恋の行方
デート当日。僕はカミラの用意が終わるのを待っていた。
女の子の準備はどうしてこうも遅いのだろうか。化粧や服選びにしたってそれほどかかるものでもないと思うのだけど。かれこれ1時間近く経っている。
「カミラ、まだかい?」
「も、もうちょっとっ! まって!」
「はいはい……」
行く前から憂鬱になる。女の人はそういうところに気をつけた方がいいよ。男ってそういう理解に苦しむ行動にゲンナリするものだから。
時間にルーズな人間は嫌われるし。待たされるって行為はそれだけでストレスだからね。
正直、化粧や服装変わったぐらいで相手を好きになるかっていうとそこまでの効果はないと思う。ないとは言わないけど。180度変わる人もいるしね。
でも、普段から一緒にいるならそのありのままの存在が好きなんであって、そういう時だけ張り切られても、男としては困るんだよね。
いつも通りの格好や態度の方が正直、ほっとするし、気が楽。バリバリにキメちゃっている子とか逆にドン引きされるよ、うん。
まあ、女の子側の視点になると男によく見られたいのと、ちっぽけなプライドと、周りの目線が気になるとか。そういったところがあるんだろうけど。
これはあくまでも僕の個人的な考えだけどね。
そんなことを考えていると、カミラの部屋のドアが開いた。
「お、おまたせー……」
「……」
僕は黙ってカミラを見ていた。それが気になったのか、カミラは恥ずかしそうに、
「へ、変じゃないかな……?」
「え、あ、うん。いいと思うよ」
「そ、そう? よかった……」
僕はカミラの格好に驚いていた。服……というよりはその髪型に。
カミラの髪は、いつもの金髪ツインテールではなく、ダークブラウン色のショートボブ……恐らくウィッグをつけていて、髪型を変えたのだろうけど。
服装は黒のショートパンツに、黒ボーダーのニットチュニック。黒タイツに黒ベレーという黒づくし。しかし、よく似合っている。ボーイッシュなカミラにはぴったりといえる。髪型を変えて来たのが最大のポイントだろうなと僕は思った。まさかの不意打ちを受けて先ほどまでの文句も吹き飛んでしまっていた。
いやあ、女って……変わりますね。ハイ。
メイクはナチュラルな感じで、薄いチークに薄いピンクの口紅といったところだろうか。カミラでも化粧とかするんだな……普段、してたっけ? わからないや。気にして見たことなかったし。
対する僕はなんともいえないほぼいつも通りの格好。当然、何のメイクもしていないし、服装もいつもの私服だったりする。変に気を張っても疲れるだけだしね。ラフな格好が一番だよ。
最近じゃ男でもメイクしたり、髪型弄ったりとかしているらしいけど。僕はそういうのはしたいと思わない。自然体が一番だね。本来、人間にそんなものは必要ないと思うし。女の子だってすっぴんでいいと思うよ。うん。
というか、僕には一つの懸念があった。どう見ても、カミラさんの格好はいつもと違う。バリバリに決め込んでいる。……まあ、バリバリってほどではないにしろ、明らかにいつもと違うわけで。
そんな僕らは下に降りていく。店の留守番はジェシーにまかせている。そこには、バイト前のカレンの姿と、ジェシー、ニーナがいた。
その三人は一斉に僕らを見る。
「えーと……ちょっと、カミラと出かけてくるよ」
そう。こんないかにもな格好をしたら、デートだって一発で『バレる』ということだ。だから、普段着にしたっていうのもある。後付だけど。
でも、どうせ後から鉢合わせになったりバレたりするよりは、最初にわかりやすくわかるようにして出かけた方がいいかもしれないな、とも思ったわけで。僕はカミラに特に何も言わなかったのだけど。
「……」
予想に反して彼女たちは何も言わなかった。え、えーと。これはこれで怖いのだけど。
「はっ……い、行ってらっしゃい」
と、ジェシー。驚きすぎて声が出なかったのか……?
「ていうか、カミラさんだったんですね……兄さんが別の女でも連れ込んだのかと思いましたよ」
どんな風に見られているんだ、僕は。こんな白昼堂々、みんながいることもわかっているのにそんなことをするわけがないだろ。いや、いなくてもしませんよ、はい。
「いってらっしゃいませ、マスター」
どうやら、ニーナは付いて来ないようだ……たぶんだけど。まあ、明らかにデートの雰囲気出しているしなあ。そこを考慮したんだろう。
意外にも僕らのデートに文句を言う人はいなかった。そこが不思議でならない。カレンなんて鬼の形相で文句を言うかと思ったのに。
「そ、それじゃ行ってくるよ」
「行ってくるねー!」
カミラは手を振る。僕らは一緒に店のドアを開けた。
■ □ ■
僕らは街路を歩いている。最初はお互いに言葉もなく、淡々と歩いているだけだった。しばらくして、僕が口を開く。別に沈黙に耐えられなかったとかそういうわけじゃない。疑問に思っていることを口にしたかっただけだ。
「しかし、意外だったなぁ……みんなが何も言わないなんて」
「そりゃぁ、デートっていったら女の子の一大イベントだよ? それを邪魔するなんて……ボクだって出来ないよ」
「そんなもんかなぁ……?」
「そうだよ。勝負かかってるんだから。自分が同じ立場だったら、嫌でしょ」
「勝負?」
「えっ! い、いやっ……なんでもないよ!」
「?」
カミラが何を言おうとしたのかよくわからなかったので、聞き返したのだけど教えてはくれなかった。
「勝負パンツもちゃんと履いてきたし……うん。大丈夫……ぶつぶつ」
カミラはその後も何かをぶつぶつと言っていたがよく聞こえなかった。
あれかな。新しいマジックアイテムの構想とか。閃いて、そっちに集中しちゃっているとか。開発者とかによくあるよね。作家とかさ。何か思いつくと、そっちに集中しちゃって話を聞いていなかったりとか。カミラもそんな感じで、よくああやって考え込んでいることがあるし。今回もそうだろうと僕は思っていた。
しかし……改めて見ると、カミラって相当かわいいよな。体もスラっとしていて、まるでモデルのよう。胸は小さいけど。それはそれで。
今回の服装は太いボーダーが入っているから体のラインが微妙に強調されて、スリムさが目立つというか。かわいいし、ちょっとエロイというか。あの黒タイツが特に……。と、ついつい足に目が行ってしまう。
「なになにぃ~? ボクの体に見とれちゃった?」
そんな発言されると、えろい方向にしか脳内変換されないんですけど。
先ほどまで僕がカミラの体を見回して、堪能していたせいもある。
「まぁ……そうかも? いつもと雰囲気も違うし。気になっちゃって」
隠すことでもないので、思ったままに発言してみる。すると、カミラは。
「……えへへ」
満面の笑みで返して来た。なんていうカウンターパンチ。思わず、抱きしめたくなってしまった。しないけど。
「やっぱり、ユークってこういうの好きなんだぁ……そっかそっか」
「うーん。好きといえば、好きだけど。カミラだからっていうのもあると思うよ。似合ってないと、駄目だと思うし」
「……ずるいよ。そんなことばかり言うの」
「え?」
「ううん、なんでもない。それより、どこから回ろっか?」
「一応、パンフレットを貰ってきてあるけど……」
そういって、僕はパンフレットをカミラと一緒に見る。自然に体が密着して、カミラの体温を感じる。うわ……あったか。男ってこういうのに弱いんだよなぁ……体を密着させるのとか。触れるのとか。妙なエロスを感じるでしょ? あれを意図的にやって困らせてくるのが、アリスです。大好きです。あれ? いや、うん。嫌いな男子はいないでしょ。普通。よほどのブスでもない限り。
「あっ……」
カミラは僕と体が接触していることに気づいたようだけど、離れることはなかった。
「え~と……どれにしよっかなぁ~」
気づいていないフリをしているのか、素なのかはわからないけど、密着していることは嫌ではないということはたしか。くっ……このまま抱き寄せてキスとか出来たらなぁ……なんて考えるのが男ですよ。すぐそっち方向に考えてしまう癖。
男はみんなエロのことしか考えていませんから。デートなんておまけでその後のホテルがメインでしょ。っていうのが僕……というより、小野寺和人の持論だった。
僕はそういうわけでもないのだけど……混合しているからか、二つの欲求が重なり合っている感じだろうか。
そもそも、僕とカミラは別に付き合っているわけでもないのだから、ホテルも何もないわけだけど。
ていうか、デート行ってくること知られているのに、朝帰りなんてしたら次の日は地獄しか待っていないでしょ……恐ろしい。
パンフレットを見つめているカミラとは裏腹に、僕はカミラの顔ばかりを見つめていた。そりゃ、そうなる。それに、カミラは気づいたようだ。
「な、なにっ?」
「あ、いや……」
目と目が合う。それだけで、ドキッとした。思わず、目をそらしたくなったけど、カミラの正面顔を見ていたくて、そのまま見つめてしまった。
カミラは顔に手を当てて恥ずかしそうにしている。なんて、かわいいんだろう! いつものカミラとは違って、おとなしい感じ。それも、グッド。
活発な少女が急に大人しくなることのギャップ萌えという奴だろう。可愛くて仕方がない。はて。どうして、僕は誰とも付き合っていないのだろう。
一人に絞れないのなら、この国は一夫多妻制なので、ハーレムを作ったって何も問題はないはず……なんだけどねぇ。やっぱり、一線を超えるのには勇気がいるわけですよ。後々のことも考えると、ね。
学校とか合コンとかでの告白とはわけが違う。常に一緒に暮らしているわけだから。後が気まずくなってしまう。失敗に終わった場合。
そう考えると、尻込みするのも当然と言える。それは、もしかすると相手も同じなのかもしれない。そりゃ、いくら僕だってカミラが……いや、カミラだけでなく、グロワールにいる女の子達が僕に好意的だってことぐらいはわかるさ。アリスもまあ……たぶん。
けど、それが『愛』なのかどうかって言われたら……わからない。そもそも、人を好きになる気持ちというものがよくわからないんだ。それは、ユークとしての僕も、小野寺和人としての僕も同じだった。誰かと付き合った経験もないし。
女の子を見て、かわいいと思う気持ちはあるし、エロイことを考えたりもする。しかし、本当に相手のことを好きになったことがあるのかと言われると……わからない。
実際は軽い気持ちで付き合って、駄目なら次。みたいな感覚なんだと思うけどさ。中にはドラマみたいな恋もあるだろうけど、少数だろう。そんなものは。
だから、軽い気持ちでいいとは思うけど……。
難しく考えすぎかな。もっと楽な気持ちでいいんだよ、きっと。
パンフレットを見て、ある程度どこへ行くかを決めた僕らは祭り会場に到着する。
「うわー、すごい人」
「はぐれないようにしないとね」
「う、うん……」
「ね、ねえ。ユーク……」
「ん?」
「その……手、繋ごっか」
「あっ……うん。いいけど」
嬉しそうなカミラ。僕とカミラの手が自然に繋がる。カミラの肌の感触を直に感じる。温かい。
「そ、それじゃ。行こうか」
「うん」
僕とカミラはまず食関係の屋台から中心に回ることにした。食べ歩きって奴だ。
「あ、りんご飴」
「買ってあげようか?」
「え、いいの?」
「うん。ただし、あまり高いのは駄目ね。それと、基本的にはワリカン。僕がお金ないのは知っているよね?」
「うん、知ってる」
そういって、僕は屋台のおじさんにりんご飴を二つ注文する。一つをカミラに手渡す。もう一つは僕が食べた。うん、甘い。
「へへっ……」
僕はカミラの方を見る。カミラは楽しそうだ。こんなカミラの顔を見られるなら、もっと早くデートすればよかったのかもしれない。
その後も、射的やワインの試飲など祭り会場を歩きまわって僕らは楽しんでいた。
そんな時、何やら騒がしい声が聞こえて来た。
「なんや、おっちゃん! この網、壊れてへんか!」
どっかで聞いたことのある声……まさか。そう思って、人だかりから顔をのぞかせると……やはり、いた。アリスだ。
「すぐ破れるやんか! ぜったい、おかしいで!」
なにやっているんだ、あいつは……たかが金魚すくいぐらいで。ムキになるようなことでもないだろ。取れなくても1匹か2匹くれるんだしさ。
そんなことを僕が考えていると、アリスがこっちを見た。やばっ。
「ん?」
「まずい、逃げるよ!」
「えっ……ちょ、ちょっとユーク!」
そういって、僕はカミラの手を掴んで走りだす。
「はぁ……はぁ……」
僕らは木の陰に隠れることにした。ここまで来れば……。
「あ、あの。ユーク……」
「えっ?」
よく見ると、僕がカミラを木に押し倒して迫っているように見える。そんなつもりはなかったんだけど。肩に両手を置いちゃっているし。勘違いされても不思議じゃない。カミラに説明せずに急に走り出しちゃったし。
「えっと……」
どうにか説明しようとした時だった。カミラの口が開いたのは。
「あのさ……ユーク。ユークってボクのこと……どう思っているの?」
「えっ……」
それは……好きかどうかってこと以外にありえない質問だった。
「僕は……」
なんて答えればいいんだろう。カミラのことは好きだ。でも……。
僕が迷っていると、カミラの方が答えた。
「ボクは……好きだよ、ユークのこと」
「!」
とうとう、来てしまった。この時が。決断を迫られる日が。本来なら、僕の方から言ってあげないといけない言葉なのに。でも、僕はやっぱり……。
「その……ごめん、カミラ」
「えっ……」
「あ、いや。カミラのことが嫌いってわけじゃなく。もちろん、好きだ。でも……カミラだけじゃなく、他の女の子のことも気になるんだ。つまり、一人に絞れない軟弱者なんだよ、僕は」
「……」
「だから、その……」
「いいよ、ボクは」
「え?」
「ボクはユークの一番じゃなくても……他にも好きな子がいたっていい。ユークはボクのこと、好きなんだよね? じゃあ、ボクと……付き合ってほしい」
女の子に……ここまで言わせて。何をやっているんだ、僕は!
「大丈夫だよ、この国は一夫多妻制なんだしさ。ユークがボクらの中から一人を選べないんじゃないかって。そんな気はしてたんだ。ううん……ずるいや、ボク。わかってて、今こんなこと言っているし」
「そんなことは……ないよ」
「一人だけ抜け駆けしちゃってさ。ボクが逆の立場だったら絶対に嫌だよ。でも、ユークを他の誰かに取られたくなかったの。だから……」
「カミラ!」
僕は無理やりカミラにキスをした。驚いたカミラは目を見開いていたが、そのままゆっくりと閉じた。
「んっ……」
最初は軽いキス。ゆっくりと離して、目と目が合う。その後は、深いキス。
「ん……あっ……はっ……んんっ……!」
止まらなかった。止まれるはずもない。カミラが好きだ。愛している。そう考えると、止まるどころか、加速していった。
僕はカミラを抱きしめる。そして、またキス。
そうか。これが人を好きになるってことなのか。理屈じゃなくて……何か。言いようのない感情。
キスが終わると、抱きしめ合ったまま。僕らはしばらくその余韻に浸っていた。
「えっと……その、カミラ」
「ユークが何を言おうとしているのか、ボクにはわかるよ」
「……ごめん。やっぱり、僕はみんなが好きだ。ずっと、今の関係を壊したくないって思っていた。けど、そうじゃなくて……みんな僕のモノにしたいって……そんな最低の感情を持っていたんだ、きっと」
「男だもん。それでいいんじゃない?」
「カミラ……」
「さっきも言ったけど、ボクは気にしないよ。あ、でもボクを蔑ろにしたら許さないんだからね! それだけは言っておくよ!」
「うん……」
「だからいいよ。ハーレム作っちゃえっ!」
ハーレムって……まあ、意味的にはそうだけど。ようするに、僕はみんなのことが好きで……この国は一夫多妻制で……つまり、そういうことだ。
一度、自分で決めたことだ。カミラも許してくれた。なら、突っ走るしかないだろう。
「でも、ボクが初めてなんだよね?」
「えっと……付き合うのが? キスが?」
「どっちも」
「キスは……アリスにしたかも。ほっぺだったけど」
「えぇ! そうなの!? しかも、ユークから!?」
「あはは……あれはちょっと特殊な事情といいますか……」
「うう……やっぱり、ボクひとりのモノにしたーい!」
「えぇっ!?」
「なぁんて……冗談だよっ!」
そういって、くるりと振り返って笑みを浮かべるカミラ。まったく……やられたよ。色んな意味で。
僕はそんなカミラを再び抱き寄せる。
「あっ……」
「えっと……その。僕、もう我慢出来そうもない。この後……いいかな? ホテルで……」
そこまでいって、カミラは頷いた。
「うん……いいよ。ユークだったら、ボク……」
僕はずるい。相手が100%、僕のことを好きだとわかった途端に、強引に攻めている。けど、もう止められるはずもなかった。理性なんかじゃ止められない。そういうものだ。
そうして、僕はカミラを抱いた。感情に身を任せて。
■ □ ■
僕らは今、尋問にあっていた。理由は一つしかない。祭りに行ってその後、結局朝帰りをしてしまったからだ。
「どういうことか、説明して貰いましょうか、兄さん!」
「えーと……その。ご想像通りかと」
嘘をついても仕方がない。
「……」
「……どうして、私じゃないんですか」
「え?」
今の。いや、でも……そうか。カレンは……。
「あのっ! その……ぼ、ボクとユークはたしかにその……付き合うことになったんだけど」
カミラが割り込む。その話をカレンとジェシー、ニーナは黙って聞いていた。
「けど、ユークは……ボク以外にも気になる子がいて。みんな好きだから、ボク以外の子とも……うう、なんていえばいいのかな。ほら、この国って一夫多妻制じゃん? だから、一人に絞られなくてもいいていうか……」
「カミラはそれでいいわけ?」
そう、ジェシーは問いただす。
「えっ……うん。ボクはいいよ。だって、ボクは運良くユークに受け入れて貰えたけど、そうじゃなかったら……ジェシー達みたいな顔してただろうから」
「……」
全員が押し黙る。僕が言わないといけないことをカミラに説明させてしまった。なんて僕は……酷いやつなのだろう。そんな僕でもいいと言ってくれるカミラ。僕に出来ることはその気持ちに答えてあげることぐらいだ。
「そうですか。それなら、遠慮なく兄さんとイチャラブしますね」
と、カレンさん。はい?
「遠慮しないわよ」
じぇ、ジェシーまで。どうなっているんだ……。
「問題は解決したようですね、マスター」
よかった。ニーナだけ普通だ。普通……か? これが、問題が解決したように見えるのか?
「よかったね、ユーク!」
満面の笑みのカミラ。うんまあ……よかったんだろうけど。なんていうか、あっさりしているというか。僕が考えこむほどのことでもなかったんだな。
抱きついてくるカミラ。それを見たカレンは怒り出す。
「ちょっと、カミラさん! ずるいです!」
そういって、反対側の腕に抱きついてくるカレン。
「だって、今のところユークの彼女はボクだけなんだもーん」
「ぐぬぬ……」
「兄さん、私と付き合って下さい!」
「急に言われても……」
「どうしてですか!」
「取り敢えず、寝不足だから……休ませて欲しい」
「朝帰りで寝不足……兄さん……何回出したんですか!」
「ぶっ……!」
思わず、吹き出してしまった。いや、そうだけど。意味的にも合っているけど……はしたないにも程があるだろ。
その後はなんだかわからないまま揉みくちゃにされて……これから僕はどうなってしまうのだろう。
正直、体が持つのか不安です。はい。
そんな不安の中、僕は自室に戻ってベッドに倒れこむのだった。
カミラ達のおまけ付きで。……眠れないじゃん。