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プロローグ

 アメトリンという石を知っているだろうか。アメジストの紫とシトリンの黄が一つの結晶で絶妙に混ざり合うバイカラーの鉱石。その神秘的な雰囲気から宝石としての人気も高い。自然が生み出した奇跡のような。

 そう、魔(・)法(・)のような石。



 私、クロエ・スチュワートはスチュワート公爵家の長女、よってれっきとした貴族の令嬢だ。そして、『Ametrine of Magic』の世界の住人、つまり転生者。だが、原作ではスチュワート公爵家にクロエという人物は存在しなかったのだ。


 この世界には魔法がある。属性は光、闇、火、風、水、土、そして石。この石魔法は数ある魔法属性の中でも最も貴重で最も強力。石魔法の使い手は各々生成できる鉱石が異なり、それに応じて魔法の効能も違う。例えばヒロインのノエル・スチュワート。今のクロエの妹にあたり、ヒロインらしい紫の美しい瞳にミルクティー色の長い髪を持つ美少女。体は強くないが勤勉で賢く、好奇心旺盛。石魔法と光魔法の使い手で、そんな彼女の生成鉱石はアメジスト。ヒーローであるカラム・トンプソンも石魔法を扱い、生成鉱石はシトリン。火魔法にも適性を持ち、暖かな黄金の瞳に赤みがかった癖っ毛の茶髪が印象的な青年だ。

 原作のタイトルである『Ametrine of Magic』のアメトリンはこの主人公2人の生成鉱石に由来する。話の大筋はこうだ。


 種類は違うが重圧や嫉妬などの注目を集め、息苦しく思っていた公爵令嬢ノエルと平民カラム。2人は入学した魔法学園で出会い、互いに惹かれていく。ひっそりと好意を寄せ合っていた2人はあまりに大きい身分の差に悩みながらも、研究のパートナーとしてたくさんの人を助け、たくさんの人の手を借りながら成長していく。クロエとカラムの研究を誰よりも近くで支えたガルシア公爵家の令息で次期宰相のオリヴァーや、彼らに救われた2人の王子と隣国の王女。紡いだ縁が彼らを取り巻く周囲の視線を変える。世紀の大発見とされた2つの魔力を溶け込ませて生成するバイカラーの鉱物、アメトリン。それを発見した研究によって国や家族に認められた2人はようやく結ばれる。まばゆく愛しい祝福を受けて。


 さて、そうはいうものの、実はこの世界の魔法にはもう一つ属性がある。現在では本の中にしか存在しない、いわば化石化されている魔法。花魔法だ。花魔法は魔力で花を生成することができ、その効果は莫大で、自分以外であればほとんどの怪我や病を治癒できるという。ただ、大量の魔力を消費するためか使い手は短命で、適性者も血縁や容姿などに関係なくごく稀に突然生まれるため非常に少数で数世紀に1人出ればいい程度。詳細を知る生きた者はいないと言われている。またこの魔法の使い手は光魔法の使い手でもあることが多いという特徴もある。

 石魔法と花魔法の逸話はこの国に残る2人の聖女伝説で有名だ。建国の聖女と傾国の聖女。彼女らはこの国、レントリアの英雄として物語に残された。石魔法の使い手であった建国の聖女は王族として血筋が残ったが、花魔法の使い手だった傾国の聖女は魔力枯渇で若くして死去。これが花魔法の使い手が血筋で生まれない理由とされる。石魔法は建国の聖女の血が流れる王族や上流貴族に適性が出やすく、平均して1世代に5人程度だそう。


 話を戻そうか。そう、この話に本来ヒロインの姉、クロエは存在すらしない。なぜなら私はスチュワート公爵家に養子としてとられた子だから。経緯は私が前世の記憶、『Ametrine of Magic』を思い出す前まで遡る。


 私が転生したこの世界は、知っている物語とは少し違っていて。異分子(クロエ)が混じることでさらに違う物語へと姿を変えていく。

「この世界でどう生きようか」

 石と花と、魔法と。

プロローグ、読んでいただきありがとうございました。

のんびり更新を続けますので、クロエさんたちの物語を応援してくださると嬉しいです!

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