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228 密室 上

 暗い部屋に男四人で缶詰になる。俺、ガイルズ、グイード、そしてレイナーは経過報告と今後の展望を話し合うために秘密裏に集まる。本来この場を仕切るアメリアはマリーメイアと一緒にスフィーからお茶会の訓練を受けている。マリーメイアは薬箱としてリルの侍女枠で王都に派遣しようと考えているため、俺のたっての希望で参加させた。それに今回は「綺麗な姫様」には聞かせられないダーティーな話だ。


「村内の状況からで良いでしょうか?」


 グイードの発言で会議が開始される。俺たちの関心事は侯都とラディアンドから帰還した二人の騎士が持って帰った話だが、それから始めると村の事にまで話が回らない。


「頼む。順調そうとしか分からん」


 姫様の村が順調ならそれで良しと言いそうなレイナーだが、それだけでは侯爵は納得しない。


「開拓の件ですが、場所を選んでいる事もあり3アールを1日で開拓しています。この分で進めば秋に500アールほどになります」


 通常は1アール1日とするのなら破格の速度で開拓が進んでいる。これには脳筋寄りのガイルズとレイナーも言葉を失う。この場にダレンが居なくて良かった。半年で500アール開拓の功績をみすみす逃したとしればどれほど悔しがるか。ガイルズもまた、そんな功績をダレンが上げたら立場が逆転していたと肝を冷やす。二人が何を思おうと開拓中隊長ネイサンの一人勝ちなのは変わりない。


 今回の開拓結果はアメリアの功績となるので侯爵家としては諸手を上げて喜んでいる。ダンジョン攻略の功績作りのために男爵にしたのに思わぬおまけの方が価値が出て来て嬉しい悲鳴を上げているはずだ。現在は代官で、ダンジョン攻略が終われば領主に復帰するグイードもホクホク顔だ。俺が多少無理なお願いをしても聞いてくれるだろう。


「魔法を使った開拓がここまでとは」


「魔法の運用を見直すべきか」


 二人が悩むも、ここまで効果的なのは俺が【スキル操作】でスキルレベルを上げたのが大きい。独力でスキルレベル3に到達した魔法使いが開拓事情に携わる可能性は万に一つも無い。


「目に見える形で農地が増えているので元の住人は喜んでいます。問題となっている冒険者の件もまだ我慢できます」


 グイードが欠損持ちの冒険者20人をやり玉に挙げる。傍から見れば介護に人手が必要な何もしていない無駄飯食らいでしかない。シーナが未だ到着しておらず、ハンナとマリーメイアはスキルレベル不足なので癒す方法が無い。それが彼らの精神的な負担になっており、介護の人手にあたったと言う報告が俺の方に来ている。どう言い繕うか考えていたら先手を取られる。


「何を言う! 彼らはラディアンド防衛戦で共に戦った中。文句を言う農民は俺が殴って言い聞かせる!」


 激昂するレイナー。


「レイナー卿、落ち着け。あれは経験した人間しか分からん」


 柄にもなく諌め役をやるガイルズ。


「申し訳ありません。今は大丈夫ですので問題は起こさせません」


 形勢不利と見たグイードはすぐに主張を引っ込める。グイードもあの籠城戦を生き抜いたからレイナーはこれで引き下がる。前世同様に現場組と背広組の対立は根深い。


「冒険者の件は出来る限り早く治療できるように頑張る。話題を戻すが、それで開拓地のモンスターはどうなっている?」


「俺がキッチリ潰している。あの重装歩兵は高度な動きは無理だが真正面からモンスターを殴り殺すには最適だ!」


 ガイルズは自分が指揮をしている戦闘スキルを持つ農民を持ち上げる。農民兵は柔軟な思考は出来ないが、逆にそのおかげで纏まってモンスターにぶつかれる。これも重装歩兵と見紛うばかりの重装備を俺が用意したおかげだ。何より攻略中隊長としてガイルズがしっかり功績を上げているのが重要だ。宰相家に復帰した時の今後の待遇に大きく影響する。


「ただ開拓をしている魔法使いの引き抜きは少々困ります」


「風なら良いと言ったでは無いか!」


 グイードの物言いに噛みつくガイルズ。


「ガイルズ、開拓に影響が出ない範囲で頼む」


 双方言い分があるみたいだが、俺の奴隷なので俺が決める。二人は不肖不肖引き下がる。


「それでその開拓地には誰を入れるのだ? 無人では税を取れないぞ」


 レイナーの問いに場が固まる。今回の作付けは俺の奴隷が出来るが、そうなると収入の大半は俺のものになる。俺は侯爵と主従関係に無いため、税を払う必要が無い。侯爵からしたら俺は領地を不法占拠している盗賊騎士なので討伐に兵を差し向けられる。討伐回避のために俺が宰相家に納税したら、この領地は宰相家所縁となり宰相家と侯爵家が火花を散らす事になる。俺が侯爵家に納税すれば良いのだが、俺に一切のメリットが無いので選択肢から除外する。


「やはり外から人を募るのが一番かと」


「こんなダンジョンが近くにある過疎地に来るのか?」


 グイードの常識的な案をガイルズが正論で完全論破する。ダンジョン攻略が終わるのは今年の作付けに間に合うように来る移住者が到着した後になる。侯爵領どころかラディアンド地方一悪い領地に来たがる農民はいない。それに家を継げないだろう三男以降はラディアンド周辺の無人となった村に向かう。どう見てもここに人は来ない。


「俺はダンジョン攻略が成功したらこの村に住む予定の借金奴隷に徳政令を出して貰えるように閣下にお願いするつもりだ」


「「なんと!」」


 驚く三人に俺が解説する。農民とその子供を合わせると63人だ。彼らを農地持ちにすれば税収問題は解決できる。借金奴隷を俺の権限で勝手に解放すると問題だからその権限を持つ侯爵の力添えが必要だ。


「アッシュ卿にメリットが無いぞ?」


「ガイルズの言う通りだ。だから閣下からダンジョン攻略のための更なる援助を引き出す」


 拠点を造るには様々な資材が必要だ。この村でそれを用意出来ないのは既に確認した。なので侯都で用意したのを【アイテムボックス】で運ぶのを考えている。リルさえ合流してくれたら可能だ。


「こちらとしてはメリットがあるので反対はしません。ですが魔法使いは譲って貰えないので?」


「グイードがダンを始め、開拓に従事している六人を説得するのなら残そう」


「ありがとうございます!」


 この六人は残りたいはずだ。彼らは魔法レベル1の値段で購入したが、現在は魔法レベル3だ。彼らなら数年で借金を返し終えて自由になるので徳政令の恩恵を余り受けない。そこで領主になるグイードが直接口説き落としたと言う話が広まればグイードの名声が上がる。それに魔法使い六の村での立場が良くなる。特にレアな魔法属性である【光魔法】のダンが残れば村は大きく発展する。


「しかしそうなると農民兵の帰属問題が出て来る。侯爵家の者になるのなら、宰相家の指揮下に置けない」


「「あっ!?」」


 レイナーの指摘は尤もだ。俺も言われるまで気付いていなかった。法的には解放した時点で帰属が変わると言えるが、指揮官と個人的な接点が無い強力な重装歩兵の扱いは困難を極める。早い段階から辺境伯家の戦い方に慣れる必要がある。


「その事も併せて閣下に問い合わせる。返事が返って来るまで現状維持で」


 問題の先送りだが、こういうのは上に丸投げするに限る。侯爵にはせいぜい悩んで貰おう。ただし、多少の予定変更はあろうとも69人は奴隷から解放されこの村の住人となる。村の防衛上の観点から今の村人185:奴隷93の比率は好ましくない。村人254:奴隷24になればガラの悪い冒険者集団が滞在しているかの様な日常が戻って来る。俺が何も言わずともグイードが必死に侯爵を説得するだろう。


「となると侯都の情報ですな」


「ラディアンドからの情報と併せて検討せねば」


 レイナーとガイルズが外の問題を取り上げる。外の情報から耳を閉ざして開拓とダンジョン攻略に集中したいが、それをすればアメリアが殺されるのを回避出来ない。侯爵は本当に何をやっているんだ!


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