第12話 監視付き国外追放って何?
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翌朝。
ユージは、見覚えのない部屋で目を覚ました。
天蓋付きのベッド。
柔らかすぎるシーツ。
窓の外には、整然とした王都の街並み。
「……ここ、どこだ?」
記憶を辿る。
歓迎会。
視線。
品定め。
そして、余計なことを言った自覚。
「うん、やらかしたな」
独りごちた瞬間――
コンコン、と控えめなノックが響いた。
「ユージさま。お目覚めですか?」
ナーチャンの声だった。
「起きてる起きてる。どうぞー」
扉が開き、いつも通りの冷静な彼女が入ってくる。
ただし――
手に持っている書類の束が、やけに多い。
⸻
「まず、結論から申し上げます」
ナーチャンは、淡々と言った。
「ユージさまは、本日この城を出ていただきます」
「……え?」
一瞬、頭がフリーズした。
「追放?」
「正確には、“自主的長期視察”です」
「それ追放だよね!?」
「形式上は違います」
またその言葉か。
⸻
ナーチャンは書類を一枚取り出す。
「王国上層部の評価は、昨晩の時点でこうです」
・戦力としては不確定
・政治的に扱いづらい
・しかし切るには惜しい
・囲うと危険
「……めんどくさい男扱いだな、俺」
「その通りです」
即答だった。
「ただし」
ナーチャンは、わずかに口調を変えた。
「一部の者は、こうも考えています」
「ほう?」
「“この勇者を、王都の外に出した方が価値が測れる”と」
ユージは、ゆっくり理解した。
「なるほど……
隔離という名の、実地テストか」
「はい」
⸻
「行き先は?」
「名目上は、“世界理解のための自由行動”です」
「名目上ね」
「実際には――」
ナーチャンは少しだけ声を落とした。
「王国の影響が及びにくい地域を中心に、です」
「……魔族領、近くない?」
「とても」
ユージは吹き出した。
「はは。雑すぎるだろ」
「ですが、理にかなっています」
「まあ、俺も同意だけど」
⸻
準備はすでに整っていた。
装備一式。
最低限の資金。
身分を示す証文。
そして――
「これ、何?」
ユージは、首輪のような魔道具を指差した。
「位置把握用です」
「やっぱりな!」
「安心してください。監視用ではありません」
「それを監視と言うんだろ」
「“完全な消息不明になると困る”という意味です」
「やっぱり監視じゃないか」
⸻
城門前。
送りに来たのは、ナーチャン一人だけだった。
「王様は?」
「公式には、“勇者の自由を尊重する”とのことです」
「本音は?」
「“どう転ぶか、外から見たい”でしょうね」
ユージは、門の外に広がる街道を見た。
王都の外。
未知の世界。
「……まあ、いいや」
「よろしいのですか?」
「むしろ好都合」
ユージは笑った。
「城の中じゃ、息が詰まる」
⸻
一歩、城門を越える。
不思議と、胸が軽くなった。
「なあ、ナーチャン」
「はい」
「俺、思ったんだけどさ」
少し考えてから、言う。
「この世界って、案外“人間くさい”な」
ナーチャンは、目を細めた。
「ええ。だからこそ、厄介です」
「だよね」
「ですが」
彼女は、はっきりと続けた。
「ユージさまは、その厄介さを“面白がれる”」
「褒めてる?」
「最大級に」
⸻
しばしの沈黙。
やがて、ナーチャンが一礼した。
「では。ここからは、自己責任です」
「おう」
「無理はなさらず」
「それ、今の俺に言う?」
「……できる範囲で」
二人は、少しだけ笑った。
⸻
ユージは歩き出す。
背後で、城門がゆっくりと閉まる音がした。
「――国外追放、か」
呟いて、空を見上げる。
青い。
やけに、自由だ。
「まあいい」
肩を回し、前を見る。
「ここからが本番だな」
王国の外。
管理の外。
期待と恐れの外。
勇者ユージの、本当の物語は――
ここから始まる。
しばらくは【毎日1話更新】で進めていく予定です。
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