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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第三部 文明発展編

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第126話 大陸同盟会議

 ユージア国中央会議室。


 普段は閣僚会議に使われるその部屋に、この日ばかりは各国の要人が集まっていた。


 魔王国からは魔王アサダと宰相サム。


 王国からはマイヤン王女。


 聖王国からは枢機卿と大司教。


 そしてユージア国側からはユージ、ナーチャン、神楽耶。


 会議室中央には巨大な地図が広げられている。


 その上には、ホワイトタイガーから送られてきた報告書が並んでいた。


「確認された船団は百隻以上」


 ナーチャンが説明する。


「現在も東進中です」


「速度から判断して、およそ一週間後には接触すると思われます」


 室内に沈黙が落ちた。


 最初に口を開いたのはマイヤンだった。


「では話は簡単です」


「ヤマットを出しましょう」


 即答だった。


 枢機卿も頷く。


「うむ」


「ホワイトタイガーもあるのだよ」


 大司教も続く。


「聖王国としても異論ありません」


 サムも腕を組んだ。


「戦力的には問題ないでしょう」


「相手が何者であれ、現有戦力で対処可能です」


 ユージは思わず顔をしかめた。


(簡単に言ってくれるなあ……)


 もちろん戦えないわけではない。


 ヤマットもある。


 ホワイトタイガーもある。


 だが。


 ようやく復活した製鉄技術は、まだ量産体制に入ったばかりだ。


 鉄不足は解決していない。


 出来ることなら、切り札は温存したい。


「いや」


 ユージが口を開いた。


「待て」


 全員の視線が集まる。


「向こうが何者か分からないんだぞ」


「敵かもしれない」


「でも違うかもしれない」


「そんな相手をいきなり撃沈するのは駄目だろ」


 ナーチャンが確認する。


「ですが、こちらへ向かっています」


「ああ」


 ユージは頷いた。


「だから警戒はする」


「でも撃たない」


「相手が攻撃してきたら反撃する」


「それまでは様子を見る」


「それがうちの基本方針だろ」


 サムが静かに頷いた。


「専守防衛ですか」


「難しい話じゃないさ」


 ユージは肩をすくめる。


「殴られたら殴り返す」


「でも先には殴らない」


「ただそれだけだ」


 しばらく沈黙が続いた。


 やがて。


 アサダが小さく頷く。


「私も賛成です」


「話し合える可能性があるなら、その道を選びたい」


 マイヤンも渋々頷いた。


「まあ、理屈は分かります」


 枢機卿は目を細める。


「なるほどなのだよ」


「確かに、相手の正体も分からないうちに戦端を開くのは得策ではない」


 大司教も同意した。


「まずは接触ですね」


 ナーチャンが地図を指差す。


「では、誰が交渉に向かいますか?」


 その瞬間。


 全員がユージを見た。


「なんで?」


 ユージが即座に聞き返す。


 サムが答える。


「適任だからです」


「いや意味が分からん」


「戦争を終わらせた実績があります」


 サムが淡々と言う。


 マイヤンも続く。


「王国はあなたを信頼しています」


 アサダも頷いた。


「魔王国も同じです」


 枢機卿が楽しそうに笑う。


「聖王国も異論は無いのだよ」


「この場で最も交渉人に向いているのは君なのだよ」


 大司教まで頷いている。


「適任かと」


 ユージは助けを求めるように神楽耶を見た。


「頑張れ」


「雑だな!」


 神楽耶は笑った。


「いや、おぬし以外おらんじゃろ」


 ナーチャンが手元の書類をめくる。


「では決定ですね」


「決定じゃねえよ」


「まだ何も言ってないぞ」


「ですがユージ様以外に適任者がおりません」


「ぐっ……」


 反論できない。


 いや、したい。


 だが出来ない。


 そんなユージを見て、サムが静かに言った。


「問題は護衛でしょう」


「ああ」


 アサダも頷く。


「さすがに丸腰というわけにはいきません」


 その時だった。


 会議室の後方で腕を組んでいたリシュンが、ニヤリと笑った。


「あるじゃないか」


 嫌な予感がした。


 ユージはゆっくり振り返る。


「何がだ?」


「抑止力」


 リシュンは満面の笑みだった。


「幻影ヤマットだ」


 会議室が静まり返る。


 ユージだけが固まった。


「却下」


 即答だった。


「何故だ?」


 リシュンが本気で不思議そうな顔をする。


「黒歴史だからだ」


「意味が分からん」


「俺は分かりたくもない」


 だが。


 サムが頷いた。


「なるほど」


 マイヤンも頷いた。


「確かに効果的ですね」


 枢機卿も満足そうに頷く。


「実績もあるのだよ」


 大司教まで賛同した。


「素晴らしい案かと」


 アサダが静かに言う。


「私も賛成です」


 ユージは頭を抱えた。


「なんでだよ!」


 ナーチャンは冷静だった。


「では幻影ヤマットを伴って交渉を行う方向で準備を進めます」


「進めるな!」


「決定事項です」


「決定するな!」


 会議室に笑いが広がった。


 ただ一人。


 ユージだけが笑っていなかった。


 一週間後。


 海の向こうから現れた未確認船団との接触が行われる。


 そして再び。


 ユージは望まぬ形で、大陸の最前線へ送り出されることになったのである。

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