リアルFPS②
「お~す、船長」
声をかけてきたのは、「ヘルプマン」というプレイヤー。
自分を『船長』と呼ぶのは自分の知る限り1人しかいない。
実名は鳥取太助。1つ年下の14歳。
「早期合流できてよかったですわ」
『最初の出会いがお前なのは辛いな』
「幸いの出会いじゃないんすか‼」
『あ~……まぁね』
「というか、相変わらず試合以外ではチャット喋りなんですね」
『気になる?』
「そりゃ……ボイチャが使える今の時代に文字打ちチャットって変わり者じゃないですか」
ボイチャとはボイスチャットの事を指しており、簡単にいえば電話の様なもの。
船倉は昔ながらの方がしっくりくるという理由で使っている。
「暫くどうするんすか」
『やることは山ほどだ』
「へぇ……」
『武器の調達方法に、仲間集め、ゲーム内容その他諸々』
「なら、一試合しません?」
『1対1?』
「いや、それだと俺に勝ち目無いんで……VS:BOTモードでどうすか」
BOTとはCPが操作しているプレイヤー。
MAPを覚えたり、射撃の技術上げにはよく使われる。
いわゆる、サンドバックモードである。
「ルームの作り方は割と簡単っすよ」
【ヘルプマンの部屋に招待されました】
視界にこのような文が提示され、手元には承認・拒否のボタンが現れる。
『拒否っと』
「ちょ!?」
『嘘嘘、承認』
【VSBOTモード:5VS5:リスポーン可能】
「フィールドは……倉庫周辺っと」
『狙撃は…』
「できますよ、多分」
転送されたのは、倉庫。
時間は恐らく、午後6~7時台の時刻設定なのだろう。
外・空は薄暗くなっており、太陽は沈んでいる。
「ボイチャはONにしておけよ」
「船長に言われたくはないです」
「迎撃戦にしよう。後BOTは盾にして使え」
「えぐい……」
「俺は、狙撃点探すから頑張れよ」
「さて、さてBOTに命令っと」
選択した命令は護衛。
自身の前を自動で歩き、敵を見つければ戦闘を始める設定。
船倉は倉庫の屋上にダクトが通っていると読み、ダクトを移動中。
「援護なしだときついけど、遊びますか」
リボルバータイプの銃を片手に携え、敵陣に向かっていった。
船倉は倉庫の屋上に到達後、付近を見渡す。
(すぐに使える、屋上と……Bが使える、ビル屋上と倉庫の表入り口の3カ所か)
「まぁ、どうでもいいけど。太助、動いていいよ」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:了解】
「アイツ、慣れすぎだろ……」
各地で戦闘音が聞こえ始め、移動する船倉。
倉庫表入り口にBOTスナイパーが2名いるので1人をHeadShotで落とす。
BOTも馬鹿ではないので、こちらの狙撃に気付き、迎撃をしてくる。
「っと。入口1ダウン、残り1。GO」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:了解】
「ボイチャ、意味ないだろ」
『細かいのはボイチャの方が良いっすよ』
「そうかい、お前の左前方、アサルト×2」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:了解】
ほっとけば左下に戦況が出るため、そこは放置して裏口方面の狙撃準備に入る船倉。
こちらは現在、味方のBOTを送っていないため手薄である。
「さ~て……陰に紛れて見辛くする考えだろうけど」
左手で、こめかみ辺りを押すと画面が緑色を帯びる。
暗視スコープが装備されているため暗闇での狙撃を可能となっている。
「Doublekill、頂き」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:支援が必要だ】
「動けよ……」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:それはできない】
「ホントに迎撃してるだけかよ。こっちが危ないわ」
『割きましょうか?』
「要らん……さっさと100killして上がろ」
【ヘルプマン@倉庫表入り口:了解】
結果として船倉のHeadShotで70kill。ほとんど太助は敵を倒せず終わった。