料理ってたまにすると楽しい
メアリと2人になれそうで、ジェーン先生が来るまでの時間稼ぎとも考えての提案だったお菓子作りであったが、王妃様も賛成してくれた。
「ロザムンドはお菓子作りが出来るのね。懐かしいわ〜私も自分の国にいた時は何度か教えてもらったわ」
「ロスあれがいいです。イチゴの乗った白いケーキ」
「ショートケーキですか?」
ギルから言われた物の名前を言うとメアリ以外が首をひねる。やっぱりこの世界にショートケーキはないのか。
「マリー様はどんなお菓子が好きですか」
「マドレーヌとかフィナンシェとか、ノエルの時のケーキとか!お菓子は柔らかい方が好き。この国のケーキはボソボソしてるのが多いの」
なるほど。確かに美味しかったが水分持っていかれる物が多かった気がする。
聞いている単語の語感からフランスのお菓子みたいなのなら気に入るかしら。フランス・・・フランス菓子・・・あ、この間成功したあれを作ってみよう!!
「分かりました。では台所を貸して下さい」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「って、どうして皆様こちらへ?」
案内された台所で道具を準備していると、ギルを筆頭にアルバート、ロバート、マリーが着いて来ていた。メアリと話をしたかったのに、それは失敗したようだ。
「だって今日は水曜日ですよ。ロスと一緒に遊ぶ日ですから」
「さっきマリー様が言っていた物からローザが何を作るのか興味があるから」
「僕だけのけ者にしないでおくれよ。もう疲れたから楽しく遊びたいんだ」
「変な物を王女に食べさせないか見張っているだけよ」
勝手な事を・・・よし分かった。ならば王妃様もいないし私も勝手な事をさせてもらおう。
「分かりました。でしたらここにいる間は私の言う事を聞いて下さいね。危ない物も多いので勝手に物を触らないで下さい。じゃあギル、これを混ぜて。アルバート様はそちらのバターを切って下さい。ロバートはカップを遣って牛乳を1杯用意して」
王子たちにそう指示すると、遠巻きで見ていた料理人達がドン引いている。貧乏貴族が王子に命令してるんだから当たり前の反応だ。
すると何も言われなかったマリーが手を挙げた。
「私も、手伝ってあげる。貴方だけじゃ上手くできるか不安だもの」
「ありがとうございます。では絞り袋を用意していただけますか」
ロザムンドの家には絞り袋はなかったので、綺麗な袋を買って作った。だけどここは王宮だし、きっと何かあるだろうと踏んでいた。ーー予想した通り、料理人がおそるおそるマリーに手渡していた。
沸騰した物を混ぜるのは私がやって、鉄板等は料理人の方に準備してもらって、と皆に指示を出しながらようやく焼く所まで行き着いた。
オーブンに入れられた生地を眺めながらマリーが言う。
「これって・・・」
驚いたように呟く姿をみて思わず笑みがこぼれる。
「最後のところは一緒にやりましょうね」
「ええ!ーーなら今作ってるカスタードだけじゃ物足りないわ。生クリームあるかしら?」
「生クリームだね。聞いてみよう」
マリーの提案でカスタードと生クリームの2つが準備され、生地も上手い具合に膨らんだ。冷ましているうちに、皆の分の絞り袋を用意して生地に流し込んでいく。
とそこへジェーン先先が入って来た。
「やぁ、遅くなったね。皆で何やってるの」
「ジェーン遅いわよ。私はどうなるか冷や汗が出っぱなしだったのに」
「ごめんごめん・・・ってお嬢様達は台所で何をされてるの。王子樣方を台所に入れてしまうなんてとんでもない事とは思うけどーーー気にしてないようだね。王妃様が先ほど言っていたのは本当だったんだねぇ」
「その王妃様が賛成してこんなことに」
はぁーっとメアリが大げさにため息をついていた。
「まぁ良いんじゃないかな。相当お相手するのに困っていたようだし、今の様子は皆楽しそうだし。それはそうと、あの身分の高そうな女の子がフォンテールのマリー様?」
「です。他国のお姫様を『台所』に連れて来てしまうなんてそれこそ問題になりそうよねぇ」
メアリの心配も知らず、私は皆と騒ぎながら最後の仕上げに入っていたのだ。
「シュークリームです!!」
お皿に飾られた物を出しながらドヤ顔をすると、マリーが訂正した。
「シュー・ア・ラ・クレームね。ーー私これ大好き!」
「なら良かったです。早速皆で食べましょう」
「ロザムンドと言ったわね。貴方はどこでこれを?」
痛い質問だ。ロー×ンのが好きだったんですって言っても多分通じないだろうし。
「うちの料理を担当しているリリーが教えてくれました」
「まぁ!ウチの国の人なのね」
「そうかもしれません」
適当を言っていると、後ろで吹き出す音が聞こえた。振り返るとメアリとジェーン先生が見ていた。
メアリは肩を振るわせながら「リリーがフォンテールの人って。あの子多分都から出た事ない」と言っていた。




