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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第三部 文明発展編

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第137話 抵抗勢力

 ネバランド帝国皇帝ペーター三世は、すっかりユージに心酔していた。


 圧倒的な国力。


 常識外れの発想力。


 そして何より。


 肩書きや立場に縛られない自由な生き方。


 ペーターにとってユージは、得難い友人となりつつあった。


 だが。


 それを是としない者もいた。


 ネバランド帝国軍務大臣。


 ベック将軍である。


 彼は帝国軍の強さを誰よりも知っていた。


 だからこそ。


 簡単に頭を下げるつもりは無かった。


 軍人として。


 帝国の将として。


 自らの目で確かめるまでは納得できない。


 それがベックという男だった。


 そして。


 友好条約締結を目前に控えたその日。


 彼は会議の席で異議を唱えた。


「異議があります」


 場が静まり返る。


 ペーターが嫌そうな顔をした。


「ベック」


「何でしょう」


「嫌な予感しかしないからやめろ」


「軍人として確認したいことがあります」


 やっぱりか。


 そんな空気が流れた。


「ユージア国の軍事力を確認したい」


 ウインドが額を押さえる。


 ナーチャンがため息を吐く。


 サトータは静かに目を閉じた。


 だが。


「いいぞ」


 ユージがあっさり答えた。


「ユージ殿?」


 ペーターが驚く。


「気になるのは当然だろ」


 ユージは肩をすくめた。


「俺だって立場が逆なら見たい」


 ベックは深く頭を下げた。


「感謝します」


「じゃあ海へ行こう」



 数時間後。


 ネバランド帝国艦隊とユージア国艦隊が、西方沖で向かい合っていた。


 海は穏やかだった。


 だが。


 空気は張り詰めている。


「では」


 ユージが言う。


「好きに攻撃していいぞ」


 ベックが眉をひそめた。


「本気で言っているのか?」


「ああ」


「そのために来たんだろ?」


 ベックはしばらく考えた。


 そして。


 右手を上げる。


「第一戦隊」


「模擬戦闘開始」


 号令が響く。


 次の瞬間。


 帝国艦隊の魔導砲が一斉に火を吹いた。


 光弾。


 火球。


 氷槍。


 風刃。


 様々な攻撃魔法が海上を埋め尽くす。


 だが。


 ユージア艦隊は動かない。


 避けようともしない。


「何をしている?」


 ベックが眉をひそめる。


 その瞬間だった。


 海上に巨大な光の幕が現れた。


 淡く輝く透明な壁。


 攻撃は全てその壁へ吸い込まれた。


 爆発しない。


 砕けない。


 反射もしない。


 ただ。


 消えた。


「なっ……」


 ベックが目を見開く。


 再び砲撃。


 結果は同じだった。


 十発。


 二十発。


 三十発。


 全て無効。


「馬鹿な……」


 帝国将校たちが騒然となる。


 リシュンがニヤリと笑った。


「高度防衛システム」


「希望のイージス」


 アルノルトが補足する。


「敵対行動を検知すると自動で展開されます」


「理論上、この海域で突破することは不可能です」


「理論上?」


 ベックが食いつく。


「まだ破られたことがありませんので」


 アルノルトは平然と言った。


「実証データが無いのです」


 ベックは言葉を失った。


 つまり。


 帝国艦隊が今。


 実験台になっている。


 そういう意味だった。



「素晴らしい!」


 突然。


 大声が響いた。


 シュタインだった。


 老人は目を輝かせている。


「実に素晴らしい!」


「シュタイン殿?」


 ペーターが振り返る。


「見たか!」


 シュタインは興奮していた。


「あれは単なる結界ではない!」


「攻撃を受けた瞬間に何かをしている!」


「魔力変換か!?」


「空間転移か!?」


「位相変換か!?」


「分からん!」


「だが素晴らしい!」


 アルノルトを見る。


 リシュンを見る。


 希望のイージスを見る。


 老人の目は完全に獲物を見つけた学者の目だった。


「ぜひ研究したい!」


「素晴らしい!」


「実に素晴らしい!」


 ウインドが顔を引き攣らせる。


(まずいですね……)


 長い付き合いだった。


 だから分かる。


 まだ軽症だ。


 だが。


 確実にスイッチは入った。



 一方。


 ベックは海を見つめていた。


 希望のイージス。


 突破不能の防御。


 軍人として理解した。


 これだけでも十分脅威だ。


 だが。


 まだ聞かなければならない。


「防御力は理解しました」


 ベックが言う。


「だが」


「攻撃力は?」


 ユージが笑う。


 その瞬間。


 リシュンも笑った。


 非常に嫌な笑みだった。


「リーダー」


「なんだ?」


「例のアレやろうぜ」


 ユージの表情が固まった。

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