないようにしているということか。さすがは日陰者」
マリア「もし、そのシャドウってやつが凶魔だとして、それを倒すためには試合に出るしかないということですわね」
ユイ「そうなるな」
マリア「モブさん、エントリーはどこでできますの?」
モブ「えっ、なに、もしかして出場する気か!?」
マリア「当然ですわ」
モブ「悪いことはいわない、やめときな。君たちのような華奢な乙女に、あの血に染まったリングは似合わない」
マリア「・・・言いましたわよね、有益な情報でなければ四肢の保証はできないと」
モブ「・・・」
モブ「どうやら、冗談で言っているわけじゃないようだね」
ユイ「なめてもらっては困るな、こちとら伝説の勇者様とともに旅をしているのだ。シャドウだかショドウだか知らないが、雑魚狩りしかできないカスなど私の電撃魔法で完膚なきまでに・・・」
モブ「あ、言っておくけど魔法を使うのは禁止だよ」
ユイ「は?」
モブ「使えるのは大会運営から支給される武器1つだけ。ナイフとかハンマーとか自由に選んで・・・」
ユイ「おかしいだろお前!なんで殺しはよくて魔法はダメなんだよ!!」
モブ「いや~過去に爆裂魔法で会場を半壊させたバカがいたせいで、爆裂魔法はおろか魔法自体使うのを禁止したらしくてね」
ユイ「ちっ、はた迷惑な話だ」
ユイ「・・・というわけでマリア、任せたぞ」
マリア「どうも締まりませんわね・・・」
マリア「しかし、愚かなチャンピオン凶魔はわたくしの手で成敗してやりましてよ!」




