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225 横やり 上

 ダイアクロコダイルを狩ったその日は村に帰還する事にする。陽が沈む前にもう一体狩れると思うも、アメリア以外の参加者が参っている。最精鋭の騎士を育てているわけじゃないので安全策を取る。それに今日の事で足手纏いな村人が代官に配置換えを申し出ればなお良しだ。比較的暇なダレンと数名の従士を連れて来る事を本気で考える。ただこの構成だとグイードが納得しない。


「村が騒がしいみたい」


「中央広場に馬車か」


 村の様子が違うとアメリアが一番最初に気付く。こんな寂れた村の中央広場に馬車を止めるのは行商人か貴族だ。馬車のデザインからして貴族で間違いない。と言うか、あの馬車に描かれている家紋なら見たことがある。ただ彼がここに来るのはあり得ない。


「ハインリックって暇なのかしら?」


「守役だから学園に行く前に詰め込み教育をしに来たか?」


「手が滑って燃やしてしまうかも」


「範囲は絞ってくれよ?」


 籠城戦で毎日命を削りながらの熾烈な詰め込み教育だったと聞く。でもその結果は上々でアメリアの【火魔法】の威力は3割ほどアップしている。【スキル操作】はスキルレベルを上げられるがスキル熟練度は上げられない。そのため戦いは必然的にスキル頼りの大振りになる。ルルブによるとスキルレベル差が2あればスキル熟練度差は意味を成さない。なので俺は修行してスキル熟練度を上げるよりスキルレベルを上げる戦闘スタイルが適している。アメリアみたいにスキル熟練度が貴族として重要な意味を持つ場合はこの限りではない。


「姫様、お帰りなさい。私は姫様の傍仕えになる様にと父ハインリックに命じられたスフィーです」


 アメリアを見ると片膝を付いて口上を述べるスフィー。貴族女性には珍しく髪を切ってショートカットにしている。160センチほどで少し幼く感じる。初見の雰囲気では前線で戦う戦士より後方を守る侍女と言う感じを受ける。


「スフィーね。ハインリックから貴方の事は聞いています。ですが今年成人して学園へ行く予定だったのでは?」


「成人するまでの間は姫様に仕え、一緒に学園へ向かう様にとの事です」


 ハインリックめ、やってくれたな! 高位貴族は何故か臣下を無条件で信用する傾向が強い。生憎ルルブには情報が無かったが、俺は先祖代々受け継がれる上位存在との血の盟約に原因があると睨んでいる。俺がクロードの代理で預かる【風王の加護】ですら俺の人格にかなり影響を与えている。推定800年以上は続いている【炎神の加護】の影響は計り知れない。


「ならこれからよろしくねスフィー。でもまだ未成年だとすると、ハインリックから書簡か何か預かっていない?」


「こちらに」


 スフィーと話し込んでいたグイードが書簡を渡す。何故か俺にも二通ある。さっと目を通す。侯爵からの手紙には「この四人の騎士は信用できる」と書いてありハインリックからの手紙には「連座で首が飛ぶスフィー以外は信用できるか分からない」と書いてある。


 スフィー以外に4人の騎士爵とその配下が来ているのか。一応数の上では配慮したと思う。スフィーとエミール、そして侯爵家の騎士と宰相家の騎士で数を合わせて来た。侯爵家の騎士が一人多いが、リルが合流予定なのでそれで4:4となる。後は相手の従騎士と従士の数だが、周りをうろついているのだけでもこちらより多い。こちらも冒険者の復帰を急がせるべきかもしれない。


「詳しい屋敷で話を聞きます。他の騎士達は?」


「それが中央の騎士の働きぶりを見たいと……」


 アメリアの問いにグイードが額から汗を流して言う。


「問題を起こしていれば即刻侯都へ帰って貰います」


「……はっ! 当然かと思います」


 一瞬の間をおいてグイードが同意する。俺達と問題を起こした場合、侯都からの援軍は間に合わない。宰相家の騎士達はアメリアの命までは取らないだろうが、純潔までを守る気はさらさら無いだろう。押し切れる大義名分さえあれば既成事実を作ってお家乗っ取りを平気で企む。ただ地方貴族は中央貴族を侮っているのか長年の恨み辛みで正常な戦力分析が出来ないのか、殴ったら勝てると思い込んでいる節がある。その筆頭が緒戦だけなら確実に殴り勝てる辺境伯なので始末に負えない。


「俺の方でも安い挑発に乗らない様には伝えておく」


「ありがとうアッシュ」


 これが侯爵家の善意からの行動ならフォローくらいはする。だがスフィーの持ってきた話次第でそんな甘い幻想を捨てる必要が出て来る。お家騒動の種であるアメリアはラディアンド籠城戦で活躍し過ぎた。嫡男ギドルフ派に取っては面白くない状況であり、馬鹿が暴発する可能性は高い。学園に通う前のライバル候補を暗殺するのは卑怯な行為であり、万が一成功したらギドルフは終生臆病者の烙印を押される。だからギドルフがそんな手を使うのならアメリアが一年は学園に在籍した後だ。今動くとすればギドルフの母か。侯爵は侯爵家の血が一滴も流れていないあの未亡人を何処まで制御出来たか。パワーレベリングに集中したいのに政治の面倒事か。

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