第62話: 遂に発表、ペアと班分け!
掲示板の前で、エルダーが紙の端を指で押さえていた。四隅を留めた釘のうち1本が抜けていて、風が吹くたびに右下がめくれ上がる。
「ほら、ソラ!今のうちに読め!」
「……エルが手を離せば読めるんだけど」
「離したらめくれるだろ」
掲示板の前にいるのは、ソラたちの他に数人だけだった。1番上に「校外実習 班分け」とあって、その下に班の番号と、3年の名前が2つずつ並んでいた。
1班の欄には「アスカ組・ルシア組」と書いてあった。
「っしゃあ!」
エルダーの手が紙から離れ、握りこぶしを作って空へかかげた。紙がペラペラとめくれる。
「アスカ先輩と一緒じゃねぇか!ペアは取られたけど班は一緒だ!」
「取られたってなんだよ。文句があるならアスカ先輩に言えって」
「そっ、それは遠慮しとく!」
エルダーが慌てて紙を押さえ直したところで、すぐ後ろで誰かが咳払いをした。振り返ると、頭一つ大きい男子が立っていた。大会の1回戦で、最初に相手をした生徒だった。
「……よろしく」
「トーマ?」
エルダーが目を瞬いた。
「お前も1班なのか」
「俺はルシア先輩の組だ。最初から」
「……え、マジで?」
トーマは返事をしないまま、紙の1班の欄に目を戻した。
「お前、自分の組の顔くらい覚えとけよ」
ソラが呆れるとエルダーは頭を掻いた。
エルダーがトーマの方へ体ごと向き直った拍子に、また指が紙から離れた。右下が大きくめくれて、3班の欄を巻き込むように折れ重なる。折れる直前、ローライトの名前が見えた気がしたが、その上の3年の名前までは確認はできなかった。
ルリは少し離れた所から、紙を見上げていた。目は2班の欄から動いていない。カズハ組・シオリ組。
「ミオさんと……同じ班です」
ルリの肩が、少しだけ下がった。
紙の1番下には行き先の欄があった。どの班も同じ地名が書いてある。ソラの知らない名前だった。
「どこだこれ」
「知らねぇ」
「わ、分からないです……」
3人とも同じ所を見上げたまま、しばらく動かなかった。エルダーの指の下で、紙の端がまた小さく跳ねた。
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【1班】
アスカ組:ソラ
ルシア組:エルダー・トーマ・ナギ
昼の食堂で、ルシアは林檎を齧りながら1班の顔を順に指さした。
「えーっと。アスカと、ソラくんと、エルダーと」
指がトーマの前で止まる。
「でかいのと」
次にナギの前で止まった。
「……ちっちゃいの」
「トーマとナギっす」
「そうそう。知ってた知ってた」
「お前の組だろう」
アスカは盆から目を上げずに言った。ルシアは林檎をもう一口齧って、聞こえなかったふりをした。
「先輩、俺の名前は覚えてくれてるっすけどもしかしてご贔屓なんすか?」
「お前はうるさいし、しょっちゅう絡んでくるから嫌でも覚えるに決まってんだろ」
トーマが小さく吹き出した。ナギはスプーンを持ったまま、アスカとルシアを交互に見ていた。
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【2班】
カズハ組:ルリ・イツキ・ハクア
シオリ組:ミオ・コウガ・ロウェナ
小さい方の稽古場では、カズハが帳面を開いていた。
「イツキくんだ。左の踵、まだ浮くの?」
イツキの足が勝手に半歩引いた。浮いているかどうか、自分で踵を見下ろしている。
「ミオさんは、大きい魔法の前に息を止めるんだよね」
「なんで知ってるんですか!?」
「ノートに書いてあるんだ」
「えー!なにそれ凄いっ!」
ミオが口を両手で塞いだ。その隣でコウガがミオの顔を見て、すぐに天井を見た。耳が赤い。
「コウガくん、なんか怒ってる?」
「怒ってない!」
「えぇぇ……?」
シオリは1人ずつに深く頭を下げて回っていた。最後に頭を下げられたロウェナは、つられて同じ深さまで頭を下げ返した。ハクアだけが、どこに立てばいいのか分からない顔で左右を見比べている。
ルリはいつの間にかミオのすぐ後ろに立っていた。
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【3班】
───組:ローライト・リンネ・タティア・ワグナス
ニーナ組:ライカ・フィーナ・アンネリーゼ
廊下の掲示板の前では、フィーナとライカの言い合いが続いていた。
「なんでアンタと同じなんだよ!!」
「私が決めたわけじゃない」
「アンタと何日も一緒に歩くとか、無理なんだけど!」
「因果と運命に人間は逆らえない」
「だから何言ってんだっててめぇ!」
ライカが声を荒らげる度に、抜けかけた釘がかたかたと鳴った。フィーナは紙の方を見たまま、瞬きもしなかった。
2人の間を、3年の胸章を付けた生徒が通り抜けていった。立ち止まりもせず、振り返りもしない。
「ニーナ先輩、なんか言ってくださいよ!」
ライカは気にせず歩いていくニーナを追いかけていき、フィーナは黙ってその後に続いた。
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夕方の訓練場。アスカはそこにいつも通りいた。
ソラが扉を開けても振り返らない。上段から振り下ろして戻して、また振り下ろす。いつもの動作を正確に繰り返している。
「ルシア先輩のところと、一緒でした」
「知ってる」
アスカはもう1度振り下ろしてから、付け足した。
「あいつが寝坊したら置いていく」
ソラは壁際から木剣を1本取って、アスカから少し離れた場所に立った。上段に構える。振り下ろす。
少し遅れて、隣でアスカの木剣が鳴った。
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出発の朝、門の前はまだ薄暗かった。
班ごとに人の塊がいくつもできていて、どれも少しずつ形を崩しながら揺れている。荷を背負い直す者もいれば、門柱にもたれてまだ目を閉じている者もいた。
1班の生徒はまだ4人しか揃っていなかった。ソラはアスカの隣に立っていた。トーマとナギは少し離れて並んでいる。腰の左には、布を巻いたままの短剣を提げていた。
ガチャ、ガチャ、と重たい音が近づいてきた。
エルダーが木箱を両腕で抱えて歩いてくる。箱の陰で足元が見えていないらしく、2歩ごとに向きが少しずつずれていく。その後ろを、ルシアが手ぶらで欠伸をしながらついてきた。
「先輩、これ先輩が受け取ったやつっすよね」
「受け取ったのは俺。運ぶのはお前。分担な」
「分担って言わないっすよ、それ」
アスカが黙って門の方を向いた。寝坊はしなかったらしい。
箱が地面に下ろされる。蓋の隙間から、銀色の棒のようなものが何本も覗いていた。ルシアは蓋を開けると、中身を1本ずつ取り出してトーマとナギに渡し、最後の1本をエルダーの胸に押し付けた。
2班の方では、カズハが中身を1本ずつ取り出し、帳面と見比べてからルリたちに手渡していた。ルリは受け取ったものを両手で持ったまま、どこを握ればいいのか分からない顔をしていた。その隣でシオリは、魔法科の3人の荷物を1つずつ開けて中身を確かめている。ミオの荷物の底から赤い液体の入った瓶が出てきて、シオリはそれを黙って脇へ置いた。
アスカは箱には手を伸ばさなかった。上着の内側から1本だけ取り出して、黙ってソラに差し出す。
それは、受け取ると思っていたより重かった。手のひらに収まるくらいの長さで、刃のない柄だけだった。全体が鈍い銀色で、握りの部分に細い溝が何本も刻まれている。どちらが先なのかも分からなかった。
「これ、どうやって――」
「向こうで教える」
アスカはそれだけ言って、門の方を向いた。
門柱の脇にはグエンが立っていて、腕を組んだまま1年の手元を順に見ていた。エルダーが柄の端を目に近づけて覗き込んだところで、グエンの視線が止まった。
「点けるなよ。門を出るまでは」
「点け方知らないっす!」
「知らんでええ」
ソラは柄を腰に差そうとして、左側に短剣があるのに気付いた。右に差し直す。左右の重さが釣り合わず、少し体を揺らすと腰が左へ引かれた。
門が開く音がした。最初に動いたのはアスカだった。
ソラは柄の位置をもう一度直しながら、その背中を追いかけた。
今回もお読み頂きありがとうございました!
今回はペアと班分けの発表の回でした!ペアについては書かないといけないのにキャラの割り振りとかを考えるのがめちゃくちゃ大変で、やっとのことで公開することができたのでほんとに良かったですw
次回からは校外実習が始まります!お楽しみに!
よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015
未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/
次回投稿は11月7日(土)6時を予定しております。
最近土曜日更新サボりがち!!!間に合うように喝を入れときます!!!
何卒よろしくお願いします!




