【続10話】 気高き姫君の降伏と、月下に踊る極光
昼間の熱気が嘘のように静まり返った廊下を、俺は一人、静かな足取りで進んでいた。目指すのは、城の西塔に位置する豪華な客間——セシリアの自室だ。
昼間、泉のほとりで彼女から告げられた言葉が、脳裏で何度もリフレインする。
『……今夜, わたくしの部屋に来なさいな』
真っ赤な顔で叫ぶように言い捨てて去っていった彼女の姿。高貴な姫君として育てられ強い自分を演じ続けてきたセシリア。そんな彼女が、生まれて初めて俺という一人の男に対して示した、精一杯の「隙」であり、救いを求める合図だった。
扉の前に立ち、俺は深く息を吐き出すと、コンコンと静かにノックした。
「セシリア。ハルトだ。……入ってもいいか?」
室内が一瞬、静まり返る。
直後、中でバタバタと衣装を整えるような小さな物音が響き、かすかに震える声が返ってきた。
「……は、入りなさいな。鍵は……開けてありますわ」
俺は扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりと押し開けた。
部屋の中に足を踏み入れると、柔らかな月光が大きなアーチ状の窓から差し込んでいた。その中央に佇んでいたのは、眩いばかりの金髪を背中に流したセシリアだった。
彼女が身に纏っていたのは、最高級の純白シルクで仕立てられた格式高いナイトガウンだった。胸元と袖口には、旧聖皇国の象徴である繊細な金糸の刺繍と鮮やかな青いサテンリボンが飾られている。
立ち姿だけで洗練された気品を感じさせる装い。けれど、深く開いた襟元からは純白の磁器のような鎖骨と柔らかな胸の谷間が覗き、しなやかに絞られたウエストから伸びる裾の隙間からは滑らかな太ももが覗いていた。
気高さと、隠しきれない高貴な色香。まさに「聖皇国の美姫」と呼ぶにふさわしい、洗練された美しさがそこにあった。
「……遅いですわ、ハルト。わたくしを何分待たせるつもりでしたの?」
腕を組み、ツンと横を向くセシリア。だが、彼女の瞳は落ち着きなく揺れており、白い肌は耳の根元まで真っ赤に染まっていた。胸元が激しく上下し、鼓動がこちらまで伝わってくるかのようだ。
「すまない。少し準備をしていてな……。セシリア、綺麗な部屋だな」
「ふ、ふん……! 当たり前ですわ。わたくしは聖皇国の王族。このような場所でも、品格を保つのは当然の嗜みですわ」
強がりを吐く彼女だが、組んだ腕の指先が、ガウンの絹布をぎゅっと力任せに握りしめているのを俺は見逃さなかった。
怯えと、緊張。そして、それ以上に渦巻く「一人の女」としての激しい羞恥。
「セシリア。極光魔法の回路の確認……だったよな?」
俺が静かに一歩を踏み出すと、セシリアの肩がビクッと跳ねた。
「っ……あ、そうですわ! わたくしの体内に流れる極光の魔力が、最近どうも乱れがちなのです。あなたが……伝説の『男神』の血を引くあなたが、近くで調整しなさいと言ったのですわ!」
理由をつけて自分を正当化しようとする彼女の可憐さに、俺の胸の奥が熱く疼いた。
俺はセシリアとの距離を静かに詰め、彼女の正面に立った。
間近で見つめ合うと、彼女の甘い体香と、上品なバラのような香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
溢れんばかりの金髪が月光を浴びて繊細な金糸のように輝き、澄み切った青い瞳には、俺の姿がはっきりと映り込んでいた。
「ハルト……そんなに近くで見つめないでくださいます……っ?」
セシリアは下がろうとしたが、その背中がすぐにベッドのフレームへと突き当たった。逃げ場を失い、俺を見上げる形になる。
俺は彼女から目を逸らさず、そっと右手を出して、彼女の滑らかな頬に触れた。
「あっ……ん……」
セシリアの口から、可愛らしい漏れ声がこぼれる。俺の手のひらから伝わる体温に、彼女は驚きを見せたが首を振って逃げようとはしなかった。むしろ、吸い寄せられるように、俺の手のひらに自身の頬をすり寄せてくる。
「セシリア。もう、無理に姫君の振りをしなくていいんだぞ」
「なにを……寝ぼけたことを……っ」
「お前は強いよ。国が滅び、男たちが欲望のままに襲いかかってくる中で、一人で王族の誇りを守り続けてきた。弱音一つ吐かず、極光の魔法で敵を退けてきたんだろ?」
「それは……わたくしが、聖皇国の姫だから……当然の……っ」
「だけど、今は俺がいる」
俺は両手で彼女の滑らかな頬を包み込み、指先で金髪を優しくすくい上げた。
「俺の前では、ただの『セシリア』でいてくれ。国を背負う姫でも、気高き戦士でもなく……俺に甘えて、愛される一人の女の子でいていいんだ」
「ハルト……っ……」
俺の言葉が、彼女の心に深く突き刺さった。
強い自分でいなければ殺される。高貴な姫でいなければ、男たちの欲望の餌食になる。ずっとずっと、重い鎧を身に纏って戦い続けてきた彼女から、一筋の美しい涙がポロポロと溢れ出した。
「わ……わたくしは……っ、本当は……怖かったのですわ……っ! 毎日毎日、男たちが気持ち悪い目で見つめてきて……一人で震えて……っ!」
溢れ出たのは、内に溜め込み続けていた年相応の少女としての悲鳴だった。
「誰かに助けてほしかった……っ! 抱きしめて……『大丈夫だ』って、言ってほしかった……っ! でも、誰にも甘えられなくて……っ!」
「……セシリア」
「ハルト……っ! あなたが来てくれた時、わたくし、本当はすごく嬉しかったのですわ……っ! あなたの腕の中でなら……泣いてもいいのだと、そう思いたかった……っ!」
泣き崩れるセシリアを、俺は力強く抱きしめた。
華奢で、繊細で、折れてしまいそうな身体。彼女は俺の胸に顔をうずめ、ガウンの布地を掴みながら、子供のように声を上げて涙を流した。
俺はその背中を何度も撫で、頭を優しく包み込みながら、彼女の全てを受け止めた。
しばらくして、泣き疲れたセシリアが、小さく鼻を鳴らして顔を上げた。
涙に濡れた青い瞳は、月光を反射してサファイアのように美しく煌めいている。赤くなった鼻先と、上気した白い肌が、たまらなく愛おしかった。
「……見苦しいところをお見せしましたわね。……笑いなさいな、ハルト」
「笑うわけないだろ。……すごく、愛おしいよ」
「っ……また、そうやって甘い言葉でわたくしを惑わせますのね……」
セシリアは涙を拭うと、決意を秘めた眼差しで俺を真っ直ぐに見つめ返した。
「ハルト。……わたくしの身体を、見なさいな」
彼女は小さく震える指先で、ガウンのウエストを結ぶ青いサテンリボンへと手を伸ばした。すらりと解かれた結び目から、純白のシルクが滑り落ちていく。
「セシリア……」
「わたくしは……聖皇国の美姫などではありませんわ。ただの……あなたの愛を乞う、愚かな女です……。……ハルト、わたくしを……あなただけのものにして……っ」
ガウンが肩から滑り落ち、床へと静かに落ちた。月光の下に、セシリアの完璧な裸身が惜しげもなく晒された。
息を呑むほど美しい、神の造形美。
眩い金髪が散らばる肩から、すらりと伸びる華奢な首筋。豊かに実った、弾力のある乳房は、月光を浴びて純白の磁器のように輝いている。引き締まった細いウエストから、優美な曲線を描いて広がる丸いヒップ。そして、固く閉じられた二本の太ももの隙間には、うっすらと可憐な秘所が隠されていた。
「そんなに……まじまじと見ないでくださいます……っ。恥ずかしくて、死んでしまいますわ……っ!」
赤面し、両手で胸を隠そうとするセシリア。だが、俺は彼女の細い手首を優しく掴み、ベッドの上にゆっくりと押し倒した。
「ハルト……っ!」
やわらかなシーツの上で、輝く金髪が大きく広がる。
「綺麗だ、セシリア。世界で一番、美しいよ」
「あ……っ。もう……そんな言葉、ズルいですわ……っ」
俺は彼女の体に覆いかぶさり、まずはその赤く熟した唇へと重なった。
「んんっ……! ハ、ハルト……」
セシリアの甘い悲鳴が、口内で弾ける。
これまで誰にも許してこなかった彼女の唇。高貴で触れえなかった秘めやかな場所が、俺の舌によって解きほぐされていく。最初は戸惑っていたセシリアの舌も、やがて熱にうなされるように、俺の舌へと弱々しく絡みついてきた。
「んちゅ……むっ……はぁっ……! 息が……できませんわ……ハルトっ……」
唇が離れると、一筋の銀の糸が二人の間に架け橋を作った。セシリアの青い瞳は熱く潤み、恍惚とした表情で俺を見上げている。
ツンとすました姫君の仮面は完全に砕け散り、そこには俺の愛に狂おしく身を焦がす、一人の純粋な少女が横たわっていた。
俺の指が、彼女の柔らかく豊かな胸の膨らみへと滑り込んだ。
「あぁっ……! な、どこを触っていらっしゃいますのっ……ぁんっ!」
吸い付くような肌の質感。親指で小さな桃色の蕾を優しくいじると、セシリアは背中を反らし、甘い悲鳴を上げた。
「ハルト……っ、そこ……ダメ……っ! 変な感じが……胸から、身体中に広がりちゃいますわ……っ!」
「身体がすごく熱いぞ、セシリア。……魔力が同調し始めてるんだ」
言葉通り、彼女の身体から溢れ出る極光の魔力が、俺の身体から放出される男神の魔力と引かれ合い、お互いの肌を眩い光の粒子が優しく包み込んでいく。
「あぁ……っ! あなたの熱が……わたくしの中に、入ってきますわ……っ!」
俺の指は胸からお腹、そして滑らかな太ももの内側へと滑り落ちていく。湿り気を帯び始めていた彼女の秘所に指先が触れると、セシリアは「ひゃんっ!?」と甲高い悲鳴を上げて身体を硬直させた。
「や……そこはっ! 見ちゃダメですわっ、触らないで……っ!」
「嫌か?」
俺が動きを止め、瞳を見つめると、セシリアはボロボロと溢れる涙を拭いもせず、首を横に振った。
「い、嫌ではありませんわ……っ! むしろ……もっと、あなたの手で触られたい……っ! でも、恥ずかしくて……どうにくなりそうなのですわ……っ!」
強がりと素直さが混ざり合った、たまらなく愛おしい叫び。
俺は優しく笑うと、秘所を指先でじっくりと愛で始めた。滑らかな蜜が溢れ出し、指先を滑らせるたびにぐちゅ、ぐちゅと甘い水音が部屋に響き渡る。
「あぁぁっ! んんっ、ハルト……ハルト」
セシリアは頭を左右に振って金髪を乱し、俺の肩に細い指先を食い込ませてしがみついてきた。
「もう……限界ですわ……っ! わたくしを……あなたのモノにしてください……っ! あなたの熱いもので、わたくしを……満たし尽くしてくださいまし……ぁぁっ!」
プライドも、高貴さも、全てを投げ打った姫君の甘美なる降伏の叫び。
「ああ……任せろ、セシリア。お前を俺の、最高の姫にしてやる」
俺は彼女の両脚を押し開き、自身の熱く滾った物を、溢れ出る蜜で濡れた彼女の奥へと宛がった。
月光と極光の粒子が舞い散る部屋で、伝説の『男神』の血を引く俺と、気高き聖皇国の姫君セシリアの、初めての甘美な交わりが始まろうとしていた——!




