【第45話】 花嫁障害物レースと、貞操を賭けた最終決戦(ゴールイン)!
「ついに……この時がやって参りましたわ!」
学園都市の特設大競技場。
数万人の観客(全員が息をのんで見守る女子生徒や各国の大使たち)の熱気が、夏の太陽よりも熱く競技場を包み込んでいた。
中央のゴール地点。豪華な金色のベッド……もとい【特設新婚ゴールリング】に縛り付け(安全保護され)られた俺は、頭上のモニターを見上げて乾いた笑いを浮かべた。
「なあアイリス……俺、なんで新婚ベッドに固定されてるんだ……?」
となりに立つ白銀装甲のドレス姿・アイリスは、完璧な立ち振る舞いで俺の手を握りしめている。
「説明します、マスター。この最終決戦【花嫁障害物レース】は、スタート地点から数々の過酷な障害を突破し、最初にマスターが待つこの『ゴールベッド』へ飛び込んで抱きついた者が、正式に【第一夫人】の権利を獲得するルールとなっております」
「……ベッドに飛び込んだ時点で確定なの!?」
「はい。ちなみに私は『ゴール防衛兼・最終障害』として、マスターの貞操を死守する任務を割り当てられております」
「ちゃっかり自分だけ俺の隣キープして有利な立場にいるじゃねぇか!!」
俺の絶叫が響く中、スタートラインにはドレス姿の最終ファイナリスト3名が並んでいた。
エントリーNo.1:シルヴィア(突剣を構え、瞳に不退転の決意を宿す生徒会長)
エントリーNo.2:シャーロット(足元に無数の魔導ブースターを装着した爆炎の天才魔導士)
エントリーNo.3:(アイリス棄権により)バルバロッサ(敗者復活枠・ワイルドなドレスで大型魔導バイクに跨る女海賊)
(バルバロッサ、敗者復活でバイク持ち込んできてんぞ!? ルール無用かよ!!)
「位置について……用意……」
パンァァァンッ!!
祝砲の合図とともに、激しい爆音と土煙が巻き上がった!
「タツヤさぁぁぁぁん!! 一番に飛び込みますわぁぁぁっ!!」
ドガガガガガッ!!
スタートと同時に、シルヴィアが神速の突進を
繰り出す!
だが、直後に立ちはだかった第1の障害【超強力・粘着スライム地帯】!
「甘いわシルヴィア! 科学の力でひとっ跳びよ!」
ボオォォォォッ!!
シャーロットがドレスの裾から魔導ブースター
を噴射し、空を飛んでスライム地帯を丸ごとパス!
「ガハハハ! 邪魔だ邪魔だぁぁぁっ!」
バルバロッサは魔導バイクでスライムを豪快に踏み荒らし、強引に突破していく!
「くっ……生徒会長として、遅れをとるわけにはいきませんわ!」
シルヴィアが突剣から真空の旋風を放ち、粘着スライムを力尽くで吹き飛ばして追撃する!
三者の壮絶なデッドヒート!
続いて立ちはだかる第2の障害【各国の美少女刺客軍団(失格者たち)】!
「男神様は渡さないわ!」「第一夫人は聖王国に!」「帝国のものよ!」
予選で敗れたセシリア聖女、クラリス少将たちが、意地と欲望に満ちた笑顔で襲いかかってくる!
「そこを退きなさぁぁぁいっ!!」
シルヴィアの一閃が刺客たちを薙ぎ払い、シャ
ーロットの爆炎魔法が空中艦隊を撃ち落とし、
バルバロッサの二丁拳銃が弾幕を破る!
「な、なんだあの狂気的な強さは……!?」
観客席から悲鳴が上がる。
愛と執念で極限まで高まったヒロインたちの戦闘力は、もはや国家の軍隊すら一瞬で壊滅させるレベルに達していた!
そしてついに——!
「タツヤさんっ!!」
「タツヤァァッ!!」
「旦那ぁぁぁッ!!」
満身創痍(だがウェディングドレスは奇跡的に無傷)の3人が、ついに最終障害……俺の待つゴールリングへと到達した!
「マスターから離れなさい。これより最終防衛
ラインを構築します」
ガシャキィィィン!!
アイリスが両腕から巨大な『愛の防護魔導障壁』を展開し、3人の前に立ちはだかる!
「退きなさいアイリスさん! 私は……私はタツヤさんの第一夫人になるんですのぉぉぉっ!!」
シルヴィアが全魔力を突剣に注ぎ込み、限界を超えた突進【アヴァロン・ブライダル・スラッシュ】を繰り出す!
ズバァァァァァン!!!!!
「くっ……防衛障壁、突破……!?」
アイリスの障壁が粉々に砕け散る!
その隙を突いて、シャーロットが魔導ブースターを全開にし、バルバロッサがバイクごと大ジャンプを破裂させた!
3人が同時に、ベッドの上の俺に向かって空中で手を伸ばす!
「「「タツヤ(さん・旦那)ぁぁぁぁぁっ!!!!」」」
(ヒィィィッ!? 3人同時に落ちてきたら俺が押し潰されて死ぬぅぅぅっ!!)
俺は死の危険を感じ、必死で束縛を解こうと体を捻った!
パキンッ!
奇跡的に束縛の金具が外れ、俺は間一髪でベッドの上から転がり落ちた!
そして——
ドッシャァァァァァン!!!!
「「「キャァァァァッ!?」」」
3人は誰も俺を捕まえることができず、勢い余ってベッドの上に激しく衝突! 3人まとめて絡まり合うように重なり合って倒れ込んだ!
静まり返る競技場。
「あ……たた……」
床に落ちた俺が顔を上げると、審判(理事長のエレオノーラ)がメガホンを手に駆け寄ってきた。
「判定! ……全員、同時にゴールベッドへ到達したものの、肝心のタツヤ様への接触は『全員未達成(不発)』! よって……」
『第一夫人決定戦……まさかの引き分け(全員保留)!!』
「「「「えぇぇぇぇぇぇっ!??!?」」」」
会場全体からズッコケるような大歓声と悲鳴が上がった。
夕暮れ時。
競技場の中心で、頭にタンコブをつくったシルヴィア、シャーロット、バルバロッサが、悔しそうに俺を囲んでいた。
「うぅ……あと一歩だったのに……」
シルヴィアが涙目で突剣を抱きしめる。
「私の計算が完璧なら、あのタイミングで飛び込めたはずなのに……」
シャーロットが悔しがる。
「ガハハ! ま、全員引き分けなら、これから毎日順番にアタックできるってわけだ!」
バルバロッサが豪快に笑う。
「マスター。……私が最終防衛に成功したため、事実上の『マスターの貞操保護成功』と判定します」
アイリスが誇らしげに胸を張る。
俺は呆れつつも、夕陽に照らされるみんなの笑顔を見て、ふっと肩の力を抜いた。
「ハハ……みんな、無茶しすぎだって」
「当然ですわ!」
シルヴィアがすっと立ち上がり、夕空の下で俺の手を優しく握りしめた。
「タツヤさん。第一夫人はお預けになりましたけれど……私たちの『戦い(アピール)』は、これからもずーっと続きますからね♡」
「そうよ! 次は絶対に私を選ぶように、毎日甘やかしてあげるんだから!」
「影として……ずっと隣にいる」
「ふふ、次はあなたのハートを完全に奪ってみせます♪」
「マスターの第一夫人枠が空席である限り、24時間フルガードを継続します」
世界中から狙われる命(と貞操)。
だけど、この最高に騒がしくて、愛おしい仲間たち(ヒロインたち)がいる限り、俺の毎日は退屈することなんてなさそうだ。
「……手加減してくれよな、みんな!」
俺の苦笑いと、ヒロインたちの華やかな歓声が、どこまでも広がる青空に響き渡るのだった——。
『男が絶滅した異世界に転移したら、100年ぶりの『遺伝子』として世界中の国家から命(と貞操)を狙われる件』
【全話・完】




