ハロウィン
ブックマークや感想をありがとうございます。
今日はハロウィンってことで、番外編投稿〜♪
それでは、どうぞ!
「トリックオアトリート!」
その日、なぜか背中に小さな白い翼を背負った女神のように真っ白な服を纏うユミリアから、謎の呪文をかけられた。
婚約者同士の交流として、アルテナ家に居る時のことだ。
「えっ? ユミリア? その姿は!? それに、トリ……?」
「みゅっ、今日はハロウィンだから、仮装してるの! 一応、天使の仮装だよ。あと、トリックオアトリートは、お菓子をくれなきゃいたずらするぞーっていう意味で、ハロウィンには、この言葉を唱えてお菓子をねだるの」
そう言いながら、ユミリアはジーッと僕を見て、首をかしげる。
正直、天使どころか女神にすら見えるユミリアを前に、理性が飛ばないようにするだけで必死だ。
「やっぱり、イルト様にも仮装が必要だよね。メリー、お願い!」
「かしこまりました」
「えっ?」
よく分からないながらも、メリーに連れられて、悪魔の仮装だと言われて全体的に黒い服と、背中に黒い羽を背負って、ユミリアと合流する。
「…………イルト様、素敵。魔王の仮装ですね?」
「えっ? いや、悪魔だと聞いたけど……。それよりも、ユミリアこそ、女神だと思ったよ」
「魔王と女神、ですか。ふふふっ、それはそれで、面白いですね! あっ、そうそう、トリックオアトリート!」
うっとりとしながら、見つめてきたかと思えば、期待に満ちた目で眺めてくるユミリアに、僕は、ちょっとだけいたずらをしたくなった。と、いうわけで……。
「……じゃあ、いたずらをお願い」
「みゅ!?」
もちろん、お菓子はメリーから持たされている。しかし、ユミリアのいたずらに興味があった僕は、あえてそちらを選択してみることにした。
「え、えっと……」
「どうしたの? ユミリア?」
猫耳女神が困ったように視線をさまよわせる様子を眺めるのは、とても楽しい。しかし、あまり困らせるのも酷だと思って、『やっぱり、お菓子をあげよう』と言いかけた時だった。
「じ、じゃあ、目をつむってくださいっ」
何やら、いたずらを思いついたらしいユミリア。
「うん、分かった」
何をしてくれるんだろうかと楽しみにして、僕は目を閉じて……。目尻の辺りに、何か、温かくて柔らかいものが触れた。
「い、いたずら、です」
思わず目を開けると、ユミリアは思った以上に近い場所に居て、顔を真っ赤にしていて……。
(えっ? 今、もしかして、僕……?)
キスされたのだと理解した直後、僕も顔に熱が集中するのが分かった。
「あ、う……ありが、とう?」
「い、いえ、どう、いたしまし、て?」
何か違うと思いながらもそんなヘンテコな会話を交わしていた僕達は、結局、お互いにギクシャクしながら、それでも、楽しいハロウィンを過ごす。そして……。
「あれ? イルト、目元に星がついてるよ?」
兄さんに指摘されて初めて、僕はあのいたずらはキスだけじゃなく、このシールをつけるためであったのだと知り……ついでに、その時の感触を思い出して、しばらく悶絶することとなったのだった。
星に気づいて、さらに赤面をあおるユミリアちゃん……二段仕掛けのいたずらでしたね(笑)
それでは、また!