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呂布の智謀
「貂蝉・・」
その日以来、呂布の頭の中から貂蝉の面影は離れなかった。
軍務の最中ですら、女の美しい横顔をふと思い出してしまうのである。
「私も董卓軍に呂布ありと言われた男だ。使徒殿の息女とはいえ何の見劣りがしよう」
アリストテレスは言う
《勇気とは臆病と蛮勇の中間にある》
宿舎で悶々としていることは確かに臆病者のすることだ、さりとて状況分析や勝算を考えずに行動することは、周囲も己も不幸にすることに違いない。
中庸とは、行動が幸福を捉えるための適切な加減を言うのである。我が国の兵法家も言う。《彼を知り我を知らば百戦百勝危うからず》と。
呂布は早速、王允と親しい司隷校尉の黄琬に探りを入れてみる事にした。
かつて、黄琬は使徒や大尉まで登り詰めたが、董卓に反抗し追放されていた経歴がある男だ。
それが再び司隷校尉と言う都の検事長のような地位についたのは、明らかに董卓への牽制の意味がある。
おおっぴらに彼と親しくするならば董太師は良く思うまい。
呂布は思った。
「酒の席の戯れとはいえ、王允が董卓の親衛隊長でもある私に娘を輿入れさせようとしたのは、この俺を自分の陣営に引っ張り混む為でもあるのだろう。」
《これは何かあるな》呂布は直感した。
丁度、来月には、文武百官が出席する朝廷主催の酒宴がある。
そこで探りを入れてみる事にしよう。




